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元スターバックスCEOが明かす「部下を活かすリーダーの心得」

2015年5月28日更新

元スターバックスCEOが明かす「部下を活かすリーダーの心得」

スターバックス コーヒー ジャパン、ザ・ボディショップのCEOをつとめた岩田松雄氏が語る、部下を活かすリーダーの条件とは? 著書『秒速で人が動くリーダー力』から転載でご紹介します。

部下の評価は「上・横・下」から――実績と人柄の両方をよく見る

部下の同僚、部下の部下の声を聞く

神様ではない限り、誰も人を正しく評価することはできない。しかし、リーダーは部下を評価しなけければならない。
多くの外資系企業では、社員の評価に「360度フィードバック」という手法を導入しています。
上司からだけではなくて、同僚、部下からも評価してもらうのです。
さらに、評価は多面的でなくてはいけません。
売上実績や貢献利益などの数値だけでなく、定性的な評価も加えます。数字に表れない貢献もきちんと評価するのです。
私は、評価の頻度も年に1度でなく、できれば四半期ごとに行うのがいいと考えていました。評価をする機会を増やすことで、できるだけ正しい評価に近づけることができると考えるからです。
人は色眼鏡で見たり、間違って評価したりすることがあります。それをできるだけ是正するチャンスを増やすのです。

上にゴマをする人間は、下に対して偉そうにする

上に対しては従順な姿勢を見せ、下に対しては偉そうにする、二重人格のような人間がいます。そういった人物を偉くすると周囲に悪い影響を与えることがあります。部下を評価するときには、そうした二面性をしっかり見ないといけません。
私も実際、間違った評価をしてしまったことが何度もあります。
アトラスにいたときのことです。私が自分で採用した人間でした。大変に丁寧なものの言い方をするし、有名なコンサルティング会社出身で過去の実績から能力があると判断して、本部長として採用しました。
ところがあるとき、私が秘書と話していると彼の話題が出ました。
「○○さんは、事業部では評判が悪いようですよ」と言うのです。その理由を聞くと、パワハラがひどく、机の上に足を乗せて、部下にタバコを買ってこいと命令する。上には腰が低く、部下の前ではふんぞり返って偉そうにするタイプでした。
すぐに人事に調べてもらったところ、それは事実でした。さらに詳しく調べると、経歴詐称していたこともわかったので、私から「辞めてほしい」と伝えました。
これは極端な例かもしれませんが、上から見えている状態と、横や下から見えている状態は往々にして違うものです。
私の経験から言えることは、上にゴマをする人は、下にもゴマをすらせる傾向があるということ。自分がやっているのと同じことを部下に要求するのです。
リーダーは、部下を評価するときには、できるだけ広範囲から情報を得るべきです。そして、能力だけではなく、人として徳があるかどうかを確かめる必要があります。

働き方で差別をしない――正社員も派遣社員もアルバイトも同じ

正社員だから偉いのではない、会社への貢献度こそが重要

ある幹部社員が「あの人はどうせ派遣なんだから期待しちやダメだ」という趣旨のことを言ったことがあります。その言葉を聞いて、私は強く叱責しました。
「こちらがそういう接し方をするから、そこまでの仕事しかしないのであって、こちらがきちんと仲間として接すれば相手は必ず返してくれる」
「働き方によって差別するのはおかしい。その人が会社にどう貢献しているのか、その貢献度合いによって評価されるべきだ」
私が言いたかったのは、会社への貢献度こそが重要であって、正社員と派遣社員はたまたま勤務形態が違うだけで、身分の上下はないということでした。
正社員が偉くて派遣社員やアルバイトは下。そういう気持ちで接していると、相手はそれなりの働き方しかしません。スターバックスコーヒーでは、社長もアルがイ卜も「パートナー」と呼んで区別しないからこそ、ホテル並みの接客ができているのだと思います。
スターバックスとコンビニのアルバイトの時給に、大きな差はないと思います。こちらの接し方で、働き方がまったく違ってくるのです。人は扱われ方に応じた働きをします。
同じ仕事をするビジネスパートナー、あるいは仲間として接すれば、正社員以上の働きをしてくれるものです。

