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あらためて「勇気づけの職場づくり」に必要なものとは

2016年9月26日更新

あらためて「勇気づけの職場づくり」に必要なものとは

アドラー心理学では、強い組織をつくるために「勇気づけ」の重要性を説いています。人材育成ご担当のあなたへの2つの質問から、「勇気づけ」の職場づくりをあらためて考えてみましょう。

1月から18回にわたって連載してきた「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」も今回が最終回です。

チームビルディングやモチベーションの構築に有効な考え方を提示したり、「職場の困った人」に焦点を当てたりと、さまざまな角度から職場で起こる問題を捉え、そしてその対処法としてのアドラー心理学の考え方をお伝えしてきました。今回は、総まとめとして「勇気づけ」の職場づくりをあらためて考えてみましょう。

人材育成ご担当者のあなたへ 二つの質問

では、二つのことをおうかがいします。本稿をお読みの人材育成ご担当者のあなたへの質問です。

「あなたは、自分にはいいところや長所があるとしても、自分のことをダメだと思い、否定しますか? それともよくない部分や欠点があるとしても、自分を受け入れ肯定しますか?」

「あなたは、自分の職場がどのようになっていれば幸せですか?」

なぜ「あなたの組織は」というような質問ではなく、「あなたは」と問う質問なのかと思われたでしょうか。

「職場」は、人で構成されています。建物や部屋や机や椅子は、構成要素である人を取り巻く「モノ」にすぎません。人がいなければ職場は成立しません。職場という言葉を「企業」「自治体」「学校」「国」に替えても同じことです。職場を構成する私やあなたが精神的に健康でなければ、健全な職場は成立しえません。人材育成に携わっておられるからこそ、それはよくおわかりのことと思います。

自己受容について

一つめは、あなた自身の自己受容についての質問です。

基本的に自分を受け入れ肯定できれば、私たちは多少の困難やつらい出来事があっても、それに向き合い対処することができます。そのためには完璧な人間である必要はありません。自分にOKを出すことができる人は、他者にもOKを出すことができます。自分の欠点を直視し受け入れることはつらいことですが、それにより他者もまた完璧ではないということを受容できるからです。そしてそれは、周囲を考慮せずに「俺様は正しいんだ」という自己中心的な考えを振りかざすこととは大きく異なります。

仕事は完璧を求められるのが常です。とくに私たち日本人は、先人たちがそこを必死に目指したからこそ、繁栄をしてきたといえます。しかしながら、「完璧な職場」は日本のどこにあるでしょうか?

完璧でも完全でもないからこそ、補い合い、助け合い、協力し合い、よりよいものを追い求めていくのが理想的な職場環境ではないでしょうか。まず自分を受容し、相手を尊重、尊敬し、その姿勢を見せていく。そんな姿勢の人が増加し、課の、部の、事業部の、そして会社全体の雰囲気をつくり、社風となる。社長の訓示だけが会社を変えるわけではありません。

あなたが描く会社のビジョン

二つめの質問は、あなたが描く会社のビジョンをお聞きしています。生き生きと、ありありと描いていただきたいと思います。

たとえば製造関係だったら、自分の会社の製品をユーザーが喜んでボロボロになるまで使ってくれて、またリピートしてくれるような、そんな会社。そんな会社の製品をつくる、設計する、売る、携わるのは、どんな人たちでしょうか。嫌々、ダラダラ仕事をしている人たちではなさそうですね。あなたの理想のなかでは、どんなふうに働いているでしょうか。

また、たとえばサービス業だったら、お店のファンが街で噂をし、リピーターどころかその友達まで巻き込んでくれるような店。そのお店で働くのはどんな人でしょうか。そしてそれはどんなお店でしょうか。表に出る人、バックヤードで支える人、すべてのスタッフはあなたの理想のなかでどんなふうに働いているでしょうか。

そんな理想の姿が思い浮かんだら、それを箇条書きで構わないので、具体的な文章に落とし込んでみてください。なるべく詳細に、浮かんだ映像を言語化するくらいのイメージで。

そうしたら、その一文一文を吟味し、これから先の「いつ」その状態を実現させるのかを考えます。その状態の実現にはどのようなプロセスが必要なのか。その一つひとつのステップをいつまでにやるのか。実現化に向けて、障壁となるものは何か。それを取り除くためにはどうすればいいか。

手間のかかることはあるかもしれませんが、無理難題はないはずです。

そして、できたらこの作業、一人でやるのではなく、周囲の影響力の強い方……可能であれば経営幹部や役員を巻き込むことをお勧めします。また、自分と同世代だけではなく、可能な限り幅広い年代の意見をごちゃまぜにしていくこともお勧めです。

「勇気づけ」とは「困難を克服する活力を自他に与えること」

「自己変革なくして組織変革なし」。僭越ながら、これは私の所属するヒューマン・ギルドの企業研修に対するポリシーです。「誰か偉い人が好きにやればいいじゃない」「頭のいい奴が考えてくれればいいんだよ」。そんな組織変革は、後々不満やしこりを残します。「誰だよ、こんなことやり始めたのは?」。そんな職場でよいでしょうか?

この連載の「今、なぜ人材育成にアドラー心理学なのか?」 「居心地のよい職場・悪い職場」の回でも述べましたが、「勇気」とは、「どんな困難が目の前に立ちはだかっても、逃げることなく立ち向かい、乗り越えていこうとするエネルギー」であり、「勇気づけ」とは「困難を克服する活力を自他に与えること」です。

まずあなたが、自己受容をすることによって自分自身を勇気づけてください。そして、その勇気づけをまわりへと広げていきましょう。あなたが変わることでまわりも変わり、やがて職場は勇気づけで満たされていきます。

そして、あなたが生き生きと思い描いたビジョンの実現に向けて、勇気をもって職場を改善、改革し、働く誰もが自分の職場に誇りをもてる、そんな場をつくってください。

ご愛読、ありがとうございました。

「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

通信教育「リーダーのための心理学入門コース」はこちら

永藤かおる(ながとう・かおる)

(有)ヒューマン・ギルド研修部長。心理カウンセラー。1989年、三菱電機(株)入社。その後ビジネス誌編集、海外での日本語教育機関、Web 制作会社など、20年以上のビジネス経験のなかで、人事・採用・教育・労務管理等に携わる。どの現場においてもコミュニケーション能力向上およびメンタルヘルスケアの重要性を痛感し、勤務と並行して学んだアドラー心理学を生かして現在㈲ヒューマン・ギルドにてカウンセリング業務および企業研修を担当。著書に『「うつ」な気持ちをときほぐす 勇気づけの口ぐせ』(明日香出版社)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。

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