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「印象」で得する人、損する人

2015年4月27日更新

「印象」で得する人、損する人

実力があるのに印象で損をしている人、実力以上の印象を与える人がいます。そして、経済も、社会も「印象」で動いているのが実態です。三坂健著『「印象」で得する人、損する人』からご紹介します。

「脱デフレ」を掲げるアベノミクス、日銀による異次元の金融緩和の影響で日本経済がにぎわっています。

こうした経済における現象について、一般市民である私たちは実際のお金の動きを見ることなく、報道や紙面に掲載される言葉にあわせて(踊らされて?)経済活動の一端を担っています。

「TOKYO!」の掛け声によって、2020年東京五輪開催が決定されました。この瞬間、以前から計画されていたあらゆる設備投資が実際に行なわれることになり、東京の湾岸エリアの活況が期待されています――。

これまでの東京の治安、文化、国民の態度、感情などのさまざまな要素、蓄積がこれらの経済効果を生み出したともいえます。

しかし、大きな決定要因として皆さんが思い浮かべるのは「お・も・て・な・し」というキーワードをまとったプレゼンテーションでしょう。あの印象的なプレゼンテーションなくして、2020年の五輪招致は成し遂げられませんでした。

仕事の現場に目をうつしてみましょう。

私は、弊社にコンサルタントとして志願してくださる方の面接を何度も行なっています。ご来社いただく方の国籍は、日本はもちろん、ベトナム、韓国、中国と多岐にわたります。

面接の最中は、入念に質問を繰り返し、回答をいただき、その中身から本当に採用すべき人か否か、本当にこの方は弊社に入社して幸せになれるだろうか、と熟考した結果、結論を出すようにしています。

何度も何度も面接を行なっていくなかであることに気づきました。

それは、「最初の印象のよしあしと、入社の採否が一致することが多い」という事実です。

人間は、自分が最初に感じた印象をなかなか変えることができないらしく、多くの場合、第一印象の正当性を自ら証明するために、その後の質問への応答や会話のやりとりを解釈してしまいます。

弊社の場合は「終身雇用」を前提に採用面接を行ないます。「終身雇用」とは時代錯誤の印象を与えるかもしれませんが、弊社では社員を採用する際に採る側である私たちも、採られる側であるコンサルタントにもこの覚悟を期待することにしています。

そうした覚悟があるからこそ余計に「最初の印象と数時間の面接の印象だけで決めていいものか」と心の中では日々唸うなっているのです。

ここまで述べてきた経済の話、オリンピックの話、弊社の面接の話。

それらに共通しているのは「印象」の重要性であり、本書のテーマそのものです。

ビジネスは印象によって大部分が動かされています。

多くの人はその事実に気づいており、それを受け入れつつも、一方で、「どうにかして印象だけに左右されないようにできないだろうか」「物事の本質を見極めたうえで意思決定を行なえるようになりたい」と日々、思考をめぐらしていることでしょう。ビジネスパーソンが「ロジカルシンキング」の本を読むのもそういった思いがあるからではないでしょうか。

たとえば、電車でよく見かける週刊誌の中吊り広告。

過激な文言が広告にちりばめられ、有象無象の印象を読んだ人は与えられてしまいます。電車に乗って中吊り広告を眺めている私たちは、多くの場合、有名な政治家、芸能人、事件関係者など広告に登場する人たちに会ったことも、実際に話をしたことも、報道されている行為を実際に見たこともありません。

そして、「おやっ」と思って、雑誌を購入して記事を確認し、自分なりに事件や報道内容を解釈しようとする人はそう多くはないでしょう。つまり、「広告」というものによって私たちは、ある「事象」に対してのある「印象」を自動的に与えられてしまうのです。

2014年末に行なわれた衆議院議員選挙。国会議員の選出に頭を悩ました人も多いでしょう。

その選挙と同時に行なわれたのが「最高裁判所裁判官国民審査」。それは、最高裁判所の裁判官がその地位にふさわしいか否か、国民が審査するもので、国民は罷免すべきだと思う裁判官の氏名に「×」をつけることで自らの意見を表明することができます。

しかし、そもそも、どのように「×」を書くか、書かないかを判断すればいいのか、どのような情報を見て判断すればいいのか、いまいちよくわからないという人も多いのではないでしょうか。もちろん、しっかりと調べたうえで自信を持って判断している人もいますが、多くの人が「何となく」の印象で物事を判断している、流されている結果の選任であると感じざるを得ません。

多くの人が登録しているフェイスブックはどうでしょうか?

そこでも、日々「印象」のやりとりが行なわれています。

フェイスブック上でいつも幸せそうな書き込みをしている方にお会いしたとき「いつも○○さん、幸せそうですね」と質問したところ、「幸せな情報しか書いていないですからね......」と回答がありました。

なるほど、私の頭の中の○○さんは、幸せな情報に囲まれた○○さんになっていたわけですが、それは実際の生活とはずいぶん異なるようです。

あえていうと、"残念ながら"世の中は印象でまわっています。

私は研修をビジネスにしています。研修の中で「ビジネススキル」を解説し、定着する支援をしているのですが、それはあくまで「スキル」にすぎません。

成長するうえで大切なのは、「実戦」での「実践」です。いくら練習を積んでも、「本番の試合」という機会に恵まれなければ、戦い方や、その中での生き抜き方が身につくはずはありません。

ただし、この「機会」、言い換えれば「チャンス」は自らが創り出すべきものである反面、人から与えられるものでもあるのです。とくに大企業であればあるほど、ポストや役割につかなければ、チャンスすら与えられません。

そして、このチャンスが与えられるか否か、という部分は「印象」に大きく左右されるのです。

実力があるのに評価されない人がいる一方で、さほど実力がないのに出世する人もいます。なぜでしょうか。出世する人は与えられた機会をモノにしながら成長していきますが、評価されない人には機会が与えられないため、成長にブレーキがかかってしまうからです。印象を味方につけ、チャンスをつくりだしていくことも、ビジネスでは「実力」に含まれるのです。

世の中は印象でまわっています。

印象で動かされています。

それが現実であるならば、私たちは事実と向き合い、印象に惑わされないように注意すると同時に、印象の力をうまく利用することも求められます。

【出典】

『「印象」で得する人、損する人』~チャンスを呼び込むシンプルな習慣~

「成果として結実するかどうか」は他人に認められるか否かにかかっている。2万人以上のビジネスパーソンと接してきたコンサルタントが、ビジネスの現場で跋扈する「印象」の本質に迫る一冊。印象に惑わされずに、本当のことを見極める力についても解説。

三坂健(みさか・けん)
株式会社HRインスティテュート取締役 チーフ・コンサルタント、早稲田大学エクステンションセンター講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社損害保険ジャパンに入社。法人営業を経て、HRインスティテュートに参画。以後、経営コンサルティングおよび、論理思考や課題解決をはじめとするスキルトレーニングの開発、実施を中心に活動。近年は国内での活動のほか、海外での企業支援を行なっており、日本とアジアの往復を繰り返している。

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