職場のハラスメント防止は、企業の経営課題の一つです。なかでもパワハラについては、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の施行によって、企業に防止措置が義務づけられ、社員に対する教育が必須になっています。
パワハラ、セクハラ、マタハラ防止の研修は、ともすれば法知識やリスクを教える「知識詰込み型」になりがちですが、社員一人ひとりに納得感をもって理解してもらい、職場での実践につなげるためには、ケーススタディなどを使った「思考型」の教育・研修が効果的といわれます。
PHP研究所ではこれまで、研修用の動画教材を100タイトル以上刊行し、約3,000社の企業でご採用いただいてまいりました。今回は、ハラスメントをテーマにした教材のケーススタディ動画44本のなかから自社の課題にあわせて必要なものをお選びいただき、ご購入いただけるサービスをご案内します。
PHP研究所のケーススタディ動画の特徴
PHP研究所発刊DVDの動画コンテンツをお客様のサーバに電子的に複製し、社内配信いただけるサービスです。
※お申込みの前にご確認ください
ご利用料金(1年間) 198,000円(税込)~
【オプション】
①各ケースの問題作成(1ケース税込11,000円)
②各ケースの学習目的を示した資料(Power point)、自分の考えをまとめて書き込める学習シート(Word)の提供(1ケース税込11,000円)
(1)お問い合わせ
お問い合わせフォーム に必要事項をご記入いただき、弊社までご連絡ください。
(2)ケース選定
弊社担当者から、ケーススタディ選定のためのサンプルDVDの無料貸し出し、あるいはストリーミング配信のご利用をご案内します。
(3)お申込み
ケーススタディの選定が終わりましたら、弊社がご用意するお申込書をご記入ください。その際、納品ファイル形式 (mp4、wmv)をご指定ください。
(4)データ作成・ご納品
お申込書の受領からご納品まで、3週間程度いただきます。動画データはDVD-Rまたはオンラインストレージサービスでご納品いたします。ご納品後、弊社からお送りする「受領書」をご記入の上、ご返送ください。
(5)ご請求・ご入金
弊社からご請求書をお送りいたします。請求書記載の期日までに、ご入金手続きをお願いいたします。
パワハラ、セクハラ、マタハラをテーマにしたケーススタディ動画から、貴社の課題にあわせてお選びいただけます。
■ケース1:「厳しいこと」はパワハラ? 指導?
営業成績を上司に追及された部下が、上司の態度がパワハラではないのかと不満をあらわにした事例です。パワハラと指導の線引きについて考えます。
■ケース2:「チャレンジ」はパワハラ?
上司から新しい仕事を指示されチャレンジしていた部下。しかし、負担が増えた結果、大きなミスをしてしまいます。適切な仕事の与え方と、仕事を与えてもらう側が持つべき考え方について学びます。
■ケース3:不平不満を言われるのも上司の仕事?
上司の発言や行動がきっかけで、上司と部下の間に亀裂が入ってしまう事例です。「逆パワハラ」が起こってしまうきっかけや、「逆パワハラ」を起こさないために求められる姿勢について、上司と部下それぞれの立場から考えていきます。
■ケース4:立場が違うからといって...
派遣社員に対するメンバーの言動が問題となる事例、企業間取引での「カスタマーハラスメント」に焦点を当てた事例の2つを紹介しています。仕事で関係する人たち(ステークホルダー)との付き合い方について、理解を深めていきます。
■ケース5:何気ない会話に落とし穴が...
メンバーのある言動から、「SOGIハラ」や「LGBT」について考えていく事例です。多様性が求められている現代社会において、理解しておく必要があるジェンダーについての基本的な事柄を解説します。
■ケース6:付き合いが長いからといって...
先輩社員に対して、日常的にからかうような発言をしている後輩社員の事例です。相手との距離が縮まったからといって、配慮を欠いた言動を取ってしまうとハラスメントに発展する可能性があることについて解説します。
■ケース1:ビジネスにふさわしくない服装を指摘したら...│テーマ:セクハラ
部長は、職場で短いスカートを身に付け、濃い化粧をしている女性社員に声をかけ、注意をしています。
「さっき、下着が見えそうだったぞ。スカートの丈はもう少し長いほうがいいだろう」「それとね。化粧だけど濃すぎないか? ちょっと派手だな」
すると女性社員から「セクハラだ」と言われてしまいました。部長の行動はセクハラにあたるのでしょうか。このケースでは、セクハラにならない適切な注意の仕方を学びます。
■ケース2:好き嫌いでセクハラを判断する社員に...│テーマ:セクハラ
女性社員は、提案資料をがんばって作成してくれたお礼にと、部長にランチに誘われ、その席で、土日をどう過ごしたかを聞かれました。「どこの温泉に行ったの?」「誰と行ったの?」と聞いてきた部長に不快感を覚え、上司の課長に「セクハラじゃないか」と相談します。でも、女性社員は、課長には雑談の中で、彼氏と温泉に行ったことを自分から話していました。それを課長が指摘すると「部長は好きではないので不快に感じる」というのですが......。このケースでは、部下との人間関係を構築する上での注意点を学びます。
■ケース3:独身女性を否定する発言をしていた社員に...│テーマ:セクハラ
若手社員2人が、女性係長が独身であることについて、本人不在の場でからかうような発言をしていました。その場にいた課長が、対応を部長に相談するのですが、部長は、職場の人間関係悪化を懸念して、若手社員の発言を不問にしてしまい......。
このケースでは、性別役割分担意識について気を付けるポイントや、セクハラを生む職場風土の問題にふれています。
■ケース4:"できる社員"に仕事が集中した結果...│テーマ:パワハラ
責任感が強く仕事ができる男性社員。部長からの信頼も厚く、たくさんの仕事を与えられます。しかし、部長は会社の方針だからと残業をしないよう一方的に指示を出します。そんな状況で、書類作成のミスを指摘された男性社員。「こっちがどれだけ大変な思いをしてやっているか、わかっていないんだ」「これってパワハラじゃないのか」と不満を爆発させますが......。このケースでは、仕事量とパワハラの関係、部下のマネジメントの考え方について学びます。
■ケース5:低い考課を不満に思った社員が...│テーマ:パワハラ
営業部門で働く係長職の社員が、課長に人事考課について不満を伝えます。営業成績は前年より伸ばしている。問題を起こしてもいない。それなのに、なぜ前年と同じ考課になっているのか納得できないということです。「これってパワハラではないでしょうか」と言う係長。どのように対応すればいいのでしょうか。人事考課は、間違って運用すれば優越的な関係を利用した行為としてパワハラになりやすいもののひとつです。このケースでは、人事考課に関する問題への管理職としての対応を学びます。
■ケース6:仕事のルール破りを指摘したら...│テーマ:パワハラ
営業報告書を、決まったフォーマットで提出することになっている営業チーム。ところが、一人だけ違う形式の書類で提出する社員がいます。課長は、ルールに従うように繰り返し注意するのですが、社員は「ルールを押し付けるのはパワハラだ」と訴えます。このケースでは、パワハラのグレーゾーン回避の考え方と、上司としての指導の在り方を学びます。
■ケース1:原因は自分にあるのに...│テーマ:パワハラ
アポイントを得意先にすっぽかされ、映画館で時間つぶしをする営業社員。帰社後、部長には、「何回か行かないと難しいですね」とうその報告をしたのですが、映画館から出てくるところを見ていた人がいたと、部長に指摘されます。今後は行動予定表を毎日提出するように部長から指示を受けた社員。「新入社員がするようなことを強制するのはパワハラじゃないのか」と感じます。このケースでは、部下の管理監督の方法とパワハラの関係について学びます。
■ケース2:ミスを注意したら...│テーマ:パワハラ
何度もミスをする女性社員。係長は、ミスをして相手先に迷惑をかけたという報告を受けるたびに、状況を確認して対応するように指示を出し、反省を促します。ところが、本人はインターネットに掲載されているパワハラの記事を見て、「繰り返し・継続的に」注意するのはパワハラだと思うようになりました。このケースでは、適切な部下指導の方法を学びます。
■ケース3:仕事の負担が増えた結果...│テーマ:パワハラ
営業チームのエースが突然退職し、担当エリアが増えた2人の若手社員者。しかも課長は、会社の方針で残業は認めないと言います。残業が続き、困り果てた2人は部長に相談します。部長は、残業は認定する、中途採用の検討をしていると説明します。一旦は納得したものの、仕事がたいへんな状況は変わらず、若手社員は次第に「パワハラじゃないか」と思うようになるのです。このケースでは、仕事量の配分や労働時間の管理について管理職としての考え方、パワハラとの区別について学びます。
■ケース4:相手が誤解をして...│テーマ:セクハラ
上司と得意先に出かけた女性社員。昼食を上司にご馳走してもらいました。話が弾んで「また誘ってくださいね」と言ったものの、同僚から、誤解されているのではないかと指摘され、次に上司がランチに誘ってくれたときには、「これってセクハラでは?」と思うようになります。お互いの誤解から生まれてしまうグレーゾーン。誤解を防ぐためには、上司と部下が適切な距離感を保って人間関係をつくる以外にありません。このケースでは、上司が気を付けるべき部下との関係づくりについて学んでいきます。
■ケース5:セクハラの相談をしていたら...│テーマ:セクハラ
得意先と課長をまじえた面談で性別に関する話になり、不快な思いをした女性社員。課長からセクハラを受けたと上司の係長に相談します。ところが、相談を受けた係長は、周りへのヒアリングから「セクハラではない」と判断し、社員に伝えます。その社員は、係長が課長をかばっている、相談をした自分の気持ちを理解してくれないと不満が大きくなってしまいました。セクハラの相談を受けた人の対応によって問題が大きくなるケースを「二次セクハラ」といいます。このケースでは、「性別役割分担意識」の考え方の問題、そして正しい相談の受け方を学んでいきます。
■ケース6:育児制度の利用者が...│テーマ:マタハラ
出産後、短時間勤務制度を利用して子どもを育てながら働く女性係長。毎日の仕事がたいへんそうな様子を気遣って、部長は、キャンペーンの担当を他の社員に割り振ることにしました。ところが女性係長は「短時間勤務だからといって担当を外すのはマタハラじゃないかな」と思うようになります。このケースでは、グレーゾーンが発生しやすい「育児制度利用者」への対応について考えていきます。
■ケース1:私は正当に評価されていない?!│テーマ:パワハラ
営業部に異動になった入社10年目の社員。異動直後、部門の教育方針にしたがって、新入社員と同じように基本的な仕事を指示されました。しかし、「私には10年のキャリアがあるのに......。私は正当に評価されていないのでは......」という疑問を持つようになったのです。このケースでは、パワハラの6類型のひとつ「過小な要求」と「社員育成の考え方」の関連について解説しています。
■ケース2: "仕事の時間"に無頓着│テーマ:パワハラ
営業部の課長は、課の売上が厳しいため巻き返しに必死です。休みの日にメンバーに発破をかけるチャットを送ったり、金曜日の終業後に「月曜の朝イチ」に対策の提出を要求したりと、就業時間を気にしない行動が続いていました。このケースでは、「労働時間の管理」「仕事への責任感」とパワハラの関連、「正しいマネジメント方法」について解説しています。
■ケース3:協力会社との付き合い方│テーマ:パワハラ
営業部の若手社員は、スケジュールの再調整を要望してきた協力会社に対して「クライアントの要望通りに動けないなんて信じられない」「お客様第一ってことがわかっていない」と憤慨しています。このケースでは、パワハラ防止法で新たに言及された「カスタマーハラスメント」についての解説を通して、「協力会社との付き合い方」について考えます。
■ケース4:上司には"厳しく"してもいい?│テーマ:パワハラ
