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2つの視点で考える研修の効果測定

2015年11月 6日更新

2つの視点で考える研修の効果測定

社員研修の効果測定は、人事教育担当者の重要な仕事のひとつであるといわれます。なぜなら、研修は「費用」ではなく「投資」と考えるべきだからです。

研修費は「費用」ではなく「投資」

会社にとっても、研修に参加する社員にとっても、その効果については大いに関心のあるところだろう。「研修により人が育つ」ことに異論はないが、一方で、信頼できる効果測定の方法はまだ確立されていないというのが現状だ。

近年、研修に求めるものが明らかに変化している。これまでは「知識・スキルの向上」であったが、最近は「企業のビジョンや経営戦略を具現化する教育」という役割に変わってきている。

筆者は人材育成そのものが経営戦略でなければならないと考えている。企業の経営資源の中でも、「人」は他の経営資源と違う特性を持っている。「人」は能力が向上する資源であるとともに、成長する資産であるという捉え方をする。このように、経営資源の中でも「人」の特性を重視する立場から、研修費を「費用」ではなく「投資」と考える。つまり、「投資」に対してどれだけの「効果」があるかで、研修予算や研修の実施を検討していただきたい。

欧米では研修効果測定は常識

ATD(ASTD:American Society for Training & DevelopmentからATD:Association for Talent Developmentに名称が変わりました)の国際会議で扱われる主要なテーマを見ても、1998年頃から、「研修の効果測定」の関心が高まり、99年にはROI(Return on Investment)という形で明確に投資対効果を測定する方法論が提示された。2000年以降、研修に対して成果追求の動きはますます高まり、パフォーマンス向上や経営の効果性を高める方法論も出てきている。

欧米企業の経営者は、常に投資に見合った研修成果を追求している。研修の効果測定は常識となっており、「人材に投資をしても、どの程度の効果があったのか分からない」ようでは、すぐに研修予算がカットされてしまう。

研修効果測定の重要性を理解する

日本企業においても、研修は投資と考えはじめ、人材育成が企業の重要な経営戦略になってきた。教育担当者の重要な役割として、どのような目的で研修するのか、研修によってどのような成果を獲得するのか、そのために研修をどのように実施していくかを、経営者にきちんと説明する責任が問われてくる。だからこそ、実施した研修の効果を測定しなければならない。

筆者は効果測定を積極的に行うことで、経営者に研修の投資効果を説明し、研修予算の増額を申請していただきたいと願っている。人材を育てる教育にはお金と時間がかかるからこそ、効果性が問われるのは当然だ。

欧米では、CLO(最高教育責任者)といった教育系の役員を設置する企業が増えている。それだけ人材育成に力を入れていこうということである。CLOは従来の人事部から独立し、人材育成や組織開発を経営戦略と直結するように担う新たなポジションである。わが国では、まだなじみの少ないポジションであるが、今後は増えていくことが予想される。企業内大学(コーポレートユニバーシティー)やCLOも視野に入れて教育環境づくりに力を入れていけば、教育担当者のモチベーションも上がるであろう。

教育担当者の役割とCLO(最高教育責任者)


教育担当者の役割

研修の効果測定が求められる理由

1.経営者への説明責任
(1)研修の投資効果の測定
(2)社員の能力開発
(3)今後の教育ニーズと予算獲得

2.人材育成・教育の課題発見
(1)教育体系の構築・見直し
(2)各研修の有効性と改善
(3)必要能力と教育ニーズの発見

3.教育担当者の能力開発
(1)専門知識・能力の向上
(2)教育担当者の評価
(3)コーポレートユニバーシティー、CLO(最高教育責任者)などの戦略展開

4.「社員の成長」=「会社の成長」の見える化

効果測定は2つの視点で

教育担当者は、研修を企画し運営するだけが仕事ではなく、経営戦略から人材育成を考えることが求められている。そのためにも、研修が経営目標を達成するためにどのように貢献したか、研修効果を測定することで投資効果を立証しなければならない。従来の役割を越えて「教育コンサルタント」「人材育成コンサルタント」という役割を求められているとも言える。

しかし、効果測定は難しく、手間暇がかかる。研修費用は定量的であるため算出しやすいが、効果測定はそう簡単にはいかない。研修の効果というのは、いつ、どのように現れるものなのか。研修の効果はそもそも測定できるのか。さらに言えば、そもそも「研修の効果測定」「研修の評価」は、なぜ必要なのか。これらの疑問は、教育担当者なら誰しも持っているのではないだろうか。

企業の教育担当者に、研修の効果測定の実施状況を尋ねると、「効果測定なんてできるわけがない」「効果測定はやるべきだが、具体的にどうすればいいのか分からない」「研修を企画・運営するだけで手いっぱい」という否定的な回答が返ってくる。「研修はやらないより、やったほうがいい」という安易な発想に流され、研修の効果測定を避けて通ってきたからではないだろうか。しかし、投資効果が求められる今こそ、研修の効果測定に、正面から向き合わなければならない。

研修効果の2つの視点

研修の効果は、次の2つの視点で考えなければならない。

(1)会社の経営視点

社員に対する投資として実施した研修の効果が、会社の成長・発展に寄与したのか? 主に発揮能力を期待している。

・各研修の投資効果
・職場における態度・行動の変化
・業績への研修の貢献度

(2)社員の学習視点

研修が自分の能力開発にどのように役立って、成長につながったのか? 主に保有能力を期待している。

・研修に対する満足度
・知識・スキルの習熟度や能力開発
・モチベーション、意欲の向上

会社と社員の求める方向性

会社の経営視点だけで研修を実施してもうまくいかない。能力を発揮する社員の視点がないと研修効果は生まれない。会社と社員の求めていることや方向性を理解した上で研修効果の測定方法を考えていただきたい。

研修効果測定

※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』

【著者紹介】
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。慶應義塾大学 商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)

松下直子(まつした・なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。 神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所)、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。

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