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「固まった考え」を持つ頑固な部下~コーチングQ&A

「固まった考え」を持つ頑固な部下~コーチングQ&A

(2017年7月25日更新)

 
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何度注意しても作業改善や残業短縮に取り組まない頑固な部下の指導に悩んでいた奥田さん。その仕事一筋15年のベテラン社員の、固まった考えや行動を変えさせることは、できるのでしょうか。コーチングの考え方に学びます。

 

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今の職場は雰囲気が良く、コーチングも浸透しやすい環境にあると感じています。以前の職場のことなのですが、その仕事一筋に15年以上担当しているベテランがいて、作業の改善や残業の短縮などについて何度注意しても一向に直そうとせず、自分のやり方を押し通す人がいました。私の対応にも問題があったのかもしれませんが、こういう固まった考えを持った人を変えていくことができるのか、良い方法があったら、お教えください。(奥田三郎・電気工事会社マネジャー〈仮名〉)

 

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奥田さんのご質問は、以前の職場にいた「固まった考えの人」についてですね。今の職場はとても雰囲気が良いそうですから、そういう問題もないのでしょうが、いつかまたそういうタイプの部下や同僚とめぐり合うかもしれません。その時のために、というわけではありませんが、考えられる範囲でアドバイスさせていただきましょう。

 

他人を変えることはできない

自分の考えや行動パターンに頑として固執し、いくら注意しても変わらないという人は、稀ですが、確かにいますね。こういうタイプの人は、その理由はともあれ、他人から注意されるとますます頑なになって変えようとしない、という点が共通するようですから、これはなかなか厄介なテーマです。

しかし、そもそも、人は他人から「変われ」と言われて簡単に変わるものではありません。他人を自分の思うように変えることはできない、ということをまず前提に置いてください。

では、どういう時に人は変わるのかと言えば、「変わらなければならない」と自ら気づき、「変わりたい!」「変わろう!」と自ら強く望んだ時なのです。

要するに、指示命令では人を変えることはできないのですから、まさにコーチングの出番ということです。

 

「学ぶ姿勢」で話を聴く

では、どのようにコーチングすれば相手は気づき、自ら変えようと思うでしょうか。これも個人差があるので一概には言えませんが、ほぼ共通して通じるであろうと思われる方法があります。

それは相手の話を「よく聴く」ことです。奥田さんがあげておられる「固まった考えの人」との間に信頼感ができあがっていてフランクに話せるかどうかはどうも心もとない感じがしますが、一応そういう関係にあるとした上で話を進めましょう(そうしないと、本論に入る前にすごい量の文章を書かなければなりませんから)。

一杯飲みながらでもいいですから、ゆっくり話せる時間をつくって、相手の人生観・仕事観をじっくり聴いていきます。どういう人生を送っていきたいと思っているのか、人生の中心的価値をどこに置いているのか、仕事はその中でどう位置づけられるのか、といった人生全般の話から、この会社でどういう職業人生を送りたいのか、仕事を通じてどういう存在になっていきたいのか、仕事をする上でもっとも大切にしていることは何か、といったことをボツボツと聴いていきます。

このとき、相手を責めるとか、説教しようとかいうような姿勢は決して示してはいけません。相手の仕事の仕方や生き方に何か独特のものを感じるので、できれば参考にしたい、という「学ぶ姿勢」を感じさせることが大切です。もし相手がこうしたことを話し始めてくれれば、それに共感と関心を示すことでさらに話を引き出すことができるでしょう。

「そういうやり方だとこういう問題が出てくるんじゃないかと思うが、その点は君はどうしてるんだい?」といった質問をはさむのも効果的です。反論するのではなく、できるだけ素直な質問で返すのです。

こうして話していくうちに、なぜこういうスタイルで仕事をするようになったのか、なぜこのスタイルにこだわっているのかが、あなたにわかってくるばかりでなく、相手自身も気づいてくるものです。

というのは自分のこだわりやとらわれの原因は、自分自身でも気づいていない場合が多いからです。同時に、このスタイルの問題点にも意識が向くでしょう。仕事においてはチームワークや連帯感が重要であり、自分のスタイルがそれを阻害しているということに気づけば、ちょっとまずいかな、という気になるものです。

ここまでいけば、彼の行動変化が起こる可能性が高くなりますから、しばらく見守ってください。まったく変わらなければ、「先日の君の話についてあれからいろいろ考えたんだが……」とまた話す機会をつくります。この根気が大切です。

 

気づきを生みだすもう一つの方法

しかし、相手にこちらの意図を感じさせずにこうした会話を続けるのは、コーチングに熟達していないとかなり難しいことです。そこで、もっと取り組みやすい方法をアドバイスしましょう。

それは、相手に若手・新人の指導教育を頼んでしまうというものです。これはあなたが相手の上司の立場にあることが前提ですが、相手はベテランですから、そこを見込んで、仕事のイロハから社会人の基本的姿勢まで、チューターとなって指導してほしい、と頼むのです。その際、「やり方」だけでなく「なぜそうするのか」というところまでちゃんと教えるように依頼します。

この方法はかなり冒険的ですが、うまく引き受けさせることができれば、本人が自分のやり方を見直し改める劇的な効果を生む場合があります。

 

徹底して相談するのも効果的

この方法もちょっと難しいとなれば、徹底してその人に相談するというスタンスを取るのがもっとも効果的でしょう。

頑固で手を焼いているような相手とは、必要以外の会話をしたくないのが普通の心情ですが、そうすると相手との距離はますます遠ざかり、相手はますます頑なになりかねません。

ここでは逆に、ベテランの君を頼りにしているというスタンスで、ぐっと歩み寄り、組織の運営や若手の指導方法、業務の進め方など、こまめに相談し、可能な限りその意見を活かすようにします。これは相手にとっては思いがけないことでしょうが、自分の存在価値を見直すことにもなり、あまり無責任なことも言えないということから、自らを見直し改める契機になる可能性が大きいでしょう。

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これらの方法は、いずれもややテクニックに走るきらいがありますが、相手のアタマは固くてもそれなりの知識経験を持っており、まだ発揮されていない能力がたくさん眠っているはずだという信念のもと、ぜひ力を貸してほしいというスタンスで臨めば、道は開けてくるでしょう。将来そういう機会があれば、いずれかの方法でぜひチャレンジしていただければと思います。

 

【POINT】こだわりや固執の理由は当の本人ですら気づいていない場合が多い

 

 

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 

コーチング研修ベーシックコース

 


 

 

【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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