IT機器に弱い上司に対し、若手社員たちは冷たい対応をしたり、小馬鹿にした陰口を言ったりしていました。一般的にはパワハラは「上司→部下」のパターンが多いですが、このケースではそれ以外のパターンについて、厚生労働省の指針をベースに解説しています。また、「相手を思いやり、協力して働く」という仕事の姿勢についても学べます。
■ケース5:取引先との関係に悩んだら...│テーマ:セクハラ
協力会社の女性担当者が担当替えと聞いた男性の課長は、「理由は結婚?」などと質問をしたり、「送別会をしましょう。気兼ねなく2人で」と誘ったりしていました。女性担当者は自分の上司に報告し、課長のもとにクレームが届いてしまいました。パワハラ防止法と同時に改正された男女雇用機会均等法では、「取引先に対してセクハラの調査・再発防止策を求めることができる」とされています。このケースでは、これまで泣き寝入りになりがちだった「発注者からのセクハラ」「ビジネスのあり方」を解説しています。
■ケース6:相談を受けたが...│テーマ:セクハラ
「セクハラをされた」と部下から相談された上司は、表向きは「相談窓口に話しに行こう」と適切な対応をとっていましたが、内心は「それくらいのこと、セクハラではない」と思っていました。その感情が言葉の端々に出てしまったため、部下から疑念を持たれてしまいます。このケースでは、「ハラスメントの相談を受ける人の姿勢」「適切な対処方法」について解説しています。
■ケース7:気遣いとマタハラの境界線│テーマ:マタハラ
妊娠をした部下に対して気遣いをする男性上司2人ですが、部下は「大げさ」という印象を持っていました。ある時、上司たちは、部下の担当している仕事を他の社員に渡すという指示をしました。でも、その判断基準が「産休までの期間」ではなく、「仕事の重要度」だったため、部下は不満を持ってしまいました。マタハラはデリケートな問題です。配慮したつもりであっても、それが「マタハラの芽」と受け取られるケースも少なくありません。このケースでは、「マタハラにならない配慮の考え方」を解説しています。
■(番外編)ハラスメントの基礎知識
「パワーハラスメント」「セクシュアル・ハラスメント」「マタニティ・ハラスメント」の基礎知識を動画で解説。改正労働施策総合推進法によって規定されたパワハラの定義や6類型といった基本的な知識を習得できます。
■ケース1:飲み会の席での冗談が...│テーマ:セクハラ
二人の上司が飲み会で女性部下にこんな話をしています。「君と同じ大学の●●さんは、色気があってスタイル抜群だね」「飲み会、セッティングしてよ」「君は彼氏いるの?」「いつからいないの?」。そこへ男性社員が遅れてやってきます。部下に「二人、つきあっちゃえよ」と交際を勧める上司たちですが......。ここでは「環境型セクハラ」の問題を通して、セクハラの基本的な知識と考え方を学びます。
■ケース2:相手も好意があると思っていたが...│テーマ:セクハラ
男性係長が部下の女性社員を食事にしつこく誘うケース。係長は女性社員が自分に好意をもっていると思っていますが、女性社員のほうは、勤務時間中や土日にもメールで誘われることを苦痛に感じていました。セクハラは、相手がどう感じているかが基準になります。このケースでは、セクハラの考え方や、部下とのコミュニケーションにおける注意点を学びます。
■ケース3:セクハラの相談を受けたが...│テーマ:セクハラ
部長からセクハラを受けたと上司に相談する女性社員。しかし相談された上司は「それくらいでセクハラって騒ぐのは我慢がたりない」「あなたにも責任がある」「自分でなんとかしなさい。私を巻き込まないでほしいわ」と突き放します。ここでは、不適切な対応が引き起こす「二次セクハラ」の事例から、相談に対する正しい対応方法を学びます。
■ケース4:ジェンダーについての発言をした│テーマ:セクハラ
「性別役割分担意識にもとづく発言」はセクハラを生む原因になります。ここでは「男のくせに情けない」「結婚して子どもを産んで家庭にはいるのが女性の幸せ」「子どもの送り迎えは女性の仕事じゃないんですか。理解できません」といった発言が行われる事例をもとに、価値観の違いを受け入れ、誰もが活躍できる職場づくりの考え方を学びます。
■ケース5:LGBTへの理解│テーマ:セクハラ
同性のパートナーがいる社員の目撃情報を、社員が職場で広めている事例。その情報を知っていた上司も、意図せず広めてしまっています。また、一連の会話には、当人を揶揄するニュアンスが含まれていました。このように、共に働く仲間への配慮がない職場は、セクハラを生む温床になります。LGBTに対する性的言動については、ハラスメント防止措置の枠組みの中で対応することが企業に求められています。この事例ではLGBTに対する正しい考え方や対応を学びます。
■ケース1:<不利益取り扱いの示唆1>暗に退職を強要する│テーマ:マタハラ
妊娠を上司に報告したところ「うちじゃ、産休や育休なんて無理」「これを機会に、育児に専念したほうがいいんじゃない?」と、上司から退職をほのめかすような発言をされてしまいました。このケースでは、産前産後休暇の基本的な知識と、上司としての対応の心構えについて解説しています。
■ケース2:<不利益取り扱いの示唆2>評価・昇進への影響をほのめかす│テーマ:マタハラ
産休育休から復帰後、短時間勤務制度を利用したいという部下の申し出に、上司は「評価を下げざるを得ない。もちろん、昇進も遅れるだろう」と不利益になる発言をしていました。
育児の制度を利用することによる不利益取り扱いについて考えるケースです。正しい考え方と上司としての適切な対応について学びます。
■ケース3:制度を利用しにくくなる発言をする│テーマ:マタハラ
産休育休を間近に控えた社員は、先輩の女性社員から「私が子どもを産んだ頃は、女性社員の出産なんて会社も理解してくれなかった」「いいわよね、会社の理解があって」「ご主人は何やってるの? 協力してくれないの?」と嫌味を言われ続けていました。同僚によるマタハラのケースも少なくありません。同じ職場の仲間として、出産・育児をしやすいような配慮が必要となります。このケースでは、そのポイントを解説しています。
■ケース4:制度を利用することへの嫌がらせをする│テーマ:パワハラ
育児に積極的に参加している男性社員。娘の幼稚園の送り迎えなどで変則的な勤務になることも少なくありません。そんな社員に対し、周囲はミーティングに呼ばない、「育児は奥さんの仕事だ」と嫌味を言うなどしていました。男性の育児も当たり前の世の中ですが、まだまだ理解が深まっていません。このケースでは、男性へのハラスメント(パワハラ)について解説しています。
■ケース5:安全配慮のための発言をした│テーマ:マタハラ
産休直前の社員に対し、体調を気遣い「早く帰りなさい」「健康を優先して」と上司は声をかけていました。しかし、社員は働きたいという意欲があり、お互いの間にギャップが生まれてしまいました。社員の安全・健康を配慮するのは上司として当然のことですが、その言い方が無用な誤解を生む場合もあります。このケースではマタハラを避ける表現や注意のポイントを学びます。
■ケース6:業務調整のための発言をした│テーマ:マタハラ
育休取得を考えている男性社員に対し、上司は「○日は重要な日だから、そこが過ぎてから取得するように」と指示を出しました。とくに男性の場合は育休取得の日程調整をするケースが少なくありません。しかし、その言い方がハラスメントになることがあります。ハラスメントにならない調整方法について解説しています。
■ケース7:制度の利用を当たり前と考えている│テーマ:マタハラ
産休育休から復帰した女性社員は、育児の制度を利用しながら勤務をしています。ところが、制度利用を当然のように考えた発言が目立ち、周囲の社員には不満が募っていました。制度利用者の立ち居振る舞いが原因で周囲の人との距離感が生まれ、マタハラになってしまうケースもあります。このケースでは、制度利用者としての適切な考え方を学びます。
■ケース1:言葉づかいや話す雰囲気が...│テーマ:パワハラ
言葉づかいは穏やかで、発言内容も問題ない。一見、問題はないように思える上司ですが、随所で部下が嫌味と感じるような表現をしていました。パワハラの観点から、「話し方」「しぐさ」について考えます。
■ケース2:いきなり重要な仕事を任せて...│テーマ:パワハラ
新入社員に成長のためと重要な仕事を担当させました。しかし、責任を抱え込んでしまった新入社員は精神的な負担を感じ、出社できなくなってしまいました。ストレッチな仕事を与える時の注意点をパワハラの観点から考えます。
■ケース3:こだわりが強い社員への指導が...│テーマ:パワハラ
上司にルール違反を繰り返し指摘された部下は、フラストレーションが溜まり、嫌がらせをされていると思うようになりました。注意の仕方にパワハラ的な問題はなくても、相手の受け取り方によってはパワハラの疑いが生まれてしまいます。パワハラにならないコミュニケーションのとり方を解説します。
■ケース4:テレワーク中に...│テーマ:パワハラ
最近、増えてきているリモートハラスメント。テレワークだとマネジメントが難しいと、部下のことを過度に管理しようとする上司が少なくありません。テレワーク中の言動のうち、「パワハラになる」「パワハラにはならない」のラインを考えます。
■ケース5:パワハラ意識が足りない先輩社員が...│テーマ:パワハラ
OJT担当者の先輩社員は、つい後輩に強くあたってしまいます。先輩はパワハラについて詳しく知らないため、危うい言動をしてしまうのです。そういう部下がいた場合、上司としてどう対応すればいいのかを解説します。
■ケース6:元上司の部下が...│テーマ:パワハラ
元管理職の年上部下が年下上司に対して行う逆パワハラの事例です。職場に悪影響をひろげないための対応方法を考えます。また、3つのキーワードから逆パワハラについての理解を深めていきます。
■ケース1:自分の価値観を押し付けるような言い方をした│テーマ:パタハラ
「男は仕事、女は家庭」という価値観を持つ上司が、育休取得を考えている部下に「男が休んでできることあるの?」と言ってしまいました。その発言の是非を考えます。
■ケース2:評価に影響があると発言した│テーマ:パタハラ
上司は、産休・育休の取得、育児の制度の利用を理由に不利益な取り扱いを示唆しました。その発言がハラスメントになるかどうかを考えます。
■ケース3:育休中の出社を相談した│テーマ:パタハラ
上司は、繁忙期だからと産後パパ育休中の就業を部下に求めました。このケースでは産後パパ育休中の就業のルールの詳細を解説しています。
■ケース4:育休取得の希望を聞き出そうとした│テーマ:パタハラ
育休取得を悩んでいる部下に、上司は再三「どうするか決めた?」と聞いていました。その際の上司の言い方は「できればとってほしくない」というニュアンスが含まれたもので、部下はそれを忖度して「とりません」と言ってしまいました。育休取得を考えている部下へのアプローチの方法について考えます。
■ケース5:周りのメンバーが不満を言っている│テーマ:パワハラ
繁忙期に産後パパ育休を取得したメンバーに対し、その人の仕事をフォローした周囲のメンバーが不満を言っていました。職場の仲間としての考え方について解説しています。
■ケース6:育休をとる本人の発言が問題に│テーマ:パタハラ
「産休前に仕事を終わらせないと」と焦っている部下は、自分の都合を周囲に押し付けていました。周囲のメンバーは不満が溜まっています。制度を利用する側への注意・指導の仕方について考えます。
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INDEX
日経平均株価が過去最高を更新したのは、半導体関連や自動車業界、商社などを中心に「稼ぐ力」を取り戻した(上場)企業の株価が上昇したことに起因していると言われています。
好調さを維持する大企業に比べ、中小企業の多くは、未だ物価高やエネルギー価格、物流費の高騰などへの対応に苦慮しているというのが現実です。もちろん、すべての中小企業が不振なわけではありません。中小企業の強みである小回りの良さを発揮し、市場の変化に機敏かつ柔軟に対応して成長軌道に乗っている企業もあります。
我が国の中小企業を取り巻く情勢を簡潔に表現するなら、企業間の競争力の格差が大きくなり、「勝ち組-負け組」の区分けが明確になってきたと言えるでしょう。
