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「知の探索」を促進するマネジメント

2024年12月11日更新

「知の探索」を促進するマネジメント

『両利きの経営』(東洋経済)という本の中で紹介され、注目を集める「知の探索」と「知の深化」。両者のうち、日本企業が苦手としているのが、「知の探索」です。どうすれば、「知の探索」を促進することができるのか、マネジメントの観点から考察いたします。

INDEX

「知の探索」とは

「知の探索」とは、イノベーションを起こすための基本原理で、既存の知識の枠組みを超えて新たな知を獲得する活動です。具体的には、自分から離れた遠くの知を幅広く見ることを指します。
知の探索の特徴は、新しいアイデアを生み出すための第一歩、既存知と既存知の新しい組み合わせを目指す、リスクテイキング、実験、柔軟性、発見を含む、短期的には無駄に見えたり、失敗も多い、等があります。
知の探索は、「知の深化(既存の知識をさらに深めること)」とバランスを取ることが重要です。この両者のバランスを取る経営を「両利きの経営」と呼び、中長期的な企業成長につながります。

知の探索 3つのアプローチ

知の探索には3つのアプローチがあります。

(1)価値革新: 顧客に提供する価値の変革や向上
(2)技術展開: 自社技術の新たな市場や製品への応用
(3)技術進化: 既存技術の革新や高度化

効果的な知の探索には、明確な目的と戦略的なアプローチが必要です。

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知の探索が必要な理由

知の探索が必要な理由は多岐にわたります。
まず、イノベーションの創出はその中心的な要素です。企業が競争の激しい市場で生き残り、成長を続けるためには、新しいアイデアや製品を生み出すことが不可欠です。知の探索は、既存の枠組みを超えた新たな知識を獲得する機会を提供します。
さらに、現代のビジネス環境は急速に変化しており、企業はこの変化に柔軟に対応する必要があります。知の探索を通じて、新しいトレンドや技術を理解し、それに基づいて迅速に戦略を見直すことが可能になります。この適応力は、競争力を維持するためにも重要です。
また、知の探索は新しい知識と既存の知識を組み合わせることで、革新的なアイデアやソリューションを生み出す土壌を提供します。このプロセスでは、リスクを取ることや実験的なアプローチが求められますが、その結果として得られる新たな発見や洞察は、企業にとって大きな価値となります。
最後に、先述のとおり、知の探索と知の深化のバランスを取ることが重要です。「両利きの経営」を実践することで、企業は短期的な成果だけでなく、中長期的な成長をも見据えた持続可能な戦略を構築できます。したがって、知の探索は単なる選択肢ではなく、企業の未来にとって必要不可欠な活動と言えるでしょう。

知の探索の成功事例

知の探索の成功事例として、以下の企業の取り組みが挙げられます

1.Google
20%ルールを導入し、社員に仕事時間の20%を自由な発想のプロジェクトに充てることを奨励しています。この制度から生まれた代表的な成果としてGmailがあります。


2.キーエンス
営業職が月に2件「ニーズカード」を商品開発部門に提出する制度を設けています。このカードには顧客の困りごとや潜在的なニーズ、その経済価値などが記載され、月に2000件以上のアイデアが集まります。


3.未来工業
社員が事業や業務に関する提案を1つするごとに500円を支給する制度を導入しています。優秀な提案には追加の報酬があり、年間5000件もの提案が集まっています。


4.TSUTAYA
CDやDVD販売と消費者金融のビジネスモデルという全く異なる要素を組み合わせ、成功を収めました。創業者の増田氏は、高利貸のビジネスモデルからTSUTAYAの成功を確信していたとされています。


5.IBM
2000年からEBO (Emerging Business Opportunity) プロジェクトを開始し、新規事業への確実なリソース分配やマイルストーン管理の仕組みを整備しました。その結果、2000年に開始されたライフサイエンス事業は、2006年までに50億ドル規模の事業に成長しました。

これらの事例は、企業が組織的に知の探索を促進し、イノベーションを生み出すための仕組みを構築することの重要性を示しています。

知の探索の実践方法

知の探索を具体的に実践するには、以下のアプローチが効果的です。

1.弱いつながりの活用
・普段接点の少ない人々との関係を構築し、新しい情報や視点を得る
・名刺交換したばかりの人や、異業種の人々とのネットワークを広げる


2.「巻き込まれ力」の発揮
・様々な機会や活動に積極的に参加し、新しい経験を積む
・社外のプロジェクトや勉強会に参加するなど、自分の comfort zone を出る


3.複数コミュニティへの所属
・異なる分野や業界のコミュニティに参加し、多様な知識や経験を得る
・社内外の複数の組織や集団に所属し、学びの機会を増やす


4.越境学習の実践
・自社や自分の専門分野以外の領域に積極的に触れる
・異なる業界のカンファレンスや展示会に参加する


5.新しい技術や製品の体験
・最新のテクノロジーや製品を実際に使用してみる
・例えば、新しいデバイスを試したり、革新的なサービスを利用したりする


6.社外の人々との対話
・異なる背景や専門性を持つ人々と積極的に交流する
・多様な視点や考え方に触れることで、新しいアイデアを得る

これらのアプローチを組み合わせ、継続的に実践することで、効果的な知の探索が可能になります。重要なのは、自分の comfort zone を出て、新しい経験や知識を積極的に求める姿勢です。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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