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幕末随一の教育家・吉田松陰の「癖」とは?

幕末随一の教育家・吉田松陰の「癖」とは?

(2019年4月16日更新)

 
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「企業人にとって、最大の環境は上役なり」というビジネスの古い格言がありますが、部下育成の上手な上司には、どのような特徴があるのでしょうか。幕末の志士・吉田松陰を例に考えてみましょう。

 

 

歴史人物には「教育者」「指導者」「実務者」がいる

幕末第一級の志士と言えば吉田松陰を上げる人は多くいるのではないでしょうか。かく言う筆者もその一人です。ではなぜ、松陰が「第一級の志士」と言われているのでしょうか。その意見には様々あってよいと思いますが、筆者が「松陰を第一級の志士」だと感じている理由には、教育者として世の中に人財を多く輩出したという部分があります。

幕末の志士には、大きく分けて3種類の人物がいます。一人目は「思想家、教育者」と言われる人々。二人目は「指導者(リーダー)」と言われる人々。三人目は「実務者」と言われる人々。

「思想家、教育者」とは、思想や哲学を持って人を育て、世の中に人財を輩出することが出来る者のことです。「指導者」とは、信念や理想を持ち、進むべき方向へ人々を導くことが出来る者のことです。「実務者」とは、指導者の示した方向に、実際に道をつくっていく者のことです。

 

教育者としての吉田松陰

もちろんこれらは、一概に「吉田松陰は、思想家だ!」「西郷隆盛は、指導者だ!」と、切り分けて当てはめることが出来るものではありません。たとえば坂本龍馬であれば「思想家、教育者」の顔も、「指導者」の顔も、「実務者」の顔も、当然持ち合わせています。しかし、「その中でも特に龍馬が世の中に対して影響力を発揮したのは?」と問われると、指導者としての龍馬を上げる人が多いことでしょう。では、松陰は……?

松陰の優れていたところは、「思想家、教育者」と「指導者」の顔を持ち合わせ、歴史に名を残す「指導者」「実務者」を多く輩出したところにあります。松陰が教育者として主に活動したのは、松下村塾を開いていたわずか二年ほど、そして門下生も百人にも満たなかったと言われています。

しかし、その短期間に松陰の門下生であった人物には久坂玄瑞や高杉晋作を筆頭に、吉田稔麿や入江九一、のちに総理大臣となった伊藤博文や山県有朋など、歴史に影響を与えた有名無名の人物が多くいました。松陰の教育者としての能力の高さが分かります。

 

松陰が自称した「軽信の癖」とは

では、松陰はなぜ教育者として優れていたのでしょうか。それは当然、人を導くことのできる思想や哲学や専門知識、信念や理想、といったものがあったのですが、しかし筆者はそれだけではなく、松陰を優れた教育者足らしめた、松陰の「ある癖」に注目をしています。

それは「軽信の癖」と言われるものです。軽信とは「軽々しく、すぐに信じてしまうこと」という意味です。そして松陰は「我に軽信の癖あり」と自称しています。

松陰が自称した軽信の癖とは、「私は他人と会って話をすると、すぐ簡単にその人物のことを優れた人物と、信じてしまうところがある」という意味合いです。松陰は、新しい人物や門下生に会うとすぐその人の特徴を見つけては「この人物はここが立派だ!」「この門下生のここを尊敬する!」といった具合にその人の個性や特徴を優れた長所として見ていました。そしてそれを知人友人に手紙を送ったり語ったりして、まるで金銀財宝でも掘り当てたかのように、興奮して喜んでいたのです。

松陰のこの見立て(軽信の癖)は、当然外れること、裏切られることも度々あったのですが、それでも松陰は「我に軽信の癖あり」と自称していました。しかしそう自称していたのは、松陰自身が軽信の癖を自分の短所であると悩んでいたというよりも、心中に「私はすぐに人を信じたり尊敬したりして、それが原因でたまに失敗もするが、それでもいいじゃないか」という想いがあってのことだったのでしょう。

 

「軽信の癖」は心理学の「ピグマリオン効果」そのもの

心理学の有名な言葉に「ピグマリオン効果」というものがあります。ピグマリオン効果とは簡単に言うと、「学校などの教育の場で、先生が生徒に期待を寄せていると、生徒の成績が向上する」というものです。松下村塾で短期間に多数の人財を輩出した松陰の軽信の癖、これはまさにピグマリオン効果そのものです。松陰が年齢の上下に関わらず、無条件に敬愛の心を持って他者と接していたことが分かります。

冒頭にも触れた「企業人にとって、最大の環境は上役なり」という言葉、部下が成長する環境の最大の要因は上司となるわけですが、松陰の教育者としての特徴には、軽信の癖がひとつ大きな影響があったと言えるでしょう。

 

 

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延堂溝壑(えんどう こうがく)

本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。


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