では、中小企業間の競争力の格差を生み出す要因は何でしょうか。
弊社では、2011年から『松下幸之助経営塾』という講座を開講し、これまで300名以上の中小企業経営者の方々に受講いただいてきました。当塾では10カ月にわたる講座期間中に、経営者としてのあり方を徹底的に議論しますが、最終的にたどり着くのが「経営者の器」以上に企業は大きくならない、という結論です。
実際、経営者自身が考え方と行動を変えることで業績が劇的に向上した企業事例は、枚挙にいとまがありません。こうした事例にふれたり、当該経営者の方と話をするにつけ、「経営者の器」の重要性を強く感じさせられるのです。
「経営者の器」を大きくするためには、相応の努力が必要であることは言うまでもありません。自身の強み、弱みを理解したうえで、器を大きくするための学びを継続的に行うのです。
多忙な経営者が学びの場をもつ上で、以下の5つのポイントから自分に合ったやり方を選択してみてはいかがでしょうか。
自分の生き方に影響を与え、使命感を感じさせてくれるような「師」の存在は、経営者の器を大きくしてくれます。(株)ユーグレナの創業者で社長の出雲充氏は、グラミン銀行創設者 ムハマド・ユヌス氏をメンターと仰ぎ、彼との約束を果たすために創業し、会社を成長させてきたと言います。
経営者としての考え方が間違っていないか、確認することは意外と難しいものです。そこで、経営者を対象としたコーチングの専門スキルをもつ「エグゼクティブ・コーチ」をつけ、壁打ち役となってもらうことで、自身のあり方を客観視することができ、たくさんの気づきが得られます。
世のため、人のためを思って、真剣に仕事をしているような経営者との出会いは、強烈な刺激を受け、自身のモチベーションが高まります。ただ、経営者が集まる場であれば何でもいいということではありません。志をもった経営者が集まる場であるか否か、多くの情報を参考にしながら見極める必要があります。
日々、自らのビジョンを確認したり、課題を列挙するなど、自分と向き合う時間をとることは重要です。ITエンジニアリング企業・アイエフエスネットグループの創業者である渡邊幸義氏は、毎朝2:00から7:00まで、自分と向き合う時間を取っています。このルーティンによって、考えがぶれなくなり、やるべきことをやる勇気も生まれてくると言います。
ジャンルを問わず、良書と言われる書籍を読むことは視野の拡大につながります。読書を通じて先人の遺した叡智を取り入れることで、経営上の課題や、経営者としての自己成長を図るためのヒントが得られるでしょう。
小学校を4年で中退し、学校教育をまともに受けられなかった松下幸之助(パナソニックグループ創業者・弊社創設者)は、学ぶことに対する欲求が人一倍強い経営者でした。幸之助は、学ぶ上で大切なことは、その人の心のあり方だと説きました。
本人に学ぶ心があり、勉強する心さえあれば、何からでも学べます。教材というものは、学校の先生が書物から取って教えてくれる教材もあれば、神羅万象すべても教材になる。(中略)やっぱり、感受性ですな。感受性のない人は、どんないいことを聞いても、どんないい本を読んでも、分かりません。感受性を鋭くしておかないけませんね
出典:雑誌『マネジメント』1979年
学ぶ心と感受性、これらを磨き高める努力を続けることで、「経営者の器」が徐々に大きくなっていくのではないでしょうか。
的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。
部下との面談を効果的に進めることによって、部下の能力や自主管理によるモチベーションの向上、高いコミットメントによる確実な目標達成が見込めます。しかしながら「面談に自信がない」というマネジャーは少なくありません。
そこで本研修では、受講者の事前学習を前提にして、オンライン・3時間の研修で実践的なスキルと対応力を身につけていただきます。詳しい資料をPDFでご用意しました。目標管理制度における面談を担当するマネージャーの方々向けに、ご検討ください。
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INDEX
Z世代ということばは、すっかり一般用語化した感がありますが、Z世代とは、1990年代半ば~2010年代半ば生まれの人のことを指します。2025年には生産年齢人口(15歳~64歳)に占めるZ世代とミレニアル世代(80年代~90年代半ば生まれ)の割合が上の世代を逆転し、社会を構成するマジョリティになると言われています。
旧世代とは異なる価値観や思考・行動パターンをもつ若い世代が主流派になることで、社会活動全般に大きな変化が起きるのは間違いありません。したがって、企業が事業を継続するためには、これまでの常識にとらわれない新しい発想で、活動のあり方、やり方を見直さなければなりません。
人材マネジメントの視点からは、労働力としてのZ世代人材をいかに採用・育成・定着させるかが、企業存続のための重要かつ喫緊の課題と言えるでしょう。
Z世代の若者たちの特徴として、「貢献感」と「成長実感」を求める傾向が強いという指摘があります。
貢献感とは、自分の行動が誰かの役に立ち、その結果「ありがとう」「助かりました」「あなたのおかげです」といった、感謝のメッセージを受け取る経験を通して得られる感覚のことです。一方の成長実感は、「できなかったことが、できるようになった」「精神的に強くなった」等、仕事を通じて自らの専門性や人間性が高まったと認識することで強化される感覚を指します。
これら「2つの感」が満たされるか否かが仕事を選ぶ基準となっていて、そこに物足りなさを感じると、いとも簡単に離職する見切りの早さがこの世代の特徴と言えます。
参考記事:最近の若者の特徴と効果的な新入社員研修│PHP人材開発
Z世代の特徴をふまえた上で、彼らを惹きつけ(採用)、繋ぎとめる(リテンション)カギとして考えられるのが以下の4項目です。
規模の大きい企業や官僚的な組織ほど、「この仕事はまだ彼(彼女)には早い」という考え方を上司がもつ傾向があるようです。そうではなく、思い切って若手に責任ある仕事を任せることで、「この仕事は自分の仕事だ」という所有感が芽生え、責任意識や主体性が高まり、ワークエンゲージメント向上につながります。
組織や事業の存在意義を明確にし、それを伝えることで、Z世代の求める「貢献感」の解像度が上がります。「なぜ、自社は存在するのか」「なぜ、この事業を存続させる必要があるのか」等々、Whyを媒介としたコミュニケーションを図ることで、彼らのモチベーションが喚起されます。
Z世代の社員としっかり向き合い、相手の価値観や意見を傾聴・受容することで、彼らの「存在承認欲求」が満たされます。経験量で勝る上司や先輩の考え方が正しいという前提を捨て、Z世代の斬新で多様な価値観をリスペクトできるか、現場の意識改革が重要になります。
社内のキャリアパスの多様性を拡げると、さまざまな業務を経験できるので個々の成長が促進します。逆に、キャリアパスの選択肢が少ないと、「〇〇の専門性を高めるためには他社に行くしかない」という転職動機を高めるリスクにつながりかねません。
既述の通り、人口構成比上のマジョリティが変わろうとしている今、私たちは社会の大きな変化に直面しています。そうした状況下、経営者や現場のリーダーが過去の成功体験や常識にとらわれていると、仕事上の成果を上げることは難しくなります。
かつてのように企業が強大な影響力をもち、プロダクトアウトの発想で商品を市場に供給したり、労働市場から人材を選別・採用していた時代は終焉しました。今や、企業・組織が消費者や労働者から選ばれる時代になったのです。
したがって、今後の社会を支えるZ世代を中心とした若い世代から選ばれるような経営の進め方、マネジメントのやり方を志向し実践することが、これからの競争を勝ち抜くKFS(重要成功要因)となるでしょう。
Z世代の特徴と育成のポイント、研修プログラム、さらに指導者(上司)向け研修プログラムをご紹介しています。ぜひダウンロードしてお役立てください。
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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。
INDEX
コミュニケーション研修とは、組織で働くうえで必要となるコミュニケーション力を習得するための研修です。社内外で、年齢や性別、立場の異なる人と関わるビジネスパーソンには、相手とスムーズに意思疎通を図り、良好な関係を構築するためのスキルが求められます。従業員一人ひとりがコミュニケーションスキルを向上させることによって、組織の業務円滑化や、生産性向上を図ることができます。
コミュニケーション能力は、すべての仕事の基盤となるため、新入社員からマネジャー、経営層まで、役職や立場に関わらず必要です。しかし、階層別に求められるスキルが変わります。専門性の高いスキルを学ぶ場合など、必要に応じて外部から講師を招いて研修を実施することで、より大きな成果が得られるでしょう。
階層別研修や職種別研修、ビジネススキル研修が存在するなか、特にコミュニケーションに特化した研修を実施する意義はあるのでしょうか。答えはイエスで、コミュニケーション研修を実施することで、さまざまなメリットが期待できます。目的やメリット、どのような効果があるかを確認していきましょう。
研修によって社内のコミュニケーションが活性化すれば、従業員同士の関係性の構築に役立ちます。
職場で会話をする機会が不足していると、つながりや連帯意識が希薄になります。同僚や上司と最低限の業務の話しかしない環境では、やりがいを持ちにくく、仕事に対する満足度まで低下しかねません。
コミュニケーション研修で、コミュニケーションの大切さやスキルを学び、職場で実践すれば、コミュニケーションが質・量ともに向上し、従業員同士の関係が良くなることも期待できます。
コミュニケーション研修では、人の話を聞く力や、自分の意見を分かりやすく伝える力など、人との関わりで重要なスキルを伸ばすことができます。また、コミュニケーションの前段階として必要になる社会人としての身だしなみや言葉遣い、挨拶なども学びます。
相手にとって適切なタイミングを見極め、言葉遣いや話し方に気を配りながら、不快感を抱かせずに自分の意見を伝えることができれば、本人の自信につながり、仕事力を高めるために大いに役立ちます。
意思疎通が円滑になり業務がスムーズに進めば、生産性の向上につながります。
たとえば、情報の伝達に抜け漏れがあれば、取引先から事前に伝えた内容と違う成果物が出されたり、部下が意図とは異なる行動を取ったりと、仕事に無駄が生じかねません。
研修によって、コミュニケーションスキルを習得すれば、取引先との関係も改善し伝達がスムーズになります。また、部下への指示も円滑になります。職場での情報共有が進めば、生産性の向上も期待できるでしょう。
人材の定着や離職率の改善に役立つことも、コミュニケーション研修の大きな利点です。セクハラやパワハラなど直接的な理由以外にも、社内の人間関係を理由とする離職・転職は後を絶ちません。
コミュニケーションに問題を抱える企業は、往々にして社内に険悪な雰囲気が蔓延し、従業員同士が不仲です。気軽に相談できる環境でもないため、悩み事やトラブルが生じても誰にも打ち明けられず、悶々としている若手社員もいるはずです。こうした環境に耐えられず「人間関係が良好な環境で働きたい」「もっと自分を評価してほしい」と感じて、会社を辞める決断をするのです。
コミュニケーション研修を受けた上司が、得た知見を実践できれば、職場の雰囲気は良くなります。業務やプライベートに関する悩みや心配事を気軽に打ち明けられるようになると、従業員は居心地良く感じて、会社を辞めようとは思わなくなるでしょう。
コミュニケーション研修で身に付くのは、相手の気持ちに配慮しつつ、自分の意思を分かりやすく伝える力です。これらは顧客や取引先との円滑なやり取りに役立つ能力です。
従業員のコミュニケーションスキルが未熟であると、言葉足らずや不愛想な対応が原因で相手を怒らせてしまうことがあります。最悪の場合、取引の停止や契約の解消など会社に実害が生じるケースを引き起こします。
さらにプレゼンテーション力や提案力をはじめ、利益に直結する高度な能力の習得も可能です。コミュニケーション研修では社外の多様なステークホルダーと良好な関係を気付く力を伸ばし、ひいては事業の拡大にもつながります。
