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ケースを用いた「フィードバック」のトレーニング~頭でわかっていてもやるとできない

ケースを用いた「フィードバック」のトレーニング~頭でわかっていてもやるとできない

(2017年12月11日更新)

 
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フィードバックは、頭ではわかっていても、実際にやってみると難しいもの。上達するためには、ケースを用いたトレーニングが有効です。中原淳氏の解説をご紹介します。

 

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フィードバックは「経験学習」で上達する

「フィードバック」は下記の2点から成立する部下育成のスキルです。

 1.耳の痛いことであっても、部下に「現状」を通知するスキル

 2.部下の意見を傾聴し、立て直しを支援するスキル

これからリーダーや管理職になる方であれば、その前に身につけておきたいマネジメント手法のひとつと僕は考えています。

ここでお伝えしておきたいのは、フィードバックの概念やフレームワークを理解しても、絶対に「スキル」は向上しないということ。これは著者として断言できます!

フィードバック上達に必要なのは、「フィードバックする経験」と「フィードバックを受ける経験」です。

フィードバックは、自ら他者に対してフィードバックすることでしか向上しません。あるいは、自ら為したフィードバックに対して他者からフィードバックを受けることでしか、スキルが伸びません。

正確に言いますと、実際に自らフィードバックすることや、自ら為したフィードバックに対して他者からフィードバックを受けることを通してはじめて「理解」できるのです。

 

頭ではわかってはいても、なかなかできない

フィードバックは「経験学習」で上達します。しかし、単に「経験学習せよ」と言っても、なかなか学ぶことができません。そこで、PHP研究所で先日実施したワークショップでは、僕が簡単なケースを書いて、参加者の皆さんに「模擬フィードバック演習」をしていただきました。

ケースは、

1.フィードバックを行う方(上司用)

2.フィードバックを受ける方(部下用)

の2つに分かれていて、ペアになった2名の管理職が、上司役、あるいは部下役のケースを読み込み、役に成りきってロールプレイングをします。

当日、参加者の方々は、それぞれにフィードバックを楽しんでおられるように、僕には見受けられました。しかし、演習前に「フィードバックのときには、上司は『腕組み』をしないでくださいね」「フィードバックのときには、ちゃんと『相手の目』をみてくださいね」と申し上げていたのですが、やはり深刻なケースを前に、だんだんと「防御の姿勢」「攻撃の姿勢」に入っていくのが見て取れました。

このように、頭ではわかってはいても、なかなかできないのがフィードバックなのです。

 

フィードバックのケースライティング

演習で使うフィードバックのケースライティングのキモは、

1.上司用、部下用、それぞれのケースには、情報を非対称に載せておくこと

2.あっちをたてれば、こっちがたたないようにしておくこと

3.しかし、それでいて、何とか話を収束できるようにClue(手がかり)はのせておくことです。

フィードバックのケースライティングは非常に楽しいものです。先般、PHP研究所の皆さんと、DVD『フィードバック入門』や追加の事例書籍(『実践!フィードバック』)をつくるプロジェクトをしていたのですが、フィードバック事例を考えて、「これ、どうします?」「まいったねぇ……」と皆で悶絶していました。

そんな過程を経て、『実践!フィードバック』には「模擬フィードバック演習」の“プチ教材”がついています。実際に研修を行う際には、これを参考に自社のケースを書き起こしていただければと思います。

 

フィードバック文化を現場に根づかせる

フィードバックの書籍は、僕としてはある種の「社会貢献」のつもりもあって書いています。

多様性あふれる社会、仕事人生が長期化していく社会にあって、わたしたちは「正しく長く働き続けなければ」なりません。「正しく長く働き続ける」ためには、自ら正しい方向に向かっているのかどうかを常にモニタリングしながら、自分の体勢を必要に応じて「方向転換」していく必要があります。フィードバックは、そのために重要な学びと変化の機会を提供します。

僕としては、よきフィードバック文化を、この国の実践現場に根づかせることができたとしたら、うれしいことです。

 

 

参考:「東京大学 中原淳研究室 ――大人の学びを科学する」

 

中原淳 フィードバック入門

 


 

中原 淳(なかはら・じゅん)

東京大学 大学総合教育研究センター 准教授。東京大学大学院 学際情報学府 (兼任)。東京大学教養学部 学際情報科学科(兼任)。大阪大学博士(人間科学)。北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員等をへて、2006年より現職。
「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人々の学習・コミュニケーション・リーダーシップについて研究している。専門は人的資源開発論・経営学習論。
単著(専門書)に「職場学習論」(東京大学出版会)、「経営学習論」(東京大学出版会)。一般書に「研修開発入門」「駆け出しマネジャーの成長戦略」「アルバイトパート採用育成入門」など、他共編著多数。働く大人の学びに関する公開研究会 Learning bar を含め、各種のワークショップをプロデュース。
民間企業の人材育成を研究活動の中心におきつつも、近年は、最高検察庁(参与)、横浜市教育委員会など、公共領域の人材育成についても、活動を広げている。一般社団法人 経営学習研究所 代表理事、特定非営利活動法人 Educe Technologies副代表理事、特定非営利活動法人カタリバ理事。


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