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分かり合えない上司と部下~人事は何をすべきか?

分かり合えない上司と部下~人事は何をすべきか?

(2018年1月 9日更新)

 
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上司と部下の人間関係を改善し、風通しのよい働きやすい職場をつくるために、人事としてどのような手を打つべきか、組織開発の視点から解説します。

 

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上司と部下の人間関係 問題はここまで深刻になっている!

ゆとり教育の影響や価値観の相違、ITの進化、パワハラの問題、働き方改革の推進などから、上司と部下のコミュニケーションはますます難しくなってきました。お互いに理解できないことから人間関係が悪くなり、多くの企業で早期離職やメンタル疾患が重大な経営問題になっています。

日本生産性本部の第4回「職場のコミュニケーションに関する意識調査」(2017年6月20日)によると、業務上のコミュニケーションで課長職・一般社員層が苦手意識をもっているという注目すべきデータがありました。

 

●人間関係の構築が苦手と感じる

 ……課長職 49.5%、一般職層 55.4%

●異なる主張をもつ相手へ自分の意見を伝えることが苦手と感じる

 ……課長職 52.9%、一般職層 59.9%

 

昔からコミュニケーションギャップはありましたが、ここまで大きな問題になった原因はどこにあるのでしょうか。

 

「部下とどう接していいかわからない」という上司が増えている

上司との人間関係に悩む若手が多いと言われますが、職場の人間関係に悩むのは上司も同じです。「最近の部下はおとなしい」「何を考えているかわからない」――最近、こんな上司の愚痴を聞く機会が多くなりました。はたして部下に問題があるのでしょうか?

学校教育にその原因があることは事実ですが、入社した時から部下に考えさせることを疎かにしてきた上司にも問題があると考えるべきでしょう。部下に対して指示・命令をするだけで、考えさせる質問や入社時の基礎教育をおろそかにしてきたことの方が重大な要因です。仕事の目的や本質を教えることなく、指示したことだけやらせてきた上司のマネジメントが、根本的に間違っているのです。

一方、部下にも問題があります。叱られることを極端に恐れる部下も増えてきました。上司から「そんなの無理に決まっているだろ」「自分の業績をもっとあげてから言え」と否定されると、すぐにヘコんでしまいます。そして、「言うだけムダ」「どうせ説教されるだけなので言わないでおこう」と無気力になります。優秀な部下ほど効率を重視して、ムダなことや意味が分からないことはしない傾向があります。

しかし上司のほうは、若い頃は何度却下されても這い上がってきたという経験があり、「逆境や困難を乗り越えてこそ成長だ」と思い込んでいます。だから、部下にも同じ試練を与えることが教育と勘違いする傾向があります。

このギャップがコミュニケーションに対する苦手意識につながっていきます。上司の立場にある人は、部下が育ってきた環境や、価値観の違いを理解していないと、部下を上手にマネジメントできない時代になっているのです。

 

部下が育つ上司と育てられない上司は、何が違うのか?

最近、管理職研修で必ず聞いていることがあります。それは「部下を育成する上で最も大切なことは何ですか?」ということです。

部下を成長させている上司ほど、「コミュニケーションを多くとる」「話しやすい環境をつくるために、日ごろのコミュニケーションを大切にしている」「部下の考えや意見を否定せずに尊重することで、自ら考え行動するように心がけている」という回答が返ってきます。部下との信頼関係の構築のために、上司から積極的にコミュニケーションをとって、部下を人間として尊重しているようです。

逆に部下を育てることが苦手な上司は、「やることが多くて、部下と話す時間が取れない」「自分が率先垂範で引っ張っていきながら、部下に経験を積ませている」というような返答します。このような上司は、部下とあまりコミュニケーションをとっていないようです。

 

忙しくて部下と話す機会がない上司と職場の現状

現在、多くの課長はプレイングマネジャーであるため、プレイヤー業務にもかなりの時間をとられ、非常に忙しいのが実態です。実際、一人の部下と話す時間は1日5分もないという調査もあります。

また、パワハラの問題もあって、昔のように部下に言いたいことが言えなくなりました。飲みに誘うことも遠慮し、職場でも控えめに伝えるから、本音や真意が伝わりません。部下のほうでも、プライベートを重視する傾向が強くなり、上司と飲みに行くことを避ける傾向にあります。

さらに最近は、働き方改革の名の下に定時退社を強要するあまり、上司が残業して部下は早々に帰るという職場も見受けられます。

このように、上司と部下のコミュニケーションの機会はますます減少し、お互いを理解できない関係に陥っているのです。

 

「1on1ミーティング」が注目を集めている!

そのような状況にあって、現在、注目されているのが、「1on1ミーティング」です。シリコンバレーでは多くの企業が導入しており、日本でもヤフージャパンや日本ヒューレット・パッカードなどが導入し成果を出しています。

頻度や時間などはさまざまですが、週1回〜月1回、1回あたり30〜60分ほど、部下との対話を通して部下の目標支援と成長支援を目的にミーティングをすることを制度として導入しています。

この制度を導入することで、部下は話したいことを話す機会を得ます。上司は部下の考えや想いを聴くことで、価値観の違いに気づくことができるようになります。

 

上司と部下のコミュニケーションギャップを解消し、よりよい人間関係や風通しのよい働きやすい職場をつくる――こうした環境づくりは、人事を担うみなさんにとって、ますます重要な役割になってきているのです。

 

 

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茅切伸明(かやきり・のぶあき)

株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会) 

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