コミュニケーション研修で学ぶ内容は、主に話し方と聴き方に分けることができます。
コミュニケーション研修では敬語や言葉遣いを含め、伝えたい事柄を相手に伝えられる話し方を学びます。
「伝える」と「伝わる」の字面は似通っていますが、同じ意味ではありません。情報を伝達する側は相手に伝えたつもりでも、聞き手が正確に内容を理解しているとは限らないからです。
ビジネスシーンでは、限られた時間で論理的に話すことが求められます。また、立ち振る舞いや表情など言葉以外にも目を向け、こちらの真意が伝わる話し方を心がける必要があります。コミュニケーション研修では、考え方やスキルを実践的に身につけることで、話すことへの苦手意識を払拭し、意思疎通ができる話し方を習得するきっかけをつくることができます。
相手と良好な関係を築くために、話す力と同じくらい重要になるのが聴く力です。コミュニケーションは言葉のキャッチボールとも呼ばれ「話す」→「聴く」→「話す」→「聴く」の繰り返しで成り立っています。良好なコミュニケーションを成立させるには、相手の話す内容を理解するための聴く力が欠かせません。
コミュニケーション研修では、同僚や上司、部下の話に耳を傾ける重要性や、上手な聴き方について学びます。研修で学んだ内容を自分のものにできれば、しっかり聴くことによって相手に信頼されるとともに、相手の人となりをしっかり理解しながらより良いコミュニケーションができるようになるでしょう。
コミュニケーション研修は、対象となる階層によって学ぶ内容を変える必要があります。ここでは、新入社員から中堅社員、管理職まで、階層別に研修プログラムにとりいれたいスキル等をご紹介します。
新入社員や若手社員は、コミュニケーションの基礎的なマナーを理解したうえで、自分の意見を発信するスキルを身に付けることが大切です。特に、上司や先輩から業務の教えを請う機会が多い新入社員には、指示の受け方や質問の仕方をまずは習得してもらいましょう。
新入社員~若手社員向けの研修では、職場で実践できる基礎的な内容を学ぶ研修プログラムにするのがポイントです。
若手には仕事の進め方や受け方などコミュニケーションの基礎に加え、報連相の基本を学べる研修がおすすめです。報告・連絡・相談を適切に行うことができれば、まだメンバーとして日が浅いながらも、チームの戦力として活躍できます。
新入社員や入社間もない社員によくある悩みが「報・連・相をどこまで行えばよいか分からない」というものです。報告の頻度が少なくて叱られることもあれば、「いちいち細かいことまで伝えなくて良い」とたしなめられることもあります。また、上司が忙しそうにしていて話しかけにくい状況も、ありがちなシチュエーションです。
若手向けのコミュニケーション研修では、適切な報・連・相の頻度やタイミングを学ぶことが可能です。ロールプレイングやケーススタディを取り入れて、実践形式で適切な対応を学びます。
アサーティブコミュニケーションとは相手の気持ちや状況を尊重しつつ、自分の気持ちや意見を率直に伝えるためのスキルです。ビジネスシーンでは言い出しにくい事柄や、相手を怒らせる不安がある事柄でも伝えなければならない局面に見舞われます。
新入社員や若手社員の場合、たとえば休暇の取得を切り出す際や、ミスをしたときの報告などが該当するでしょう。また、キャパシティ寸前まで業務を抱えているのに新たに舞い込んだ仕事を断れないというケースもあるかもしれません。「先輩や上司の状況を考慮して、うまく伝える方法はないか」と悩むこともあるでしょう。
アサーティブコミュニケーション研修では、切り出しにくい内容でも、相手を不快にしないための伝え方の極意を学べます。講義とケーススタディ、ロールプレイングを織り交ぜ、実践的に学ぶことができれば、職場に戻ってすぐ役立つのも利点です。
中堅社員になると、内外問わず多くの人々と接する機会が増えます。リーダー候補になる人もも出始め、社員教育にも熱が入るでしょう。
将来有望な中堅社員には、考えを論理的に伝える力や効果的な提案ができる力などが求められます。さまざまなプロジェクトで中心を担う彼らのコミュニケーション力が伸びれば、事業に与えるインパクトも少なくありません。
コミュニケーション研修では、フィードバックやリーダーシップの能力を習得します。
プロジェクトのけん引役を期待されるリーダー候補には、新任管理職に必須となる傾聴力や質問力、指示だしのスキルが求められます。初めて仕事で人の上に立つ立場になると、部下との接し方やリーダーシップの発揮の仕方が分からず、右往左往するものです。
リーダーとして、組織のミッション・ビジョンやチームの方向性、自身の考え方を分かりやすく伝えるスキルは重要で、管理職になる前から鍛えておくことが必要です。しかし、それ以上に、メンバーの話を聴き、業務の進捗状況はスムーズか、トラブルは起きていないかなど、質問を投げかけながら、後輩のふりかえりと成長を促す力も求められます。
コミュニケーション研修では、リーダーシップ以外にも、褒め方・叱り方、モチベーションを惹きだす接し方、報告の受け方などをプログラムに組み入れましょう。
指導する後輩の成長を促すには、先輩にあたる中堅社員からの効果的なフィードバックが重要になります。単なるダメ出しで終わらないためには、良い点も伝え、共に改善策を考えることが重要です。
従来、フィードバックは感覚的に行われてきた部分が大きく、もっぱら悪い点のフィードバックばかりが叱責に近い形で行われているケースもありました。しかし、それでは部下や後輩の共感は得にくく、成長にはつながりません。
コミュニケーション研修を実施して、フィードバックについての正しい考え方やスキルを習得し、職場で実践すれば、部下や後輩の成長につながります。中堅社員やリーダー候補へのコミュニケーション研修は、今後、管理職になったときにも活かせるよう、部下との関わり方や成長を支援する方法までを学ぶ内容にするとことが大切です。
部長や課長など部下を束ねる立場の管理職が、適切なコミュニケーション力を身につけているかどうかは、組織に非常に大きな影響を与えます。そのため管理職を対象にしたコミュニケーション研修で、最もとりあげられているのは、コーチングのスキルです。また、会議やミーティングではファシリテーターとして議論を円滑に進める立場を担うケースが多いため、ファシリテーションのスキルも習得しておきたいものです。
コーチングは管理職が新人リーダーや若手社員を育てるために欠かせないスキルです。一人ひとりのモチベーションを高め、自立性や主体性を伸ばすために、管理職には必ず身につけてほしいものです。
部下が自ら問題や課題の解決に取り組めるようになるには、上司の適切な働きかけが必要です。コーチング研修では傾聴力や質問力、部下に寄り添う承認力などを鍛えます。
コーチングを成功させるポイントは信頼関係です。信頼関係の醸成は心理学の用語で「ラ・ポール」とも呼ばれ、より良い指導をするための重要なキーワードに位置づけられています。職場で、部下が上司を信頼し、安心して仕事に取り組める心理的安全性が確保されていれば、上司の指導を受け入れやすく、成長にもつながります。
会議やミーティングでは通常、管理職が司会進行の役割を担います。話し合いをうまくリードし、参加者の意見を引き出しつつ、時間内に結論を出すには、司会役のファシリテーションスキルが重要です。管理職がファシリテーションスキルをもっていれば、短時間に建設的な議論が実現しやすくなります。「いつも特定の人しか発言しない」「会議を開いても結局何も決まらずに終わる」などありがちな失敗のリスクも減ります。
コミュニケーション研修ではロールプレイングを通じて、実践的なスキルを習得することが重要です。場の雰囲気をつくる力や対人関係力、合意形成スキルなどが身に付き、中立的な立場で進行しながら、端的に議論をまとめあげる力を伸ばします。
参考記事:会議の生産性を高めるファシリテーションとは? メリットや進め方を解説│PHP人材開発
コミュニケーション研修は、顧客の獲得や利益の拡大といった数字に表せる成果を目標にすることが難しいという特徴があります。研修の効果を実感しにくいという面がありますので、次のポイントを意識して実施し、中長期的に組織やチームにさまざまなメリットをもたらすことを意識して取り組みましょう。
●対象者を明確にする
●研修の目的と課題を決定する
●実施後は研修内容を振り返る
業務上求められるコミュニケーションのレベルは職位や年齢に応じて異なります。研修を企画する際には、はじめに対象者を明確にしましょう。階層別に実施するのであれば、先述のとおり、新入社員~若手社員、中堅社員・リーダー候補、管理職といった分け方があります。階層ごとにコミュニケーション上の課題があるため、対象者に刺さる内容にするには、対象の分類と絞り込みがとても重要です。
コミュニケーション研修を通じて達成したいことや、解決したい課題を決めましょう。目標に適しているのは、ミスの減少や商談機会の増大など数値化できる項目です。また、前述した対象者が抱きやすい問題と結びつくような課題の選定が求められます。
研修の目的や受講後に達成したい事柄は事務局側で把握すれば良いのではなく、受講者にも周知を図ることがポイントです。ゴールが明確であれば、研修を受ける側はより前向きに取り組みやすくなるためです。
研修はやりっぱなしにせず、実施後に研修内容を振り返る場を設けることが非常に重要です。せっかくコミュニケーションスキルを身に付けても、時間の経過によって忘れてしまっては意味がありません。
また、コミュニケーション研修で学んだ内容は、職場で繰り返し実践をすることで徐々に自分のものになっていきます。研修を振り返る機会を設け、レポートの提出やプレゼンテーション、アンケートの作成などに取り組んでもらいましょう。研修後、研修で得た知識の定着を図り、実務に活かせるようにしたいものです。
振り返りは、研修の受講者だけでなく、企業側にとっても重要です。費用や時間をかけて実施した研修が本当に効果があるのか、受講者の顔色だけでは判断できません。アウトプットで得た反応を通して研修の内容がどの程度頭に入っているか分かります。
コミュニケーション研修では対象となる層を特定し、従業員の課題を解決に導くような内容が求められます。対象者や目的に応じてプログラムの内容を変えることで、効果的な研修が実現します。対象者の分類や課題の十分な洗い出し、適切な目標の設定ができれば、コミュニケーション研修は成功しやすくなります。
まずは自社のコミュニケーションで生じている問題を特定し、とくに教育が必要な階層を見極め、研修計画を立てると良いでしょう。
INDEX
昨年来、日本の株式市場が活況を呈し、日経平均株価は34年ぶりに37,000円を上回りました。また大企業を中心に最高益を更新する企業も続出しています。一見すると日本の産業界は、コロナ禍や戦争、物価高等の障壁を乗り越え、力強さを取り戻しつつあるかに見えます。
しかし、個々の企業に目を転じると解決すべき問題が山積しています。具体的には、ホワイトカラーの生産性の低さ、不祥事を根絶できないマネジメント、イノベーションが起きにくい職場風土、等々があるでしょう。こうした問題は、以前から企業の現場で発生していましたが、根本的な解決が図られることなく先送りにされてきた感があります。
日本の会社が抱える諸問題は、「やらされ感」を感じながら仕事をする社員が多い(※1)ことに起因するという指摘があります。やらされ感で仕事をすると、やる気が上がらないので、当然パフォーマンスも上がりません。今、多くの会社に必要なのは、やらされ感から解放された自走する組織をつくることでしょう。
自走する組織とは、組織を構成する社員一人ひとりが、自ら走ることができる組織と定義できます。自走組織では、人びとは指示命令を受けて行動するのではなく、やるべきことを自分で考えて行動します。自分で決めたことに対しては所有感が高まりますし、最後までやり抜こうという責任感も芽生えます。また、もっと効果的・効率的なやり方はないか、創意工夫する発想も誘発され、イノベーションの創出にもつながります。
※1 米国のギャラップ社の調査(2023年公表)によると、日本企業の従業員のやる気は調査対象125カ国中、最低であった。
レーザーの専門商社である(株)日本レーザー(年商:62.9億円、社員数:60人)は、現会長の近藤宣之氏のリーダーシップのもと、社員が一丸となって自走組織をつくってきました。
