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組織の人間性回復―メンタルヘルス、ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ・マネジメント

組織の人間性回復―メンタルヘルス、ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ・マネジメント

(2014年2月13日更新)

 
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通信ゼミナール「リーダーのための心理学入門コース」のテキストからご紹介する第3回。組織の人間性を回復するために、メンタルヘルス、ワークライフバランス、ダイバーシティ・マネジメントについて考えていきます。
 

「人間性の原理」の特徴

 
「生産性の原理」が組織の縦軸だとすると、横軸は「人間性の原理」です。人間性の原理の6つの特徴とそれぞれの特質は次のとおりです。
 
(1)長期的視野で育てる(農業的)
中国古典の『老子』にこんな一節があります。「人に魚を与えれば、一日食べさせることができる。しかし、魚の釣り方を教えれば、一生食べさせることができる」。人を育てるのは、それこそ、息の長い営みで、手間ひまがかかります。
物を与えるようなやり方でなく、まさに農業的に育てなければなりません。
 
(2)血も涙もある人間に関わる(情的な部分の考慮)
人間には、血も涙もあります。素材のようにどれかを使って、どれかを切り捨てるというわけにはいきません。さらには、感情をもった生き物であるだけに、理詰め一辺倒で動かせるものではありません。
 
(3)協力原理
人と人との結びつきは、1+1+1が3以上になる成果を発揮します。そのことを「シナジー効果」と呼びますが、シナジー効果が発揮できるのは、人が協力できるためで、それには目標とコミュニケーションが欠かせません。よりよい人間関係こそが協力を生み出すのです。
 
(4)長所伸長
生産性重視の工業的な方法は、悪いところを撲滅(欠点是正)していくものですが、農業的な人間性の原理は、よいところ(長所)を伸ばすものです。長所が伸びていくと、悪いところはだんだんスペースが小さくなります。
 
(5)プロセスも大切
生産性の原理が「結果よければすべてよし」であるのに対して、人間性の原理は「結果ばかりでなくプロセスも大切」です。なぜならば、プロセスを考慮しなければ、結果がまるで違うものになることがあるからです。地道な努力が確実な結果を生み出すのです。
 
(6)what for または how を使って意図・方法を探る(自己決定的存在)
人間は、自分の運命の主人公です。未来を予測し、目標設定できる能力があります。現象やできごとに有効な「なぜ、どうして(why)」よりも「何のために(what for)」と発想しながら、「どうやって(how)」という手段を考えて進めると、創造力に満ちた職場や対人関係を築きあげることができます。
 
 
 

人間性の原理を取り戻す動き

 
最後に、人間性の原理を取り戻す最近の動きにいくつか触れておきましょう。
 
1つめは、「メンタルヘルス対策」です。「メンタルヘルス対策」は、労働者が自分の健康を自分で守る「セルフケア」、管理監督者による「ラインによるケア」、産業医・保健師・衛生管理者・カウンセラーなどの「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、事業場外の機関・専門家などによる「事業場外資源によるケア」の4つから成り立ち、制度上はかなり浸透しています。ただし、運用面では、企業によってばらつきがあります。
 
2つめは、「ワーク・ライフ・バランス」です。超過勤務時間の大幅低減に結びつく運動に着手することで、仕事とそれ以外の生活(生涯学習・趣味などの個人生活、育児・介護などの家庭生活、社会貢献活動などの社会的生活)のバランスがとれるよう働き方の変革を志すもので、2007年以来、国・地方自治体・経済産業界・労働界が一体となって強く推進しています。これが実現すると、仕事以外の個人生活が充実するだけでなく、個々の業務にも好影響をおよぼし、心身の健康を保ったうえで建設的に働くことが可能になります。
 
3つめは、「ダイバーシティ・マネジメント(Diversity Management)」です。
これは、個人や集団間に存在するさまざまな違い(多様性:性別、性的指向、年齢、人種、国籍、宗教、障害などのほか、個人や集団の間で違いを生み出す可能性のあるあらゆる要素)を生かすために、個人、人間関係、組織という3つのレベルヘと拡大しながら、文化や制度、慣例などの組織全体を変革しようとするマネジメントです。
市場が多様化するなか、性別や既婚・未婚、国籍などを問わず、能力のある人材が最大限の力を発揮できるよう、個々人の特性にマッチしたモチベーションの高め方が、今、求められています。
 
 

 
 
『リーダーのための心理学入門コース』【出典】
勇気づけ”で部下を伸ばす、組織を変える
 
近年注目を集めるメンタルヘルス不全やパワーハラスメントといった職場の問題の多くは、「人間性の原理」に基づいたマネジメントによって防ぐことができる――。
本コースでは、数多くの企業や教育現場で導入されている「アドラー心理学」をベースに、部下との間に信頼を築き、“勇気づけ”によって個々の力を最大限に引き出すための考え方と手法を解説。人間性重視のリーダーシップを発揮するための実践的なスキルを身につけます。
 
【監修者プロフィール】
岩井俊憲 いわい としのり
1970年、早稲田大学卒業。外資系企業の管理者等を経て、1985年、(有)ヒューマン・ギルドを設立。代表取締役。1986年、アドラー心理学指導者資格を取得。上級教育カウンセラー。アドラー心理学に基づくカウンセリングや公開講座、カウンセラー養成を行うほか、企業・教育委員会・学校から招かれ、カウンセリング・マインド研修、勇気づけ研修や講演を行っている。主な著書に、『失意の時こそ勇気を』『アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方』(コスモス・ライブラリー)、『勇気づけの心理学 増補・改訂版』(金子書房)などがある。

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