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ドゥアブル発想とデリバラブル発想―内定者教育~導入研修のポイント

ドゥアブル発想とデリバラブル発想―内定者教育~導入研修のポイント

(2016年8月24日更新)

 
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効果的な内定者教育~入社時の導入研修を考えるうえで、ポイントとなることとは? 若者のモチベーションを上げる「デリバラブル発想」のコミュケーションをご紹介します。

 

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「ゆとり世代」育成の大前提となること

管理職研修のご参加者や、人材開発のご担当者と話していると、必ず話題になるのが「ゆとり世代」。この言葉はあまり好きではないのですが、やはり、私たちの年代とは違うと感じさせられることが多々あります。たとえば、採用面接の決められた時間に学生が来ない、上司に命令されたら舌打ちをする、同じ失敗を何度もする……。もうお手上げ状態という管理職の方もいらっしゃいました。

このように悪い評価が目立つ「ゆとり世代」の若者たちですが、人材育成に携わる側としては、こちらが熱意をもって教えれば、必ず成長してくれるということを忘れてはなりません。教える側が肯定的な人間観を持ち続けていれば、彼らも必ず応えてくれる。「人間は良い方向へ変われる」という前提に立たないと、人材育成は始まらないわけです。

弊社の創設者である松下幸之助は、「人間は磨けば光るダイヤモンドの原石」であると言いました。だれもが磨けばそれぞれに光る、さまざまなすばらしい素質を持っている。だから、人を育て、生かすにあたっても、まずそういう人間の本質というものをよく認識し、それぞれの人が持っている優れた素質が生きるような配慮をしていくことが大切である、と語っています。「ゆとり世代」と呼ばれる若者の教育を考えるとき、こうした肯定的な人間観をもつことの大切さを改めて思い起こします。

 

ドゥアブル(doables)発想とデリバラブル(deliverables)発想

ここで、ドゥアブル(doables)発想とデリバラブル(deliverables)発想という言葉をご紹介します。ドゥアブルは「do(する)+able(できる)」、後者のデリバラブルは「deliber(届ける)+able(できる)」の合成語です。「何をすることが出来るか」を表しているのが「ドゥアブル」。それに対して「結果として誰に何をもたらすことができるか」を表しているのが「デリバラブル」です。

入社説明会や内定者懇談会などの機会に、会社の業務を若者に説明することがあると思いますが、それぞれの発想でどう説明するのか、食品会社の例をあげて考えてみましょう。

「当社は食料品を製造・販売しています」、これは「ドゥアブル発想」による説明です。決して間違いではなく、会社業務を正確に説明しています。一方、「デリバラブル発想」では、どう説明するでしょうか。「当社は、おいしくて安全な食料品を提供し、人々の健康づくりと豊かな食生活の実現に貢献しています」。業務を通じてだれに何を提供し、社会にどのように貢献しているのかがはっきり伝わります。

なぜこうした考え方をご紹介したかと言いますと、最近の若者は「お役立ち感」に敏感であると言われるからです。若者たちのモチベーションを上げるためには、この「お役立ち感」を実感させ、社会人への「入り口」で自らの仕事にプライドをもたせることが重要なのです。内定式でも、入社後の現場でのOJTでも「デリバラブル発想」で彼らとコミュケーションしていくことによって、会社や仕事に対する誇りを持たせることができるのです。そういう意味では、彼らを指導する現場の指導員、メンターの教育が非常に重要だと言えます。

 

前頭前野を鍛える

効果的な内定者教育~導入研修を考えるうえで、2つ目のポイントとなるのが、「前頭前野」を鍛える、ということです。前頭前野は、脳の一部で、認知的、動機づけ状況を把握し、それに対して適切な判断を行い、行動を適応的に組織化するというような役割を果たしています。感情を発露したり抑制したりといった機能も、この部分がつかさどっているわけです。この部分は、主に人と人との対面でのコミュニケーションによって鍛えられますから、ケータイ、ゲーム、ネット世代では鍛えられていないという人も多いのです。すぐにキレたり、逆に自分の感情がうまく表現できないといった若者が多いことも、このことに起因しているように思われます。

では、前頭前野を鍛えるにはどうすればいいでしょう? この答えは、そう難しくはありません。読み、書き、話す場を数多くつくる、挨拶や返事といった基本的なコミュニケーションを徹底させることです。基本動作の徹底によって前頭前野が刺激され、対人関係力を鍛えることができるのです。

 

ここで事例をご紹介しましょう。「日本一の温泉旅館」と言われる「加賀屋」(石川県七尾市)。国内外から年間30万人もの人たちが泊まりに来るこの旅館は、おもてなしの質の高さに定評があります。もちろん従業員に対する教育は徹底されていますが、その内容は「マインド教育」ではなく、正しい言葉づかいや、美しい立ち居振る舞い、好感のもたれるお辞儀など、「形」にこだわったトレーニングが主体です。あるべき形をまね、何度も実践しているうちに、「加賀屋流おもてなし」の精神を理解・実践できるようになるので、あえてマインド教育を実施する必要がないそうです。

「加賀屋」の例にみるように、新入社員の教育に関しては、概念や理論を教えるよりも、あるべき姿・形を実践させるほうが重要であり効果も高いでしょう。元気のいい返事や、さわやかな挨拶を理屈抜きで繰り返し実践させてみる。いわば「基本動作の千本ノック」です。その結果、自分の周囲にどんな変化が起きてくるか、自分の気持ちがどうなるかを体験させることで、自ら気づきを得ることができるでしょう。

 

「形から入って本質を追求し、心を定める」というコンセプトに則った新入社員研修を、ぜひお奨めしたいと思います。

 

数年後に目指す人材像を定める

少し話がそれましたが、最後に、内定者教育~導入研修を成功させるポイントとして、一貫性ある人材育成体系をつくる、ということをあげておきます。内定者教育、導入教育、フォローアップ研修、日々のOJTやメンタリングなどを通じて、3年目、5年目、7年目にどんな人材に育ってほしいのか、理想像を定めて中長期で取り組んでいくことが大切です。

 

自動車関連のA社では、入社から8年間を育成期間と位置づけ、大学卒業であれば30歳の時点で「PDCAがきっちり回せる人材」に育てる、という目標を掲げておられると聞きます。意外に身近に感じられる目標で驚かれる方も多いかもしれませんが、PDCAをきちんと回し自律的に仕事を進める、ということを徹底して行うのは意外に難しいものです。

御社の場合はどうでしょうか。何年かけて、こういう人材に、というイメージはお持ちでしょうか。戦力として活躍できる人材になるかどうかは、入社して数年間が勝負です。35歳になって管理職になってから、さあ教育しようといっても、なかなかうまくいくものではありません。業種業態によって、3年間、いや10年間といった差はあっても、理想とする人材像を明確にし、一貫した目標をもって技と心を育むことが人材育成の王道と考えて間違いないでしょう。

 

 

 
 

 

的場正晃(まとば・まさあき)

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。現在は(株)PHP研究所 直販普及本部研修企画部部長。
 

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