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自律型人材の育成

2015年3月 6日更新

自律型人材の育成

成功の方程式がない現代のビジネス社会にあって、「自律型人材」がますます求められています。では「自律型人材」とは、具体的にどのような人材を指すのでしょうか。また、「自律型人材」を育てるための研修はどのように実施すればいいのでしょうか。

「自律型人材」とは?

よく「自律型人材が求められる時代」と言われている。そもそも「自律型人材」とはどのような人材を指すのだろうか? 一言で言えば、「考動できる=自立した業務推進を行うために必要なスキルを身につけた人材」「育自できる=自立したキャリアデザインを通じて自己成長できる人材」と定義している。具体的に自律型人材を説明するとすれば、次のようなものである。

  • 業務をこなすだけでなく、常に改善点を発見して解決しようとする人材
  • 自分の業務・部署外のことにも広く目を配り、当事者意識を持つ人材
  • 自主的に仕事を探し、意欲的に学んでスキルアップを怠らない人材
  • 時間・整理整頓・進捗チェックなどの自己管理ができる人材
  • 小さな業務改善から新商品の提案まで、アイデアを積極的に出す人材

つまり、「自己管理ができて、自主的に課題を探し、行動力で解決する」社員が「自律型人材」である。従順で勤勉に働き、定年まで一社で勤め上げることが理想だった時代とは、明らかに求められる社員像が変わっている。
会社の中で「自分という会社」を経営する感覚で、資本となる個人のスキルや問題解決力を磨いていく。能動的に動き、自分の頭で考える人材が求められているのである。一方、自律型人材は会社に対する依存心が少ないため、転職や独立を志す者も少なくない。研修にあたっては、「会社で力を発揮するメリット」が伝わるように心がけよう。

自律型人材を育てるための研修

自律型人材を育てるためのスキル研修には、次のような要素が必要とされる。

  • 問題発見力:「気づき」の能力を開発するワークや講義、ディスカッション
  • 問題解決力:ケーススタディーを使った個人ワークやグループディスカッション
  • 自己管理能力:ワークシートによる業務姿勢の見直しや効率化についての講義
  • キャリアプラン:キャリアプラン作成、社内外のロールモデルによる講義
  • 発想力:アイデアを出す個人・グループワークや模擬プレゼンテーションを実施
  • 行動力:行動することの意義を説く講義、業務改善実行プランの作成

上記は一例で、従来の管理者向け・中堅社員向けの研修ツールを「自主性」をテーマに絞り込み、組み合わせることでつくることができる。研修そのものを企画提案させ、社員が自分たちで開催にこぎつける一連の体験そのものを「自律型人材の研修プログラム」とするのも面白い。

先進企業の研修事例

以下に、企業の研修事例を挙げておく。

【事例】食品会社M社の社員研修

M社では、会社が出席を義務化する研修以外で、自主参加型の研修プログラムが充実している。年12回の選択研修は、マーケティング・ロジカルシンキング・コーチングなど、自分の業務内容にかかわらず受講が可能である。また、仕事に役立つ200以上の通信教育講座を用意。資格取得やスキルアップに、6割以上の社員が活用している。費用は個人負担だが、期間内に修了すれば会社が半額支払う。より高度なレベルを求める社員に対しては、選抜型の社内研修がある。所属部署からの推薦を受けた人を対象に、スペシャリスト育成の研修を行う。

●公開講座や通信講座の形で、「学びたい社員」をバックアップしている。社員は自主的に受けたい研修を受けることができ、効率的である。「選抜型研修」は、選ばれた社員のモチベーションが上がりやすい。自律型人材の育成においては、優秀者(集団の中でスキルが高い者)を伸ばす教育と、社員レベル底上げのための教育は分けて企画するほうが効果的である。

【事例】システム開発会社H社の自律型人材育成研修

システム設計・開発を主な業務とするH社の社員教育は、最終目標を「会社と個人の対等な共生関係」に置いている。社員一人ひとりが専門性やビジネススキルを磨き、自己実現することをサポートするという理念のもと、多彩なプログラムが用意されている。新入社員には指導員(先輩社員)が1人つき、2人で作成した育成計画書に基づいて、成長をサポートしてもらう「指導員制度」がある。2年間の締めくくりには「指導員制度論文」の作成・発表がある。

●この「指導員制度」のような、社員1人につき1人の先輩・上司がついて教育や指導を行う「メンター制度」については、各社で制度導入が進んでいる。職務上の直接的な指導だけでなく、マナーや人間関係なども日常のコミュニケーションを通して支援する仕組みである。一見、社員の依存心を生みそうに見える仕組みだが、メンター(支援者側)はあくまでメンティ(未熟練者側)の「自律」をサポートするものである。


メンター制度には「メンター側の成長」も期待できる。部下指導に責任を持つことで、指導力が身につくのみならず、手本となるような仕事や行動が要求されるため、自身の成長も問われる。まだ、メンター制度を導入していないところは、検討してみてもよいだろう。

※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)

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【著者プロフィール】
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)

松下直子(まつした・なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。
神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。
「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所)、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。

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