
部下に遠慮してしまう~コーチングQ&A

(2016年6月24日更新)
コーチング研修後、相手の立場に立って話を聴くように心がけていますが、そのために自分の意見がどうしても遠慮がちになり、十分に相手に伝わっていないのではないかと不安を感じるときがあります。
また、部下には常に積極的にコミュニケーションを図り、お互いに理解を深めようと努力していますが、結果が出ないと段々消極的になってしまうこともあります。
(荒田一郎・営業マネジャー〈仮名〉)
* * *
荒田さんは、少しコーチングを意識しすぎているのかもしれませんね。プロのコーチはコーチングスキルを縦横に駆使して相手の答えを引き出すサポートをするのですが、コーチング初心者の荒田さんの場合、「コーチングを使わなければ!」と強く意識するよりも、まず使いやすいスキルから適当に使ってみようぐらいの軽い気持ちでいいのではないでしょうか。
例えば、相手の話はとにかくさえぎらずに全部聴く、指示・アドバイスの前に、「で、君ならどうする?」「どういう方法がいいと思う?」のように軽い質問を必ず一つは挟む、といったことです。
そうして徐々に使い慣れていく中で、少しずつでも相手の対応に変化が生じてくれば、コーチングに対する荒田さんの意欲も向上することでしょう。
あくまでも上司であることを自覚する
とにかく、荒田さんはプロコーチではなく、コーチングもできる上司、なのですから、コーチングだけを使わなければならないなどということはないのです。上司として言うべきことは言い、注意すべきことは注意する、指示すべきことは指示する、というスタンスを崩す必要は毛頭ありません。これまで培ってきたマネジメントスキルをベースにしながら、その上に少しコーチングを乗っけてみる、ぐらいの姿勢でまずはいいのではないでしょうか。
それから、これはコーチングとは直接の関係はありませんが、マネジメントする立場の人にとって、部下の置かれた状況や心理状態などに「配慮」することは大切ですが、「遠慮」は無用です。遠慮をすると、マネジメントスタイルが崩れます。部下には、配慮はするが遠慮はしない、というスタンスで臨んでいただきたいと思います。
なお、後半に書かれている「消極的」の意味がちょっとつかめません。部下に対する要求や指示が遠慮がちになる、ということなのでしょうか。ご自身の行動が消極的になるということなのでしょうか。前者であれば、先に記したことを参考にしていただければと思います。後者ですと、少し因果関係がはっきりせず、適切なアドバイスができかねますので、ご容赦ください。
最後に、どの部下にも無限の可能性がある、必ず自分の「答え」を持っている、という信念(コーチングマインド)だけはしっかりともち続けていただきたいと思います。スキルは後からボチボチでいいのです。コーチングマインドをしっかりもった上司として、ますますご活躍されますようお祈りいたします。
【POINT】「配慮」することは必要だが「遠慮」は不要である
出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)
〈PR〉
~基礎知識と基本スキルを習得するために~
コーチングの基本の考え方やその意義、なぜコーチングが求められているのかが、しっかりと理解把握できる入門コース。相手の可能性と自主性を引き出すコーチングスキルの基本が身につき、コミュニケーション能力とリーダーシップの向上につながります。
【著者プロフィール】
星雄一(ほし・ゆういち)
1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。
この記事に付けられたタグ
コーチング 最新記事
メールマガジン
更新情報をメルマガで!ご登録はこちらからどうぞ