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研修の受講者集団をまとめるコツ

2016年6月 2日更新

研修の受講者集団をまとめるコツ

社員研修の受講者は、研修目的を共有し、ともに研修成果を追求する組織ととらえることができます。研修講師は、研修におけるルールが創造的な言動の抑制になりすぎないよう、また集団の弊害を理解し、排除するようマネジメントすることが求められます。

受講者集団を「組織化」する

社員研修は、複数の受講者の協働によって成り立っている。ここに受講者の「組織」が形成されている。研修講師の役割とは、この受講者の協働体系を適切に機能させることであり、絶えず組織を維持することにあるとも言えよう。一定期間以上存在する組織は、絶えず繰り返される組織化の努力によって維持される必要があるからである。

組織は、以下の3つを備えたときに成立する。

1)互いに意見を伝達できる人々がいる
2)それらの人は組織に貢献しようとする意欲を持っている
3)共通目的の達成を目指している

こうして見ると、受講者集団もれっきとした「組織」であることが確認できよう。受講者集団は、単に「人の集まり」ではないのである。

【受講者集団を、組織たらしめるポイント】

・共通の目的を持つ
・目的と目標を共有する
・目的と目標達成のために互助しようと努力する
・役割の分担が集団の中に定められている
・相互に関係を持ち合い、したがって相互の振る舞い方を規制し合う
・振る舞い方の一定の基準が存在する

組織にはルールが必要

集団組織には個人の気ままな単独行動を「規範」「約束」「慣習」などによって抑制し、一定の枠の中にメンバーの行動を同質化しようとする働きがある。組織にはルールが必要である反面、そのルールが創造的な言動の抑制になりすぎないように、講師は注意を払う必要がある。

【研修におけるルール】

・時間厳守、5分前行動
・積極的にあいさつしよう(お疲れさま、ありがとう等)
・メンバーの意見に対して敬意を払い、傾聴しよう
・自分に対するアドバイスを素直に、勇気をもって受け止めよう
・いつもよりも、積極的に発言しよう
・メンバーのためになることなら、誠意をもってアドバイスしよう

研修における集団とその弊害

研修では、2つの集団が存在する。受講者全体と、学習単位としての集団(グループ、チーム)である。講師はこの2つの集団に、適切に働きかけていくことが要求される。そのために、それぞれの集団の特徴をよく理解しておく必要がある。

なお、それぞれの適正人数であるが、全体は15~40名(小学校の一クラス程度が限界であり、これを超えると全体が見えなくなる)、グループは3~6名(三人寄れば文殊の智恵。しかし6名を超えると、集団依存や、発言での役割分担が起こりがちになる)がベターである。

研修の受講者集団において、大半の人は、リーダーとなるよりは、むしろ追随者となることを好む(人に従うことは容易である)。リーダーに対する心理的依存が生じると、集団の中で人は自ら考えることをやめてしまいがちになる。

また、集団思考(集団で合議を行う場合に不合理あるいは危険な意思決定が容認されること)に陥ることもあり、「外集団」に対して敵意を抱く(他チームの意見を批判的に攻撃する等)こともある。

講師はこうした集団の弊害を理解し、これを排除するように働きかけることが必要となる。

集団思考とは

・メンバーのほとんどの間で根拠のない過剰な楽観的観測が共有される
・集団が共有する倫理観について疑問を持たない傾向にある
・過去の実績を理由に自己正当化し、自集団に対する批判的な評価を行う傾向にある
・集団以外の者を否定的なステレオタイプ的認識で見る
・集団の意見に同調するように圧力がかかる
・集団の結束を乱さないためにメンバーが集団の意見に対して異論を唱えなくなる
・「意見がないことは賛成を意味する」という誤った認識から、表面上集団の全員が同じ意見であるという共通認識が生まれる
・集団の意見に反対する議題が出ないように働きかけるメンバーが現れる

集団思考に入りやすい要因

・集団が外部の脅威にさらされていたり時間が切迫したりしている
・集団の団結が強い
・集団のリーダーの権限が強い
・集団が孤立したり情報が少なかったりして外部から隔離した状況にある
・決定の道筋や規範がはっきりしていない
・メンバーの思想や社会的な立場が同質である
・メンバーの集団に関する自省や疑念が薄い

集団による決定の特徴

・代案や他の意見の検討の欠落
・決定の意義・目標の欠落
・決定による影響・結果の検討の欠落
・一度否認された決定の再検討の欠落
・情報量の欠落
・都合のいい情報しか考慮しない偏り
・緊急時の対策の欠落

※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)

茅切伸明(かやきり・のぶあき)

株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)

松下直子(まつした・なおこ)

株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。 神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所) 、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。

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