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量質転換

量質転換

(2011年1月 1日更新)

 
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成熟化が進んだ現代社会においては、人々の価値観が大きく変わり、「量」よりも「質」が重視されるようになりました。例えば、最近の売れ筋商品は「軽・薄・短・小」のキーワードに代表されるように、小さくても高品質のものが消費者の支持を得ていますし、企業経営の側面においても、売り上げや保有資産の大きさよりも財務体質の健全さが重視されるなど、ここでも「量」から「質」への価値観の転換が垣間見えます。 

こうした世の中全体の潮流の中で、「質」や「成果」があまりにも性急に求められる結果、成果を出すまでの時間の短縮化、仕事のスピード化に拍車がかかり、仕事をする一人ひとりのゆとりがすっかり失われてしまいました。短時間で質の高い仕事をすることに異論を挟む人はほとんどいないでしょう。しかし、こと人材育成に限っては、「質」の高い人材を生み出すためには、学習やトレーニングの「量」とそれに要するまとまった時間が必要になるのです。

 

人材育成の要諦を言い表すために、比喩として「コップと水の関係」がよく引き合いに出されます。コップに水を少しずつ注ぎ続けても、しばらくは何の変化もおきませんが、水の量がコップの容量と等しくなった点、いわゆる臨界点を越えた途端、水がコップからこぼれ出します。同じように、ある人が新たな知識を得ようと一所懸命勉強する、あるいは何らかの技能を高めようと地道に練習をしても、知識にも技能にも表面的には何の変化も現れない時期がしばらく続きますが、「成長の臨界点」を越えると一気に能力が開花するということはよくあることです。

 

このように、成果が出ないけれどもコップに少しずつ水を注ぎ続ける我慢と努力を続けることができるか否か、それが能力を開発するポイントになるのです。天才と言われるイチロー選手や、石川遼選手でさえ、一気に一流選手の技能を身につけたのではなく、地道な努力を人並み以上に重ね続けた結果であると言われています。

 

ある経営者は、「人材育成に限っては、量があってこそ質が後からついてくる。そのためにも人の2倍も3倍も努力するという人ほど成長するものだ」と言い切っています。人を育てる上でも、あるいは自分自身の能力開発を行なう上でも、「量質転換」を信じ、成果が出るまで我慢する、成果を出しやすいよう学習や練習の量をこなす、という考え方に立ち、あせらず楽しみながら能力開発に取り組んでいきたいものです。 

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 教育出版局 研修企画部部長。

経済産業大臣認定 中小企業診断士 


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