お客様からすれば、正社員もアルバイトも関係ない

ザ・ポディショツプでは、毎日9時半から朝礼を行っていましたが、正社員以外の派遣社員やアルバイトは10時出社で、朝礼には参加しなくてもいいということになっていました。
私はそれを変えてもらいました。
派遣社員もアルバイトもきちんと朝礼に参加してもらうようにしたのです。同じ会社で働いているすべての人に、会社の置かれている状況や方向性を知っておいてもらいたかったからです。
朝礼では、私は社長として会社のミッションや戦略、業績についても話をしました。そういったことも含めて、派遣やアルバイトの方にもちゃんと理解してもらいたいと考えていました。
たとえば、お客様からの電話が入ったとき、電話をとるのは契約社員や派遣社員かもしれません。しかし、電話をかけたほうからしてみれば、誰が電話をとろうがザ・ボディショップを代表する人間なのです。
働き方の区分など、お客様にはまったく関係がないということです。
私は契約社員や派遣社員の方たちにも会社のミッションや価値観を共有化してもらい、どんどん仕事を任せ、仲間として一緒に喜怒哀楽を示し、一体になって頑張ってほしいと願っていました。そんな企業こそが「全社一丸となっているいい企業」です。リーダーはぜひ、そんな組織づくりをめざしてください

部下を活かすリーダー、殺すリーダー

部下を育てるのもリーダーの仕事

リーダーの大切な仕事は「実績をあげること」と「部下を育てること」の2つです。実績をあげるのは当たり前ですが、人を育てることも自分の大きな仕事であることを、リーダーはしっかり認識しなければいけません。
ザ・ボディショップの2人の店長の例をお話ししましよう。
A店長はとにかくよく働き、その店舗は最高の売上げをあげていました。店長は自分も頑張るのですが、スタッフに対してもハードワークを要求したために、退職者が多く、なかには体調をくずして入院したり、仕事中に救急車で運ばれるスタッフもいました。スタッフはその店長のもとで働くのを嫌がっていました。
これではいくら売上げをあげていてもスタッフが育たないので、将来的に会社にとってはマイナスです。
一方B店長は、売上げはA店長に劣りましたが、部下を育てるのが非常に巧みで、店長として他店を任せられる人材を輩出していました。

自分の強みと弱みを自覚する

ザ・ボディショップでは毎年、最も優秀な店長のなかからMVPを選んで表彰していましたが、その年、私は売上げ1位だったA店長ではなく、B店長をMVPに選びました。
表彰するとき、私はなぜB店長をMVPに選んだのか、その理由をみんなに話しました。それはB店長が何人もの店長を輩出し、人を育てていたからです。
売上げの数字が1位だったのにMVPに選ばれなかったA店長は、悔しい思いをしたかもしれません。納得できなかったかもしれません。
もちろん、会社としてA店長は大切な人材です。何より抜群の売上げをあげるのですから。
そこで私は、A店長に「コーチング」を受けてもらうことにしました。
コーチングとは、専任のコーチが一対一でさまざまな質問をしながら、リーダーとしての問題点を聞き出し、自分で解決法を見つけていくための手助けをする手法です。「質問を受け続け、それに答えていく」ことによって、自分で解決策に気づかせる手段です。
その結果、A店長は少しずつ自分の強みと弱みを自覚できるようになりました。「よいと思ってやっていたこと」「スタッフはわかってくれると思っていたこと」が、まったく違う見方をされていたことや、スタッフへの要求水準が高すぎることを理解してもらいました。
A店長はそれに気づくと、自分を変える努力を懸命にしてくれました。人間的に大きく成長したので、私はその後、彼女にエリアマネジャーに昇格してもらいました。

【出典】『秒速で人が動くリーダー力『秒速で人が動くリーダー力』
人に謙虚になる、私心をもたない、難しい言葉よりも心に響く言葉......スターバックス元CEOが明かす部下の心に火をつけるための習慣。

岩田松雄(いわた・まつお)
元スターバックス コーヒー ジャパン代表取締役最高経営責任者。リーダーシップコンサルティング代表。1982年に日産自動車入社。製造現場、飛び込みセールスから財務に至るまで幅広く経験し、社内留学先のUCLAビジネススクールにて経営理論を学ぶ。帰国後は、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ ビバレッジサービス常務執行役員を経て、2000年、アトラスの代表取締役に就任。3期連続赤字企業を見事に再生させる。2009年、スターバックス コーヒー ジャパンのCEOに就任。2011年、リーダーシップコンサルティングを設立。主な著書に『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)、『スターバックスCEOだった私が社員に贈り続けた31の言葉』『スターバックスCEOだった私が伝えたいこれからの経営に必要な41のこと』(以上、中経出版)、『ミッション』(アスコム)、共著に『スターバックスのライバルは、リッツ・カールトンである。』(角川書店)などがある。

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