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上司のアドバイスに興味を示さない部下たち~コーチングQ&A

上司のアドバイスに興味を示さない部下たち~コーチングQ&A

(2017年6月28日更新)

 
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研修においてコーチングというものを初めて知りました。円滑なコミュニケーションのツールとして多くの場面で活用していきたいと考え、実践に努めています。

その中で、私自身が他部門で経験してきたことを活かした別の角度からの視点を提供することで部下の能力や可能性を伸ばそうと試みています。

しかし、これまでの取り組み方とは違った面などがあることから、なかなか興味を持てずにいるような場合があるようです。このような場合の、部下の興味を引き出す手法について何かアドバイスをいただければありがたく思います。よろしくお願いいたします。(谷田一郎・鉄道会社課長〈仮名〉)

 

*   *   *

 

谷田さんは、コーチングに可能性を感じて職場での実践に取り組んでおられるのですね。大いに結構なことで、部下や周囲の人たちとのコミュニケーションの質は確実に上がっていくことでしょう。

 

「善意の押しつけ」になっている可能性はないか

さて、ご質問ですが、なかなか難問ですね。具体的な内容がよくわからないので一般的なお答えになることを予めお断りさせていただきます。

その上で、まず静かに考えてみていただきたいのですが、谷田さんは、ご自身が他部署で経験してきたノウハウやスキルのほうが、現部署のメンバーがやっている方法よりもベターである、と感じてはいませんか? また、現部署のメンバーも、自分たちのやり方のほうがベターであると感じているのではないでしょうか?

こんな質問をさせてもらったのは、上記の文面からは谷田さんもメンバーもお互いに相手のやり方に対する関心・興味が低いように感じられるからです。メンバーがそこまで感じてはいないとしても、もし、谷田さんのほうにそういう感覚があれば、メンバーとしては自分たちのこれまでのやり方が否定されるような印象を受けてしまい、興味を持つよりも反発のほうを感じてしまうこともありうることです。

谷田さんは「別の角度からの視点を提供する」と書いておられますが、それは相手が行き詰まっていたり、新しい発想を求めていたりする場合に有効なのであって、そうでなければ、いかに良かれと思ってのアドバイスであっても相手にとっては「押しつけ」に感じられるケースはよくあるのです。

 

認めてほしければまず相手を認める

以上のことを心静かに考えてみて、もし思い当たる節があれば、そこに一つのヒントがあるように思います。認めてほしければまず相手を認める、興味をもってほしければまずこちらが相手に興味をもつ、という人間関係構築の原則の一つが浮かんでくるのではないでしょうか。

現部署のメンバーのやり方に谷田さんが強く興味を示し、なるほどそういうやり方もあるのか、こういうやり方はどこから生まれてきたのか、このやり方のメリットは何か、といったことを学ぼうとする姿勢を示せば、その反作用として、「谷田さんはどういうやり方でやってきたんですか?」とか、「もっといいやり方はありませんかね」といった質問が出てくることが考えられます。

 

以上述べてきたことは、まったく的外れかもしれません。その場合は、なぜ現部署のメンバーが谷田さんのやり方に興味をもたないのかということを真剣に考えてみる必要があります。

その理由は私には皆目見当がつきませんが、もっともあり得る理由としては、谷田さんのやり方の「よさ」がピンとこない、ということではないでしょうか。であれば、谷田さんがご自身のやり方でやって、それが「速い・安い・うまい」方法であることを現実的に示すことがもっとも有効な解決策になるでしょう。そういうやり方を目の当たりにすれば、興味をもたずにはいられないはずですから。

 

第三者が直接的に「興味をもたせる」ことは不可能

結論めいたことを最後に書かせていただきますが、ある事柄に興味のない人間に対して第三者が直接的に「興味をもたせる」ことは、事実上は不可能だと考えるべきでしょう。いろいろな事物を見聞きする中から、本人自身がピンとくるものに興味を引かれるのであって、それが何であるかは本人自身にも予測はつかないはずです。

ですから、第三者にできることは、これに興味をもてと押しつけることではなく、さまざまな事例や情報、体験談、エピソードなどを提示してあげることではないでしょうか。その中から、「これは面白そうなのでもっと詳しく教えてください」と言ってくるときに、初めて自主的な動きが始まるのです。

谷田さんの「部下の能力や可能性を伸ばそう」という試みは実に貴重で大切なことですが、それが「こうすれば伸びるはず」という思い込みから考え方や方法論の「押しつけ」にならないよう、配慮していただければと思います。

 

【POINT】自分を認めてほしいのならば、まずは相手を認めよう

 

 

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 

コーチング研修ベーシックコース

 

 


 

【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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