同社にはノルマがありません。営業部門では、個々の営業担当者が自分で販売目標を設定し、それらの総和がボトムアップ的に経営層に上げられ、会社の事業計画としてオーソライズされます。自分で設定するからといって、安易に達成できるような低いレベルに目標を置く社員はいません。そして、自分で決めた目標を達成するために、強い責任感をもって最後までチャレンジし続けていきます。
同社が競争の激しい業界の中で、無借金経営、29年間連続黒字を達成しているのも、自走する組織をつくり上げたことが大きな要因であると思われます。
日本レーザーでは、最初から理想的な組織運営ができていたわけではありません。かつては債務超過に陥り、倒産の寸前まで追い込まれた時期(1994年)もありました。同社の再建のために親会社(当時)の日本電子から送り込まれた近藤氏が、人を大切にするマネジメントを徹底することによって徐々に会社が変わっていったといいます。
近藤会長が、試行錯誤を重ねながら到達した「自走する組織づくりのポイント」は以下の3点です。
(1)主体者意識を育む
・あらゆる教育機会を活用して、自分たちの事業が果たす社会的責任や意義を徹底的に腹落ちさせる
・指示命令ではなく質問を多用し、自分で考えさせる
・マイクロマネジメントを排除し、信じて任せる
・チャレンジした結果の失敗は責めない
(2)健全な危機意識を醸成する
・すべての社員に経営情報を開示し、経営状況を理解させる(尻に火を点ける)
・ビジョンを明示し、ワクワク感を高める(心に火を点ける)
(3)仲間意識を育む
・人の可能性と善性を徹底的に信じる
・リストラは決して行わない
・心理的安全性を高め、一人ひとりの本音を引き出す
・社外のステークホルダーも仲間と位置づけ、大切にする
ここまで日本レーザーにおける実践事例をもとに、自走する組織のつくり方を考察してきました。具体的にどういう仕組みをつくり、何をするかは重要ですが、もっとも大事なことは、経営の根底にある人間観のあり方です。
もし、経営者やリーダーが組織を構成する「人」の可能性と善性を信じることができなければ、いかにすぐれた仕組みや仕掛けがあったとしても、自走する組織をつくることはできないでしょう。
組織を活性化させたいという問題意識があるなら、まず経営者、リーダーの方々が、自らの人間観の内容を点検してみることを強くお奨めしたいと思います。
的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。
INDEX
動画研修とは、オンラインで研修動画を視聴することでスキルや知識を身につける育成手法です。動画研修は、インターネットに接続されたパソコンやスマートフォンでいつでもどこでも学習できるため、「eラーニング」というカテゴリーに分類されます。動画研修で学べる内容はさまざまで、具体的には以下のようなものがあります。
●企業のビジョンや方針
●業務の手順や方法
●仕事に必要なルールやマナー
●新入従業員向けの基礎研修
●管理職向けのマネジメント研修
●法令や倫理に関するコンプライアンス研修
限られたリソースでも充実した学びを提供できる動画研修は、その効果から注目を集めています。また、新型コロナウイルスの影響でリモートワークやオンライン会議などが一般的になり、企業の働き方が大きく変わりました。このような状況下でも、場所や時間に制約されずに学習できる動画研修は、その利便性から高い評価を受けています。
時代のニーズに応える形で動画研修を導入する企業が増えているのは、その効果と利便性が認められているためです。
研修動画とオンライン集合研修の主な違いは、受講者が視聴する動画教材がリアルタイムで提供されるかどうかです。オンライン会議システム(ZoomやTeamsなど)を利用したオンライン集合研修では、講師と受講者が同時に参加し、リアルタイムで学習を進めます。
それに対して、動画研修は事前に撮影された教材を用い、受講者が自分の都合のよい時間に視聴する形式です。このため、受講者は自分のペースで学習を進めることが可能で、その自由度が動画研修の大きな特徴となっています。
動画研修には主に4つの種類があります。
●マニュアル形式
●講義・セミナー形式
●ドキュメンタリー形式
●再現ドラマ形式
それぞれの種類には、研修によって向き不向きなどの特徴があります。充実した研修を実現するためには、目的や対象者に応じたものを選ぶことが大切です。
マニュアル形式の研修動画は、業務用システムの操作方法や具体的な作業手順を示すものです。マニュアルに記載する内容を動画化することで、作業手順を直感的に理解しやすくします。
受講者にとって、単にテキストのマニュアルを読むよりも、動画で視覚的に学ぶことで作業の内容をイメージしやすく理解が深まるでしょう。ミスも防ぎやすくなります。とくに、接客業務が中心となるアパレルや飲食、テーマパークなどの業種ではマニュアル形式の活用が効果的です。
講義・セミナー形式の研修動画は、研修講師が受講者に対して講義を行うスタイルを指します。その制作方法は主に2つあります。1つ目は、講師が直接受講者に向けて説明しているように話す様子を撮影する方法、2つ目は、実際の講義の様子を収録する方法です。
新入従業員研修や業界知識、仕事に必要な基本的な知識の解説、マナー教育など、理論的な学習が中心の研修にはこの形式が有効です。講義形式の動画を一度制作すれば、その後の研修では都度、講師を手配して実際の研修を実施する必要がなくなるため、運営負担を軽減できます。これが、講義・セミナー形式の大きな利点といえます。
ドキュメンタリー形式とは、職場の風景や働く人の姿、従業員のインタビューなどを収録した動画です。視聴者に対して企業の雰囲気や従業員の率直な意見を伝えることができます。
また、ストーリーテリングの要素を取り入れることで、視聴者は飽きることなく視聴を続けられる点もポイントです。企業の理念や社風、そして従業員の声といった要素を効果的に伝える用途で主に使われます。
再現ドラマ形式とは、実際の業務で起こり得るさまざまなシチュエーションを具体的に再現した研修動画のことです。具体的な事例を提示しながら必要な情報を伝達できます。
とくに、マナー研修やコンプライアンス研修、ハラスメント研修などにおいては、この形式の研修動画が非常に効果的です。各ポイントについて、正しい行動例と不適切な行動例を具体的に示すことで、視聴者に考えさせ、理解度を深めることができます。
動画研修を実施する側のメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
●コストが抑えられる
●研修の準備負担が軽減できる
●均一の内容を繰り返し提供できる
研修を実施する側にとっては、準備や開催にかかるコストを抑えられる面が大きなメリットとなます。
集合研修と比較して、動画研修では会場費、講師の講演料、受講者の交通費や宿泊費などのコストを大幅に削減することが可能です。動画教材は、法制度の変更などで内容が変わってしまわない限り、一度作成すれば何度でも再利用できるため、非常に経済的です。導入初期には一定のコストが発生しますが、長期的な視点で見ると、集合研修に比べて運営費用の削減が期待できます。
また、対面研修では難しい大人数を対象にした一斉研修も可能です。多くの受講者が集まる場合、スケジュールの調整や会場の手配といった課題が生じます。しかし、動画研修では、それらを気にせず、機動的に実施できるのも大きなメリットといえるでしょう。
動画研修はオンライン上で完結するため、集合研修に比べて研修の準備負担が大幅に軽減されます。集合研修では講師のスケジュール調整や会場の手配、準備などが必要ですが、動画研修ではこれらに手間をかける必要がないため、実施側の手間を省くことができます。
研修のなかには、新入従業員の導入研修などのように毎シーズン実施するものや、コンプライアンス研修のように定期的に実施するものがあります。その準備にかかるリソースを軽減できることは、運営側にとって大きなメリットになるでしょう。アプリなどをうまく利用すれば、配信時間を設定したり、受講者の視聴状況を集計したりといった作業も自動化できます。
研修準備の負担が軽減できるのは、実施する人事部門などにとって大きなメリットといえるでしょう。
集合研修では、講師の教え方や、研修にかけられる時間によって、教育内容や受講者の理解度にばらつきが生じることがあります。しかし、動画を用いた研修では、環境に影響されず、一定の研修品質を維持することが可能です。
また、1回の研修では知識の定着が難しい内容でも、動画研修であれば繰り返し視聴して復習することができますし、フォロー研修の実施も比較的容易です。これにより、受講者の知識の抜け漏れを防ぎ、定着を図ることができます。
動画研修は実施する側だけでなく、受講する側にとってもさまざまなメリットがあります。具体的なメリットは、次の3つです。
●時間や場所を問わずいつでも受講できる
●自分のペースで繰り返し視聴できる
●受講への心理的ハードルが低い
動画研修は、いつでも都合のよい時間に受講でき、業務に影響を与えることなく学習を進められるという大きなメリットがあります。これまでの集合研修では、時間や場所が固定されるため、忙しい人や勤務時間が不規則な人、地方拠点に勤務する人などにとって受講が難しい場合がありました。とくに、本社で集合研修が行われる場合、地方拠点に勤務する人は職場を離れる必要があり、業務効率にマイナスの影響を及ぼすというデメリットがあります。
しかし、研修動画を活用すれば、インターネット環境があれば、都合のいい時間と場所で学習を進められ、勤務時間や勤務地に左右されず、すべての従業員に均等な研修機会を提供することが可能です。さらに、育児休暇中の従業員も研修を受けることで、スムーズな職場復帰を実現することが可能です。
動画研修は、集合研修とは異なり、見逃したり聞き逃した部分を何度でも再視聴することが可能です。たとえば、理解できた部分は倍速で視聴し、理解が難しい部分は何度でも見直せるため、受講者は自分の理解度に合わせて学習を進められます。
さらに、復習のために一定期間を置いて同じ研修動画を再視聴することも可能です。たとえば、実務の手順に関する研修動画であれば、現場で疑問や不明点が生じた際に、該当する動画を再視聴することで問題を解決できます。問題が発生したときにタイムリーに疑問を解消することは、知識の定着や業務の効率化にもつながるでしょう。
対面形式の研修と比較して、動画研修は心理的な負担が少ないこともメリットの1つです。動画研修では、発言を強制されることなく、リラックした気持ちで学習に取り組めます。「研修を受けなければならない」というプレッシャーを感じることなく、自然体で学びを深めることが可能です。
さらに、場所を選ばずに学習できるため、自宅などのリラックスした環境で、自分のペースで学習を進められることも心理的ハードルを下げてくれます。このように心理的ハードルが低いリラックスした状態で、周りの目を気にせずに理解するまで何度でも動画を視聴できることは、研修の理解度アップにもつながるでしょう。
これまで紹介してきた通り、動画研修にはメリットが多いですが、デメリットも存在します。具体的なデメリットは、次の4つです。
●動画をダウンロードできる通信環境が必要
●受講管理に手間を要する
●疑問をその場で解消できない
●集中力を保つのが難しい
動画研修を導入する際は、メリットとデメリット両方を把握しておくことが大切です。デメリットを把握し、解消方法も理解することで、より効果的な動画研修を行いましょう。
動画研修は、動画のダウンロードや再生に伴い、大量の通信データを消費します。そのため、受講する場所の通信環境が不十分な場合、視聴に影響を及ぼす可能性があります。とくに、大容量の動画を視聴しようとすると、通信制限に達するリスクがあり、自身のデバイスを使用している従業員には負担がかかることも考えられるでしょう。
そのため、状況によっては通信環境の改善が必要です。解決策として、たとえば受講者にポケット型Wi-Fiを支給するなどが考えられます。
集合研修と比べて、実施にかかる手間が大幅に軽減されるとはいえ、動画研修の運用にも、受講案内の発信や受講状況の把握など、一連の管理作業が伴います。
