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返事はいいが、いつまでたっても実行しない部下~コーチングQ&A

返事はいいが、いつまでたっても実行しない部下~コーチングQ&A

(2017年8月25日更新)

 
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コーチングスキルである相手の気持ちを考えながら面談するよう実践しておりますが、面談者の話の中で、GMである私からいろいろと指示をしているのですが、本人からの報告がいつまでたってもありません。

指示しているときには、「はい」「はい」といい返事をしてすぐにでもやりますと言っているように見えるのですが、一向に事が進みません(日常も同様なことが見られる)。

周りの人に聞いてみても、日常でもそのようなことがあり、複数のことをお願いしても、1つのことに集中してしまうと他のことを忘れてしまい、平行して対応できないようであると言う声もあります。このような人に対する良いコーチング方法があれば教えていただけないでしょか。(徳田一郎・メーカー営業マネジャー〈仮名〉)

 

*   *   *

 

なるほど、私も昔似たようなタイプの部下をもって往生したことがありますので、徳田さんの困惑はよくわかる気がします。私の場合は、いま振り返ってみると、相手を指示命令のみによって、ということは上司としての権威によってのみ、動かそうとしていて、相手の気持ちを考えるということをしていませんでした。一言で言えば、上司として未熟であったということです。当然ながらコーチングも知りませんでした。

徳田さんのケースがもし私の場合と基本的に共通しているのであれば、アドバイスが浮かびます。しかし、もし違うケースであれば、つまりその人個人の能力・人格に関わるものであれば、これは容易ではなく、長期戦、あるいは別のジャンルの専門家のアドバイスが必要かもしれません。

ここでは、私と共通するケースと仮定して話を進めさせていただきます。私と共通するケースということは、上司の態度・接し方のほうに根本的な原因がある、ということを意味します。

 

「はい」という返事に込められた意味を考える

文面から感じられるのは、失礼ながら、徳田さんはコーチングのスタンスに立とうとしながらも実際は指示命令のスタンスから離れていない状態ではないか、ということです。コーチングは、相手の気持ちを考えながら話をするだけでは決して十分ではありません。相手の「答え」と「やる気」を引き出さなければコーチングをやったことにならないのです。

「指示」することは上司ですから当然のことです。しかし、それに対する「はい」という返事が意味する内容は、上司が言っていることの意味は一応理解しました、というレベルから、上司が望む状況(ゴールイメージ)を理解し、共感し、その実現に全力をあげます、というレベルまで、さまざまです。

いったい、彼の「はい」はどの程度のレベルなのでしょうか。私にはどうも相当低いレベルの「はい」であるように思えてなりません。「わかりました、やります!」という強い意志のようなものが感じられないのです。

 

部下の意志レベルを上げるにはどうするか

では、どうすればそのレベルを上げることができるのか、それこそがまさに上司の態度・接し方によるものであり、コーチングの出番なのです。以下、その基本的な流れをまとめておきましょう。

 

(1)ミッション、ビジョンの明確化

わが社は、わが部門は、わがチームは、誰に対してどのような貢献をしようとしているのか(ミッション)、具体的にはいつまでに何をしようとしているのか(目標)、この会社・職場をいつまでにどんな状態にしたいのか(ビジョン)……。こういうことを、経営トップや部門トップの言葉を引用し、自分なりに言い換え、さらに自分の夢や方針を加えて、部下に伝えることです。

一度言ったらそれで終わりなどというものではなく、繰り返し繰り返し、熱意を込めて語り続けること、これがあらゆるリーダーに求められる第一の要件です。部下の理解度ややる気の高さは、上司のその熱意の強さに比例すると言えます。

 

(2)業務の「意味」の明確化

部下それぞれに業務付与するのは上司の重要な役割ですが、その業務のもつ意味、すなわち、前述のミッションやビジョンとどのような位置関係にあるのかをきちんと語り伝えることが大切です。部下のやる気は、「何をやるか」だけではなく、「なぜやるか」がはっきりわかったときに、一段と向上するものです。

 

(3)「やり方」を問う 

「何をやるか」「なぜやるか」が十分に理解されたら、それを「どうやるか」を尋ねます。ここからが本格的なコーチングです。特にこちらが答えを教えるのではなく、相手の答えを引き出し、よりよい答えに高めていく質問のスキルの出番です。やり方を本人が考え、基本的にそのやり方を認めることが、やる気をさらに高めます。

 

(4)「意志」の確認

GROWモデルのWです。やる気になったか、まず何からやるのか、いつ始めるのか、その結果・経過はいつ報告してくれるのか、すべて、こちらが指示するのではなく、質問して相手が答えるのです。自ら実行の約束をするわけですから、実行する確率は格段に高くなります。

 

変えられるのは自分の行動だけ

ごく大雑把ですが、このようなステップになるでしょう。簡単なようで、結構面倒です。忍耐力も必要です。指示命令するより、はるかに時間がかかります。

しかし、相手を指示命令でこちらの思うように変えることはできません。変わったように見えても、それは外面だけ従っているに過ぎません。変えられるのは自分自身、具体的には自分の行動だけなのです。その変化が相手に影響を与え、気づきを生み、行動変化を促すのです。上司が変わらなければ、部下は変わらないのです。

徳田さんには、もう一度コーチングの基本の考え方と基本スキルを確認していただき、こうしたステップを踏むことで彼との関係を仕切り直ししていただきたいと思います。彼個人に特殊な問題があるという場合でない限り、必ず好ましい変化が生まれてくるはずです。

 

【POINT】「はい」という返事の意味内容には、さまざまなレベルがあることを認識しておこう

 


 

【Key Word】クライアント

コーチングを受ける人を一般に「クライアント」と呼びます。この言葉は、コンサルティングやカウンセリングでも使われます。

また一般のビジネスにおいても、「顧客」という意味で幅広く使われています。

原義的には「相談者・依頼人」の意味なので、厳密には、本人にコーチングを受けたいという意志があることが前提となるでしょう。

いわゆるビジネスコーチングにおいては、コーチングをまったく知らない部下に対して上司がさりげなくコーチングスキルを使うというような場面が多いので、その部下をクライアントと呼ぶのは適切ではないようにも思えますが、習慣的に使われています。

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 

コーチング研修ベーシックコース

 


 

【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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