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研修を成果につなげるために~効果測定への適切なアプローチ

2019年2月15日更新

研修を成果につなげるために~効果測定への適切なアプローチ

研修効果測定はどのように行うべきでしょうか。その具体的な方法、そして成果につなげるための研修前後の仕組みづくりについて解説します。

ありがちな研修効果測定

前回「研修効果測定の目的と手順」をうけて、実際にはどのような研修効果測定が行われているかを見てみよう。おそらく研修プログラムにおいて、その効果測定が適切に実施されているところは決して多くない。なぜかと言えば、「コーチング研修」、「ファシリテーション研修」、「リーダーシップ研修」などのテーマが先に設定されていて、その上でプログラム開発に入っていることが多く、どのような成果を達成したいのかという本質的な検討が行われていないことが多いためである。

求める"研修ゴール"、すなわち研修による「学習」の成果(=学習によって、人の行動が変わること)を曖昧にしたままでは、研修が終わってから、いざ効果測定しようとしても、何を測って良いのか分からず、適切な効果測定をすることはできない。加えて、この実現したい成果が不明確な状態では、人材開発担当者も実施するプログラムコンテンツのみに焦点が当たってしまい、研修終了時点での満足度や理解度の測定といった反応的なレベル測定(カークパトリックモデル:レベル1)で終わってしまうという状態になる。

適切な研修効果測定へのアプローチ

それでは、研修効果測定はどのように行うべきであろうか。一般的に、研修を企画・提供する際には、何らかの課題が存在することが前提であり、たとえ漠然としていても、実現したい状態や達成したい状態(to be)があるはずである。まずはそれらを明確にしたうえで、研修デザインのプロセスをスタートさせるべきである。

達成したい状態が明確であれば、研修を行ったことで1カ月後、1年後にどんな効果や変化を感じてもらえるか、などの仮説を持ってプログラム開発に取り組むことができる。そのために、研修実施後の時系列での行動変化を「ありたい姿」という形で見える化し、それらが1カ月後、1年後に研修による「学習成果」としての価値を発揮するための方法や仕掛けを考える。つまり、あらかじめ、「何を達成したいか」「どのような状態にしたいか」、その検証のために「何を測定するか」を設定できていれば、効果測定はそれほど難しい作業ではなくなる(下図参照)。

研修効果測定のタイミング

そして、最も大切なことは、研修ゴールと、その測定方法を、学習者/上長、そして組織のトップにも共有する。そうすることで、その研修は単に学習者の"学習機会"の提供にとどまらず、研修効果測定が、研修の個別評価という価値を超えて、企業が目指す実現したい状態を達成していくための重要な事業戦略の一つとして、ステークホルダーに認知されることになり、その時初めて人材開発部門がコストセンターではなく、真にプロフィットセンターとしてのアイデンティを確立することにも貢献する。

研修効果を高める現場支援の重要性

このように企業が時間や費用を投資した「研修」を"成果"に繋げていくためには、どのように研修をデザインすれば良いのだろうか? 「学びを最大化」するためのアプローチとして、ロバート・ブリンカーホフの「4:2:4 の法則(研修効果に影響を与える要素割合)」が参考となろう(下図参照)。

ロバート・ブリンカーホフ4:2:4 の法則

つまり、研修の内容だけが重要なのではなく、研修前後の「仕組み」があるかどうかが、極めて重要であることを示唆している。対策として「研修前」には、研修が学習者本人に加えて、組織にとってもどのような意味があるのか、また、どのような内容が提供されるのかを学習者だけでなく上長にも理解しておいてもらい、学習者への動機付けをしっかり行ってもらうことで、学習者のレディネスが高まり、研修効果も高まることが期待される。

一方、せっかく良い研修で知識や気づきを得ても、放置しておくと日常業務に追われ、忘却していく。そのため、研修実施後もフォローメールやヒアリングなどで研修内容を思い出させる仕組みを整備することや、学習者が研修で学んだことを実践できるような環境を提供するなどして、意識付け・動機付けすることも重要となる。
そして、その役割の中心となるのは、学習者とともに現場にいる上長であり、彼らが研修効果に果たす役割は非常に大きいと言える。

このように、提供する研修が組織から期待される個人の成長と組織成果達成の重要戦略として機能するために、人材開発担当者は、上述した「現場での学習効果発揮支援」の重要性を意識し、ステークホルダーを巻き込んだ包括的な研修プログラムをデザインして提案・実施していくことが求められよう。

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西谷晴信(にしたに・はるのぶ)
大学卒業後、外資系製薬企業でMR・営業管理職としての経験を経て、営業分野を中心として人財開発部の仕事に長く従事。経営戦略部門の内部統制業務も兼ねながら、パフォーマンス・コンサルタントとして、ミドルマネジャーを対象に、主に「組織マネジメント」や「チームビルディング」をテーマとしたコンサルティング業務を担当。またPHP認定上級ビジネスコーチ、キャリアコンサルタントとしての経験や洞察を生かしながら、コーチングやキャリアデザインのワークショップを主宰。
2013年 大学院で心理学修士課程を修了後、人材育成学会に所属し、ミドルマネジメントをテーマとした研究活動も行なっている。

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