また、研修成果を把握するためには、どの従業員が受講を完了し、どの従業員がまだ研修を受けていないかを正確につかんでおくことが重要です。しかし、受講状況の把握を従業員自身の報告に依存している場合、管理業務が担当者にとって大きな負担になります。
この問題の解決策として、受講管理機能を備えたeラーニングシステムの導入が有効です。このシステムを導入すれば、動画研修をオンライン環境で配信し、受講管理やリマインドを簡単に行えるようになります。
動画研修の1つの課題は、双方向でないためリアルタイムでの質疑応答ができないことです。動画研修を受講するなかで受講者が疑問を持った場合でも、その場で解決することができません。受講者は講師や担当者に質問内容を伝え、その回答を待つ必要があります。
この問題を解決するための1つの方法として、動画研修の最後にアンケートを実施し、動画視聴後にすぐに対応できるようにするといいでしょう。
受講者同士でコミュニケーションを取るグループワークの実施は難しいことも、デメリットの一つです。動画研修は個々で学べる分野に特化して活用し、その他の研修手段も併用することで効果を上げることができます。
動画研修は、対面研修に比べて緊張感が低くなりがちで、集中力を維持するのが難しいという課題が存在します。集中力が途切れやすくなり、他のことを考えたり、別の作業を並行して行ったりする可能性があります。
この問題を解決するための1つの方法として、動画研修に個人ワークや確認テストを組み込むことが考えられます。これにより、受け身の学習に陥りがちな動画研修でも、受講者が主体的に学習を進めることが可能です。また、内容を深く理解しなければテストに回答できないため、研修の理解度も向上します。
動画研修は、さまざまなテーマ、目的で実施されています。具体例としては、主に次の6つです。
●マニュアル研修・業務フロー研修
●業務フロー研修
●ビジネスマナー研修
●コンプライアンス研修
●自社製品・サービス研修
●トップからのメッセージ動画の共有
マニュアル研修は、仕事を進めるうえで必要となる具体的な業務手順を説明する研修です。たとえば、営業部門では、セールスプロセスを視覚化した動画から学びます。また、接客では接客の流れや重要なポイントを、作業マニュアルでは業務手順や機械の操作方法などを学びます。
新入社員の配属や新規ビジネスの展開時には、業務フロー研修が有効です。業務の進行方法やシステムの操作方法など、マニュアル化可能な内容を動画化することで、業務の効率化につながるでしょう。
マニュアル研修・業務フロー研修の種類は多岐にわたりますが、内容は、従来、現場のOJT(On the Job Training)で教えられていたものです。動画教材を用いることにより、より多くの従業員にわかりやすく効率的に伝えられるようになりました。テキストのマニュアルでは理解が難しい内容でも、動画であれば作業の流れや実際のポイントが視覚的に理解しやすく、何度でも視聴できるという利点もあります。
さらに、動画を用いたマニュアル研修では、教える人による内容のばらつきがないため、営業力の強化、サービスの均一化、新人スタッフの即戦力化、売上向上などをテーマに、効果的な研修を実施できます。基礎的な部分をマニュアル研修でカバーすれば、教える側となる熟練した作業者や先輩社員が作業を止めることなくなるため、生産性の向上にもつながるでしょう。
ビジネスマナー研修は、新入社員や若手社員を対象に、ビジネスにおける基本的なマナーを教えるものです。ビジネスマナーはすべての社員が習得すべき重要なスキルであり、その質と内容を均一化する動画研修は、新人社員の教育にとくに有効です。内容が普遍的であるため、一度動画を作成すれば何度でも再利用できることもメリットでしょう。
また、動画を通じて事前に業務知識を習得した上で、集合研修やOJT(On the Job Training)に参加するというアプローチも可能です。この方法を採用することで、集合研修やOJTの時間をディスカッションやロールプレイングなどの応用的な活動に充てられ、研修の効果を最大限に引き出せるでしょう。
コンプライアンス研修は、従業員にコンプライアンスの重要性、違反のリスク、遵守すべき法令、就業規則を理解させ、不祥事の防止と自社の評価向上を目指す研修です。近年では、不適切な販売方法やSNSでの問題発言などにより企業の信頼が失われる事例が増えています。そのため、自社と従業員を保護する観点から、コンプライアンスは優先的に取り組むべき課題です。
とくに、ハラスメント対策などのコンプライアンス研修では、テキストだけでは伝えにくい微妙な表現や、受け手が上司や他者の表情から読み取る感じ方などのニュアンスを伝えるために、動画が効果的に活用できます。
自社製品・サービス研修は、営業スタッフや店舗スタッフに向けて、自社製品の特性を伝えるための研修です。新製品や新サービスの情報を迅速に共有したり、製品の組み立て方法や操作手順などを具体的に示したりするために、非常に効果的なツールといえます。
店長の個人的なスキルに依存することなく、全スタッフ・全店舗で共通の教育内容を共有することが可能です。全員が同じ理解を持ち、サービスの品質を保ってサービスを提供することにつながります。
トップからのメッセージ動画は、社長や経営陣が自身のメッセージを伝える動画です。これは期末の振り返り、年頭の抱負、新卒向けの会社紹介、特定の取り組みに対するコメントなど、さまざまな研修用途で活用されます。メール配信と比較して、トップの情熱や思いを声や表情を通じて直接伝えられるため、社員に対して企業の方向性を示し、モチベーションを向上させる効果があります。
また、企業のオリジナルキャラクターを登場させることでブランディングを強化したり、社員のインタビューや日常の様子を取り入れることで、会社の雰囲気を伝えることが可能です。情報量が多くても、動画を利用することで短時間で効果的なメッセージを伝えられます。
動画研修の効果を高め成功させるためのポイントを解説します。具体的なポイントは、次の3つです。
●研修の目的やテーマを絞る
●受講者の目を引く工夫を取り入れる
●動画は短めに仕上げる
動画研修を実施する際は、上記のように「受講者にとって理解しやすいか、集中しやすいか」という視点を意識することが大切です。
動画研修を実施する際、まずは研修の目的とテーマを明確に設定し、それに基づいて内容を絞り込むことを意識しましょう。多くの情報を詰め込みすぎると、動画が長くなり、受講者の学習意欲を削ぐ可能性があるためです。目的とテーマがはっきりしていれば、どの種類の動画研修が最も効果的かを見極めることも容易になります。
また、受講者に幅広い知識を習得してもらいたい場合でも、優先順位を設定し、必要とされる動画を選択的に提供することが求められます。テーマを細かく分けて、それぞれに対応する動画を作成することもひとつの方法です。これにより、受講者は自分の学習ペースを保ちつつ、必要な知識を効率的に吸収できます。
動画の作成に際しては、受講者が単に受け身にならないような工夫が重要です。視覚や聴覚的な工夫を加えることで、受講者の注意を引きつけられます。
たとえば、重要なポイントに効果音を入れたり、アニメーションを入れたりなどの工夫が考えられます。こうすることで飽きることなく動画の中の要点がわかり、より研修効果を高めることが可能です。
また、動画の途中で質問や理解度チェックの問題を取り入れることも有効です。ただ視聴するだけでなく、考えながら受講できるため、効果的な研修になるでしょう。
ポイントの1にもありますが、研修に用いる動画を作成する際は、再生時間を短くすることが重要です。長い動画は集中力の維持が難しく、視聴者が途中で飽きてしまう可能性があります。過度に補足情報を含みすぎると、要点がわかりづらくなり、研修の効果が薄れてしまいます。また、短いコンテンツにすることで、隙間時間でも学びやすく、受講率の向上につながるでしょう。
ただし、研修の目的によっては、多くの情報を伝える必要があるかもしれません。そのような場合、1つの長い動画を作成するのではなく、複数の短い動画に分割することがおすすめです。
動画研修は、集合研修に比べて労力や時間を大幅に削減できるだけでなく、一貫した内容を繰り返し提供できる、時間や場所に縛られずいつでも受講できるなどのメリットが多くあります。実際に動画研修を導入する際には、「研修の目的を明確に設定する」「参加者を飽きさせない工夫をする」「動画を短めに作成する」というポイントをおさえることで、より効果的な動画研修を行えるでしょう。
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レピュテーションリスク(レピュテーショナルリスク)とは、企業に関する否定的な評価・評判が世間に周知されることで企業の信用やブランド価値等が悪化し、結果的に損失を被るリスクをいいます。企業に関するネガティブな評価・評判は、企業の信用やブランド価値を悪化させ、顧客や取引先離れを引き起こし、社員の不安を増大させます。それが、業績の低下や倒産を招くこともあります。
経済産業省の「事業リスク評価・管理人材育成システム開発事業」では、企業が事業活動に影響を与えると認識しているリスクファクターとして「技術・製品要因リスク」「市場リスク」「信用リスク」「情報システムリスク」をあげていますが、それに次ぐリスクとしてレピュテーションリスクを位置づけています。
企業が健全な経営を続けるためには、レピュテーションリスクは放置できません。ここからは、レピュテーションリスクが重要視される理由や、似た意味で使用される言葉との違いについて解説します。
参考:経済産業省「先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント 実践テキスト」
レピュテーションリスクが重要視されるようになった背景には、インターネットの普及やSNSによる情報発信が容易になったことが大きく影響しています。企業が情報発信してブランド力を高めやすくなった一方、個人が発信する情報も影響力をもつようになりました。事実かどうかに関わらず、一度発信された情報は短期間で拡散され、多くの人々に情報が行きわたります。
そのように影響度が大きいにも関わらず、企業側が完全にコントロールすることが難しいのが、レピュテーションリスクの特徴です。企業にとって顧客や取引先を含めた社会的な信用は、事業を継続させる上で重要な財産であり、企業価値の毀損を防ぐためにもレピュテーションリスクを抑えるための対策を講じなければいけません。
オペレーショナルリスクとは、主に金融機関において、担当者の業務やシステムが不適切であることによって引き起こされる損失の可能性のことです。事務的なミスやシステム障害、不正、災害などがこれにあたり、レピュテーションリスクと同様、常に管理が必要な要素です。
一方、ブランドは、レピュテーションと厳密に区別されてはいないものの、企業の価値を提供し、消費者側が受け入れることで確立されるものです。レピュテーションは世間の評判や評価など消費者目線である一方、ブランドは企業が意図したイメージも加わった評価といえるでしょう。一般に浸透している有名企業や大手企業では、ブランドという言葉が特に用いられます。
コーポレート・レピュテーションに特化した米国のリサーチ・コンサルティング会社Reputation Instituteは、以下の7つの領域がレピュテーションリスクに影響を及ぼすとしています。
●製品・サービス
●イノベーション
●職場環境
●ガバナンス
●市民性
●リーダーシップ
●パフォーマンス
それぞれの領域で成果を上げていることが消費者に認識されれば、企業の評価は上がります。一方、そうでない場合、レピュテーションリスクが高くなるといえるでしょう。以下では、それぞれの領域の内容や事例について紹介します。
製品やサービスの「経済的価値や品質の高さ」に関する評価につながる領域です。レピュテーションリスクの事例としては、製品に対するSNSや口コミサイト上のネガティブな情報の投稿などがあります。
投稿された内容が事実と異なる場合、その旨を証明した上で投稿されたメディアに働きかけ、削除依頼を要請することも可能です。投稿された内容どおりの問題点がある場合は、改善する必要性もあるでしょう。
