課長職にマネジメントの革新を!
RSS

「心理的安全性」が確保されていれば業績は伸びるのか?

「心理的安全性」が確保されていれば業績は伸びるのか?

(2019年10月25日更新)

 
  • はてなブックマーク
  • Yahoo!ブックマーク
  • Check

米Google社の研究から「心理的安全性(psychological safety)」という概念に注目が集まっています。この概念は企業の業績とどのように関連づけられるのでしょうか。

 

 

「心理的安全性」と業績の相関性

「心理的安全性」とは、他者の反応に怯えたり羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分を安心してさらけ出すことができる職場やチームの状態や雰囲気を表す概念です。米Google社の社内調査の結果が公表され、この「心理的安全性」の確保が生産性向上のカギと報告されたことから、この概念に注目が集まっています。

 

心理的安全性と業績

米国のエイミー・C・エドモンドソン氏は、「心理的安全性」と業績の相関性について、上の図を用いて解説しました。

この図では、縦軸の心理的安全性、横軸の成果獲得へのプレッシャーを指標にして、組織の状態を4つのタイプに類型化しています。

まず、左下は心理的安全性が低く、成果獲得へのプレッシャーも低い「無気力ゾーン」と呼ばれる状態です。こうした状態にある組織では、働く人がやる気を出すことは難しく、無気力な集団になりやすいことを示しています。

また、右下の「不安ゾーン」は、心理的安全性が低く、成果獲得へのプレッシャーが高い組織です。働く人が不安になりやすく、メンタル不調者、離職者の増加につながります。

一方、上段は、心理的安全性が確保されている状態を示していますが、左上の「快適ゾーン」は、成果獲得へのプレッシャーが低く、このような「ぬるま湯状態」にある組織は「仲良しグループ」になりやすく、個々の働き方も現状維持に流れてしまいがちです。

 

スタートアップ企業の事例「快適ゾーンの限界」

さて、研修や組織開発のご相談にのっているとき、経営者の方からよくお聞きする話があります。

「創業時にはとにかく社員に発破をかけて業績をつくってきたものの、従業員が疲弊してどんどん会社を辞めていく。『これではいけない』ということで、ES(従業員満足度)向上の取り組みを始め、従業員をこまめに承認したり、目標未達の社員がいたとしても『がんばっているから仕方ない』と受け入れるようにしたところ、定着率も高まり会社の雰囲気がずいぶんよくなった。でもなんとなく、緩い社風になって業績もイマイチなんです……」

こういう話はスタートアップ企業に多いのですが、最初は先述の図の右下「不安ゾーン」から始まり、やがて行き詰まって、左上「快適ゾーン」に移動します。「快適ゾーン」ではいろいろな問題が解決するので表向きには「いい会社」になったように見えるのですが、業績が伸び悩むのです。

これが「快適ゾーンの限界」といわれるものです。

 

組織が「学習&高業績ゾーン」にあるためには

こうしたことを考えると、心理的安全性を確保しても、それだけで業績が上がるというわけではないことがわかります。組織が「学習&高業績ゾーン」にあるためには、崇高な使命や明確な責任、挑戦的な目標が与えられなければなりません。組織全体でビジョンを共有し、目標に向かってメンバーをストレッチさせ、時には耳の痛いフィードバックを行うなど、厳しさが伴って初めて個と組織は成長するのです。

皆さんの職場では心理的安全性が確保されているでしょうか。また、経営理念を共有し、人を育てる風土は構築されているでしょうか。

 


 

PHP研究所では部長研修、課長研修をはじめ、各階層別教育のための公開セミナーを開催しています。詳しい内容は下のリンクボタンからご覧ください。

 

公開セミナー

 


 

的場正晃(まとば・まさあき)

PHP研究所 人材開発企画部部長

1990年慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。


人と組織の課題 最新記事

メールマガジン

更新情報をメルマガで!ご登録はこちらからどうぞ