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体験から学ぶ

体験から学ぶ

(2011年2月18日更新)

 
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数年前から、「臨床哲学」という概念に注目が集まっています。臨床哲学とは、「日常の体験の中から自分にとって有用な知恵を引き出し、それをもとに自分なりの哲学(言い換えれば「持論」)を形成すること」とされています。 

例えば、ベテランの医者が患者を診察する時に、「こういう症状にはこういう対応をすればいい」と咄嗟に判断しますが、それは過去に多くの患者の症例を診てきた体験がベースになって形成された「体験に基づく持論」が判断の拠り所になっているのです。

 

ビジネスの世界に目を転じると、臨床哲学を実践してきた代表的な人物として弊社・創設者 松下幸之助がしばしば引き合いに出されます。松下は、父親が事業に失敗した影響で小学校を中退し、初等教育すらまともに受けていません。しかし、丁稚として仕事をしていた奉公先での日々の苦労や体験、人との出会いが、独自の商売観、経営観、人間観を形成する上で大きな影響を及ぼしていったのです。後に、こうした独自の考え方が整理・体系化され、「松下経営哲学」として国内外に広められ、多くの人々がその思想哲学から多大な影響を受けました。松下経営哲学が多くの支持を集める理由は、それが現場の実務体験の集積から成っているものであり、実践的な内容であるからでしょう。

 こう考えると、現場での実体験がいかに重要であるか、改めて気づかされます。決して教室での学問を軽視しているわけではありませんが、「実務に活かすための学問」というスタンスに立たなければ、その有効性は高まらないでしょう。実体験から学びを引き出す上で、重要なことは「体験しっぱなし」にしないということです。成功した経営者の多くは、「体験と内省」の重要性を強調しています。自分の取った行動とその結果を振り返り、「なぜ、うまくいったのか(いかなかったのか)?」「どう感じたのか」などを自分の頭のなかで反芻し整理することで、新たな気づきや学びが引き出されるのです。

 

企業・団体における人材育成はOJT(On the JobTraining)が基本であることはいうまでもありません。効果的なOJTを行うために、上司(先輩)は部下(後輩)に対して、内省を促す働きかけを行っていただきたいものです。「なぜ、不況の中でも、今回受注を獲得できたか、その要因を整理してごらん」とか、「今回の失敗から何を学んだ?」といった問いを投げかけることによって、部下・後輩は思考を深めることができ、学びや気づきを得られるのです。

 

経営環境は一層厳しさを増しています。この時期に、一人ひとりが日々の苦労から学びを引き出し、それを他のメンバーと共有するような営みを実践できれば、ピンチはチャンスへと転じ、個人と組織が鍛えられる絶好の機会になるのではないでしょうか。

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 教育出版局 研修企画部部長。

経済産業大臣認定 中小企業診断士   


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