イノベーションは「新しい製品・サービスを他者に先駆けて投入し、社会の変化に柔軟に対応できる企業である」という消費者からの信頼や評価につながる領域です。レピュテーションリスクの事例としては、意思決定の遅さやサービスに革新性がなく、遅れていることへの批判が挙げられます。
対応方法として、企業がブランドイメージや掲げている理念に見合ったサービスを提供しているかどうかの見直しや改善が必要となります。また、社会の変化に応じて消費者の期待値も変わるため、組織が対応できているかを常に把握しておくことが大切です。
職場環境は、「福利厚生が行き届いており、従業員にとって適切な職場環境が整えられている企業である」という消費者からの評価につながる領域です。レピュテーションリスクの事例として、労働環境の悪さを訴える従業員からのSNSや転職メディアへの投稿などがあります。
労働環境や人間関係の悪さなどが広まると、必然的に企業へのイメージも低下するでしょう。採用活動においても優秀な人材の確保が難しくなる可能性もあります。働き方の見直しや、従業員の満足度調査による職場環境の把握が有効です。
ガバナンスは企業のあり方として「オープンかつ透明で、公正なビジネスをおこなう企業である」という消費者からの信頼につながる領域です。レピュテーションリスクの事例としては、不正競争防止法違反の指摘や、詐欺まがいのような販売方法をしている旨がSNSなどで拡散されるなどがあります。
法律違反をしている場合は論外ですが、健全な経営に努めている場合、誤解を与えたり批判されたりなどに至った原因を明らかにしなければいけません。
市民性とは「地域社会と環境に配慮し、社会貢献に寄与している企業である」という評価が求められる領域です。レピュテーションリスクの事例では、環境に悪影響を及ぼす製品であることをSNS上で指摘されたり、産業廃棄物の不法投棄を拡散されたりなどがあります。
特に人命にかかわるような影響をもたらす行いは、企業の評判が下がるだけではなく社会的な信用の失墜につながるでしょう。企業市民として高い意識をもち、地域や環境に配慮した取り組みができているかを見直す必要があります。
リーダーシップの領域は「卓越したマネジメント力と将来の明確なビジョンをもち、適切に組織されている企業である」という企業のイメージにつながります。レピュテーションリスクの例としては、経営陣の不祥事やスキャンダルにまつわる情報の拡散などがあります。
また、ハラスメント行為や不当解雇などの問題も、リーダーシップに関わる事象といえます。信頼できないリーダーが経営する企業には、消費者もネガティブな印象をもちやすいでしょう。組織を牽引する存在である経営陣の不祥事は、企業イメージに大きく影響します。
パフォーマンスは「高い収益性と将来性をもつ企業である」という評価につながる領域で、企業のパフォーマンスの高さともいえます。レピュテーションリスクの事例としては、経営状態が悪化しているという噂や、成長が芳しくないなどとの情報が噂されることです。
経営状況に関して社外で噂されることは、たとえ事実無根であっても、資金繰りなどに影響が出ることもあります。企業が安定した経営ができていることを示せるような情報開示や、生産性を向上するための組織改革への取り組みが必要です。
参考:損保総研「損保総研レポート レピュテーション・リスクと保険」
レピュテーションリスクの発生原因としては、以下の6つの要素があります。
●従業員からの内部告発
●従業員による不祥事
●第三者による根拠のない風評被害
●商品やサービスに対する顧客からのクレーム
●同業他社の業績悪化・不祥事
●行政処分・行政指導
従業員からの内部告発は、レピュテーションリスクにつながる原因の1つです。長時間労働やハラスメントなど、労働環境に問題がある企業の場合、内部告発する従業員が出てくる可能性が高くなります。
内部告発の手段として挙げられるのは、社外の監督機関や報道機関への告発、SNSへ投稿などです。企業の問題が世間に明かされると、従業員への同情心から厳しい意見が向けられるでしょう。企業のネガティブな評判が広まり、イメージの低下につながります。
従業員の内部告発によるリスクを抑えるためには、労働環境の整備や働きやすい組織風土の構築、従業員の組織に対するエンゲージメントの向上が効果的です。
従業員による不祥事は、正社員やアルバイト、派遣社員を問わず、企業の責任が問われます。たとえ1人の不祥事であっても、企業全体の評価につながるでしょう。世間に広まると、企業に対するネガティブなイメージが広まります。
例えば、アルバイトの従業員が、勤務中に職場でふざける不適切な様子をSNS上に投稿した「バイトテロ」が問題になった事例もあります。こうした事例では、従業員の教育や管理体制が問われ、世間からの信頼が得にくくなります。
従業員による不祥事は、マネジメント層による教育や監視で防げるものもあります。雇用形態に関わらず、コンプライアンスへの意識を醸成できるような教育体制を構築することが大切です。
第三者による根拠のない風評被害は、事実の有無に関わらず拡散されることが多いものです。その場合、早急に事実無根であることを表明する必要があります。事実と異なることを証明するためには、普段から誠実な対応を心がけることが大切です。
企業の信頼性が確立されていれば、拡散された情報に流されない消費者もいるでしょう。必要に応じ、掲載されたメディアに削除依頼を働きかけるなどの対応も求められます。
企業の製品の品質やサービスが低下し、顧客のクレームや悪評が広がることも、レピュテーションリスクの原因の1つです。SNSや口コミサイトに投稿されると、あっという間に拡散されます。さらに、ほかの消費者が同じような意見をもっている場合、より大きな悪評を生むでしょう。批判的なクレームが続くと、企業のイメージダウンにつながる可能性があります。
自社に問題がなくても、同業他社の不祥事や業績の悪化で、レピュテーションリスクにつながることもあります。自社も同じような問題を起こすという疑念をもたれたり、社会情勢によっては業界自体が不安視されたりすることもあるためです。
自社が健全な経営体制であることを発信し、同業他社の問題で揺らがない信頼を獲得し続けなければいけません。
法令違反を犯して行政処分や行政指導を受けると、不適切な経営をしていたとして世間に広まります。当然、ネガティブなイメージが浸透するでしょう。さらに情報が拡散されると、レピュテーションリスクが顕在化して信用が失われる原因となります。
経営層がコンプライアンス経営を進めることはもちろんですが、従業員に対しても日頃からコンプライアンス教育を徹底することが重要です。
レピュテーションリスクを回避するためには、主に以下の4つの方法があります。
●積極的に情報発信する
●労働環境の改善を図る
●監視・チェック体制を強化する
●従業員教育を徹底する
レピュテーションリスクはさまざまな要素が絡んで発生するため、日頃から未然に防ぐための施策が大切です。ここからは、レピュテーションリスクから企業や従業員を守るための方法を解説します。
SNSなどを用いた積極的な情報発信は、レピュテーションリスクの回避に効果的です。企業側から発信することで、個人的な意見や誤解を防ぎやすくなります。例えば、SNS上で悪評が広まった場合、企業が何の反応もしていなければ情報がそのまま広がってしまうでしょう。
企業から頻繁に情報発信を行うことで、消費者が悪評だけを鵜呑みにせず、正しい情報を受け取れます。偏った情報によるレピュテーションリスクを防止するためには、積極的な情報発信がおすすめです。
労働環境の改善は、レピュテーションリスクの未然防止に効果的です。サービス・商品の品質低下や従業員の不祥事、内部告発といったリスクは、労働環境の影響が大きいといえます。たとえば長時間労働によって従業員が疲弊していると品質に影響し、職場環境に不満があれば内部告発につながります。
従業員の満足度調査やアンケートなど、意見を収集できる機会を設けることで、従業員の現状を理解できます。また、従業員のエンゲージメントを高めるため、1on1ミーティングのように、コミュニケーションが活性化できるような取り組みも効果的です。
企業の監視やチェック体制の強化も、レピュテーションリスクを回避するための対策です。監視が行き届いていることで、不祥事の抑止力になったり、不正への速やかな対処ができたりするでしょう。経営陣の相互間による監視に加え、実際の業務に関するチェックを徹底する必要があります。
しかし、企業が大きくなるほど細部まで監視が難しくなることが難点です。そのため、現場ごとのマネジメント体制を構築することが求められます。また、社内で隠ぺいや誤情報の共有を防ぐため、外部の監査を利用することも1つの手段です。
従業員への教育を徹底することは、レピュテーションリスクを防ぐために欠かせません。従業員のコンプライアンスに対する意識の高さは、不祥事やトラブルの発生の未然防止につながります。コンプライアンスや情報セキュリティ、ネットリテラシーなどの教育を定期的に実施したり、業務マニュアルなどを見直したりすることが効果的です。
また、それぞれの教育を階層別に実施することで、より高い効果が期待できます。例えば、社会人になって間もない新入社員には、ネットリテラシーなどの教育で、基本的な知識を身につけてもらうことが必要です。ハラスメントを起こす立場になりやすいマネジメント層に対しては、ハラスメント防止教育や適切なマネジメント、部下指導の教育が求められるでしょう。
レピュテーションリスクは、企業のイメージをネガティブにするばかりか、状況が悪化すると事業継続の危機にまで及ぶこともあります。レピュテーションリスクの発生原因はさまざまで、従業員による不祥事から事実無根の噂など、企業側ではコントロールが難しいのも特徴の一つです。そのため、リスクとなり得る7つの領域や発生原因について理解し、従業員の教育や労働環境の改善など、対策を立てておくことが不可欠です。
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「会社の健康診断」は、松山大学経営学部東渕則之教授が提唱する「成長ドライバ理論」をベースとした70の設問から成る全社員へのアンケートによって、ビジネスモデル、仕組み化などを含めた会社の現状、強み・弱みを把握することができる経営サーベイです。
会社が健全に成長できる状態かを客観的に評価し、経営者の志に基づいた「良い会社」の実現に向けて、会社の歩むべき方向性と現状の課題を見出します。
社員と会社がともに成長する「健全な会社」づくりのために、会社も身体と同様、健康診断が必要です。
対象となる組織・会社の全員にWebアンケートにお答えいただきます。
世界初の統合経営フレームワーク「成長ドライバ理論」で、現在の自社の健全度が明らかになります。
理念や方針の浸透度/現在のビジネスモデルの良否と認識/事業の継続性・将来像に対する認識/従業員の会社に対する思い/人を育てる職場環境・企業風土 等
◇「会社の健康診断」は、成長ドライバ理論にもとづいて設定された70項目の設問で構成されています。 Webアンケートに全社員に回答していただくものです(ウィズワークス社提供)。
◇日本経営品質学会、日本経営診断学会等で東渕則之氏の論文は、高い評価を受けています。専門家からも認められた学術的理論をベースとした経営診断です。
◇一般の従業員満足度や組織エンゲージメントの調査とは異なり、ビジネスモデルやシステム化など業績に直結する要因も診断要素に含めているため、会社全体の経営状況や改善した結果が数値化されやすい特長があります。
〈良い会社〉実現へのステップとして、まずは「会社の健康診断」を利用して現状の改善点を見出したいという場合には、「会社の健康診断」のみのご利用も承っています。
ご利用料金:330,000円(税込)
「会社の健康診断」の基軸となる「成長ドライバ理論」は、松山大学経営学部の東渕則之教授の調査研究をもとに、企業の成果や成長を左右する原動力(ドライバ)は何か、その関連性はどうなっているのかなどを明らかにし、経営の全体像として見える化したものです。数多くの企業から情報を収集し、統計学の観点から仮説と実証を繰り返すことで、これまで可視化・定量化が困難といわれた企業成長のフレームワークが明らかになったのです。
「成長ドライバ理論」では、企業成長の原動力は5つのメインドライバと5つのサブドライバにあると考えます。そして、経営者の「社員を大切にする思いや行為」は、10のドライバが活発に機能するためのエネルギーであり、潤滑油になるのです。
