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渋沢栄一の残した幸せな会社づくりのヒント

渋沢栄一の残した幸せな会社づくりのヒント

(2019年8月29日更新)

 
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日本資本主義の父といわれ、産業界に大きな足跡を残した渋沢栄一。その名言から人材育成の考え方を学びます。

 

日本資本主義の父・渋沢栄一の根本にあるものとは?

2019年4月、あるニュースによって脚光を浴びた歴史人物がいました。その人の名は、渋沢栄一。

4月のニュースとは、2024年に紙幣が20年ぶりに刷新されるということで、その紙幣のデザインと肖像が紹介され、その新一万円札の肖像が渋沢栄一でした。一万円の肖像と言えば旧紙幣の聖徳太子から現在の福沢諭吉になって以来、肖像変更は40年ぶりのことです。

渋沢栄一は「日本資本主義の父」と言われ、幕末期には幕府に仕え、維新後明治政府の大蔵省仕官を経て、その後実業家として銀行や私鉄を含んだ500を超える企業の設立に関わり、日本の資本主義化に大きく貢献した人物でした。

資本主義の父というと、何か成果主義的な印象を受ける人もいるかもしれませんが、渋沢栄一という人物は決してそのようなことはなく、『論語と算盤』という著書でも知られる通り、道徳と経済の二律を大変重要視していた人物でした。

今回は、そんな渋沢栄一の言葉から、幸せな会社づくりのヒントを得たいと思います。

 

渋沢栄一が残した名言

幸せな会社のつくり方に限らずのことですが、世間のニュースではやたらと成功事例が取り上げられ、手段手法にばかり目が行きがちです。しかし、渋沢栄一は、そういった手段指向とも呼べる世間のあり方に次のような言葉を残しています。

「真似をするときには、その形ではなく、その心を真似するのがよい」

この言葉の意味するところとは、「形を真似ても、結果には繋がらない」ということです。

でもなぜ、うまくいったやり方を真似てもうまくいかないのでしょうか。渋沢栄一の「その心を真似する」という言葉に込められた本質的な意味とは何でしょうか。

まず、世間で囃され紹介されている成功事例の多くは、その成果が得られるまでの道のりの中で、当事者たちによって多くの時間や知恵や労力が費やされ、数えきれない失敗と工夫の繰り返しの末に得られた結果であるということです。

なぜそのような苦労の多い道のりを成果が出るまで歩むことが出来たのかというと、そこには当事者たちの信念や情熱があったわけです。ですので、うまくいった結果だけを見て、目に見える部分だけの取り組みや手段手法といったものを真似してみても、多くの人には当事者たちと同じような成果を得られるように、その取り組みそのものを扱いこなすことが出来ないのです。たとえば、いくらよく切れる高価な包丁を手に入れても、プロの料理人のような包丁さばきが出来ないのと同じです。

 

人材育成のための投資

もう10年近く前になりますが、従業員満足度が大変高いことで有名なある企業を、複数回にわたって視察させていただいたことがありました。その企業では、年に数回、お客様に向けた大きなイベントを開催していたのですが、視察に参加していたある経営者が「そういったイベントを開催することで、いったいどれくらい費用対効果があるのですか?」と質問をしていました。費用対効果がいいのならウチでも実施を検討したい、というのです。

しかし、そのイベントを実施している企業の経営者の方は次のように答えていました。

「費用対効果なんか考えていたら、こんなイベントはやらない方がいいでしょうね」

「このイベントは、売上向上やお客様満足のためにやっているのではありません。従業員満足のため、というのも多少はありますが、それも主たる目的とは違います。このイベントの目的は、チームワークやリーダーシップ、仲間と相談して工夫する経験、何事かをやり遂げる経験などを従業員に得てもらうためです。そのためにやっていることです」。

つまり、儲けや従業員満足を高めるためにイベント開催に取り組んでいるのではなく、従業員の成長のために「人材育成の投資」として行っているというのです。そのような取り組みを、会社が小さかったころから、従業員満足度が高いと世間で有名になる前から信念を持って続けていたのです。

 

渋沢栄一の「その心を真似する」の意味とは

おそらく、これまでにイベントをやめようと思えばやめることが出来る「正当な理由」など、掃いて捨てるほどあったのではないでしょうか。しかし、従業員の成長を大切にしたい、費用対効果が悪くても非効率であっても、従業員のために大切な経験であると考え、ブレることのない信念を持って取り組みを続けて来られたのではないでしょうか。

そして、そのような信念が周囲の人々にも伝わるからこそ、従業員たちも誠実に取り組んでいるのです。

「費用対効果」が真っ先に頭に浮かんだ経営者の方は、きっとこれまで自社内の取り組みについて費用対効果を一番に考えてきたのでしょう。費用対効果が一番で、二番目か三番目か、もっと下かはわかりませんが、費用対効果よりも下に社員の成長や幸せといったものがあったのかもしれません。そのような心の姿勢では、やはり、いくらやり方を学んでも期待した成果は得られないことでしょう。

渋沢栄一の「その心を真似する」という言葉の本質が見えてきます。

世間では成功事例に焦点が当てられがちですが、実は大切なのは取り組みそのものではないのかもしれません。取り組みを真似ても、幸せな会社づくりに必要な「工夫する力」「乗り越える力」「生み出す力」といった、生きる力ともいうべき本質的なモノが身につくわけではないのです。逆に流行を追い続ける姿勢、飽き癖、あきらめ癖、手抜き癖、などが社風に沁みついてしまうかもしれません。

心が出来上がれば、後からその組織にあった、その組織らしい、独自の取り組みが生まれてくる、ということです。

 

 


 

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延堂溝壑(えんどう こうがく)

本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。


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