下図は「成長ドライバ理論」のフレームワークを図示したものです。
企業の円滑な運営や成長を生み出す原動力として、①社長、②経営理念・ビジョン、③ビジネスモデル、④システム化・型決め、⑤行動環境という5つのメインドライバが表現されています。
メインドライバの5つ目「行動環境」は、会社の風土や雰囲気(社風、企業文化)といったものです。社員が成長するためには、学習と成長が起こるような行動環境でなければなりません。そこで、①サポート、②ストレッチ、③自律、④規律、⑤信頼という5つのサブドライバが必要になります。
矢印はそれらの10個のドライバが影響を与える方向を示すものです。そして、何より重要なことは、経営者の「社員を大切にする思いや行為」こそが、10のドライバが活発に機能するためのエネルギーであるということです。
この研修プログラムは、「成長ドライバ理論」を学ぶだけでなく、実践することに力を入れています。東渕教授とPHP研究所は、その実践者のロールモデルこそ松下幸之助であるとの見解に立ち、共同で研修プログラムを開発しました。
理念の浸透からビジネスモデルの構築、人材育成まで、「成長ドライバ理論」が示す各ドライバをどのように駆動させればよいのか、その実践には具体的な事例が必要です。松下幸之助の豊富な成功事例によってイメージをつかみ、現代的視点から再解釈することで、自社の経営に役立てることができます。
〈良い会社〉とは何でしょうか。私たちは、「社員を大切にし、社員と会社が共に成長する会社」をその答えと考えています。
給与や待遇、福利厚生などはもとより、それ以上に、会社が社員に対して誠実であること、社員は厳しい中でも働きがいを感じていること、何より自分も会社もともに成長しているという実感がもてることが大切だと考えています。それを裏付けるように、東渕則之教授の調査研究によれば、そうした〈良い会社〉は企業業績も高いという結果が出ています。
この研修プログラムは、そんな〈良い会社〉づくりをめざす経営者のためのものです。
「会社の健康診断」を通して自社の現在の姿を客観的に振り返り、強み・弱みを把握し、それをふまえて現実の課題に取り組んでいただくことを目的としています。
「経営者のための〈良い会社〉塾」は、3つの研修目標を掲げて、プログラム開発を行いました。
1)経営者自身が、経営のフレームワークを学ぶことで、自社の全体像を俯瞰し、強み・弱みを再把握して、経営判断する力を高めます。
2)成長ドライバ理論をベースとして開発された「会社の健康診断」を全社員で受診。課題共有を図り、改善のための取り組みを全員参加で行います。
3)パナソニックを世界企業に育て上げた創業者・松下幸之助の経営を成長ドライバ理論を通して学びます。それにより、「自分が松下幸之助だったらどう判断するか」という判断の軸を得ることができます。
〈良い会社〉とは、社員を大切にし、社員と会社が共に成長する会社です。
社員の幸福感を高め、真に一体感のある会社づくりをすすめたいという経営者の方々の受講をお勧めいたします。
2日間、各日13:00~17:30
◇今、なぜ松下幸之助に学ぶのか
◇成長ドライバ理論講義
◇〈グループワーク〉診断から見える課題の整理と仮説 他
13:00~17:30
◇〈グループワーク〉診断結果を通して見えた課題
◇松下幸之助の経営を成長ドライバ理論で見える化する(ケース「モーター工場の再建」) 他
13:00~17:30
◇改善施策シートに基づく発表(各自)
◇松下幸之助の経営を成長ドライバ理論で見える化する(ケース「アイロンの開発」) 他
2日間、各日13:00~17:30
◇改善の取り組みの発表(各自/ 1人あたり=発表15分+相互アドバイス10分)
松山大学経営学部教授一橋大学大学院商学研究科修了。悩める中小企業の経営者が使える経営学を構築することを目指して、20年以上にわたり実践的なフィールドワークを通じた統計学に依拠した調査・実験による研究を重ね、企業経営のフレームワークとして「成長ドライバ理論」を体系化した。このフレームワークの有効性と正確性は、日本経営品質学会、日本経営診断学会等で高く評価されている。
著書に『建設会社でも2ケタ成長はできる!』(東洋経済新報社)、『経営統計学のマネジメント的研究』(千倉書房)、『読んで使える!Excelによる経営データ解析』(共立出版)などがある。
ウィズワークス株式会社代表取締役社長。慶應義塾大学経済学部卒業後、大手国際会計事務所、国内大手投資会社を経て法律会計事務所の創設にパートナーとして参画。事業会社や金融機関向けの経営コンサルティングや事業承継支援業務に従事。2011年12月、「コミュニケーション」を通じて良い会社づくりを支援する専門会社、ウィズワークス株式会社取締役就任。全国の良い会社を紹介するメディアの運営、多種多様な業種・業態・規模の会社等の社内報制作支援、Web社内報専用システム開発・提供、組織内コミュニケーション施策に関するコンサルティングなどを展開。2021年7月より現職。
株式会社PHP研究所 経営理念研究本部長。1986年、PHP研究所入社。普及部、出版部を経て、95年研究本部に異動、松下幸之助関係書籍の編集プロデュースを手がける。2003年、大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程(日本経済・経営専攻)修了。修士(経済学)。松下幸之助を含む日本の名経営者の経営哲学の研究や、経営理念の継承・伝播について調査を進めている。また、多くの経営者を訪ね、インタビューを重ねている。
著書に『ドラッカーと松下幸之助』『決断力の研究』(共にPHP研究所)等がある。
株式会社PHP研究所 松下理念研究部長。1991年から1997年まで株式会社日本経済新聞社で新聞記者および出版編集者として勤務。その後、渡英し、エセックス大学で社会学、ランカスター大学で宗教学を専攻。宗教学博士(Ph.D.)。社会学修士(M.A.)。南山宗教文化研究所研究員、京都大学経営管理大学院京セラ経営哲学寄附講座助教を経て、2008年、PHP研究所入社。松下幸之助について、多様な観点から研究を進めている。
著書に『ビジネス書と日本人』(PHP研究所)。
この研修プログラムでは、「成長ドライバ理論」という共通のフレームワークと「松下幸之助」というロールモデル(ケーススタディ)で、成長企業の経営のメカニズムを具体的に理解してもらいます。講師や参加者と、自社の課題、その改善策について討議を重ね、経営のコツを実践知として自得することができます。
芸術作品といってもいいような、見る人をして感嘆せしめるようなすばらしい内容の経営もあれば、駄作といってもいいような成果のあがらない経営もある。 だから、経営は生きた総合芸術だとはいっても、すべての経営がその名に値するわけではない。工場の施設なり、できあがってくる製品、その販売の仕方、さらには人の育て方、生かし方、財務内容など一つひとつがきわめて立派であり、それらを総合した経営自体に、その企業の精神というか経営理念がいきいきと躍動している、そのような経営であって、はじめて芸術といえるのである。 経営は生きた総合芸術である。そういう経営の高い価値をしっかり認識し、その価値ある仕事に携わっている誇りをもち、それに値するよう最大の努力をしていくことが経営者にとって求められるのである。(松下幸之助『実践経営哲学』より)
販売にあたる人が、一つの商品について、技術の人の開発の苦心を思い、小さなネジ一本にまでこめられた製造の人の心配りをひしひしと感じる。また逆に製造にたずさわる人は、販売する人の努力に感謝し、心をこめて製品を作りあげる。あるいは経理の人は一円のお金にも、それが利益となって生まれてくるまでの技術の、購買の、製造の、販売の、その他すべての部門の人の汗の結晶というものを考え、それを最大限に 生かしてゆく。北海道に働く人の苦労が九州にいる人に伝わる。九州に働く人の苦労も北海道にいる人に伝わる。そのように、たとえ職場を異にし、その働きをまのあたりに見るということはなくとも、打てば響くというようなかたちにおいて全員が結ばれてゆく。そういう姿の中に働くことのほんとうの喜びというものが生まれ、全体としての成果ももたらされてくるのではないかと思う。(松下幸之助『その心意気やよし』より)
※「会社の健康診断」は尾庭恵子・ウィズワークス株式会社の登録商標です。
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「ナラティブ・アプローチ(narrative approach)」とは、1980年代から提唱されてきた臨床心理学のアプローチで、相談相手や患者の語る内容をもとに、相談者の解釈を専門家との対話を通して問題解決に進め解決を見出す方法です。現在では、臨床心理や医療のほか、キャリアコンサルティング、人材育成などの分野でも応用されるようになっています。
昨今、個人の働き方や、職場を構成する従業員の属性等の多様性が増し、わが国においても遅まきながらダイバシティ経営が進展した感があります。
ダイバシティ経営の必要性が叫ばれるのは、多様な価値観・意見のぶつかり合いが新たなアイデアの生成、イノベーションの創出につながり、事業活動に活力を与えるからです。一方で、ダイバシティ経営だけを推し進め過ぎると遠心力が働き、組織と個人がばらばらになってしまうリスクをはらんでいます。
そこで、ダイバシティ経営のポジティブな効果を引き出しつつネガティブな側面を抑え込むために、DEI&B(Diversity,Equity,Inclusion and Belonging:多様性、公平性、包摂性、帰属意識)という概念が注目されるようになってきました。DEI&Bは、つまるところ組織が空中分解しないよう、求心力を高める考え方です。
そして、Belonging(ビロンギング)、つまり帰属意識を高めるのが、リーダーによるナラティブ・アプローチなのです。
参考記事:ダイバーシティの推進~人的資本経営を実践する│PHP人材開発
組織の一体感を高める求心力になるのは、その組織のリーダーの発することばの力です。リーダーが、人の心に火を点けるような力のあることば(言霊・ことだま)を発することで、人と人、人と組織が繋がっていくのです。
かなり古い話で恐縮ですが、松下幸之助が自社の事業の真の使命を悟ったエピソードをご紹介しましょう。
昭和7(1932)年、ある宗教団体本部の見学をきっかけに、組織には使命感が必要であることに気づいた幸之助は、自社(松下電器(現パナソニックグループ))の使命について考えます。そして、人びとの生活に役立つ製品を安価に社会に供給することで世の中から貧困を撲滅するのが松下電器の使命だと定め、それを伝えるために大阪某所に従業員を集めました。
集まった従業員は、幸之助の語る話に耳を傾けているうちに心に火がつき、会場全体が興奮のるつぼとなったのです。この体験は、幸之助の信念を強化しました。以後、幸之助はことあるごとに会社の使命について熱く語るようになり、その都度、社内の士気と一体感が高まっていきました。
ある経営者が、「マネジメントの最大の武器はことばである」という持論を展開していますが、上記エピソードはまさしくリーダーのことばの力の重要性を示していると言えるでしょう。
リーダーが組織の求心力を高めるような力のあることばを発するためには、どうすればいいのでしょうか。その答えを一言で表現すれば、「自分の物語(ナラティブ)」を語ることです。ナラティブを語りながら問題解決を図ることをナラティブ・アプローチと言います。
「なぜ自分は、この仕事をしているのか」
「どういう時に仕事のやりがいや喜びを感じるか」
「この事業(組織)を将来、どのような姿にしたいと思っているか。なぜ、そう考えているか」
「理想実現のために、従業員(部下)のみなさんに何を期待しているか」
自分の思いや本音がこもったことばは人の心を動かすものです。そして、自らのナラティブの解像度を上げるためには、日々の内省を通じて自分と向き合うこと、思索する営みが大切になります。良きリーダーは、よき思索者なのです。
リーダーが発する、思いがこもったことばは、人と組織を動かし、多様性を高めながらも一体感のあるチームをつくり上げていくでしょう。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。