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組織が望む社員の成長と、社員が望む自己成長はリンクできているか?

2018年10月19日更新

組織が望む社員の成長と、社員が望む自己成長はリンクできているか?

組織が社員の成長を望むとき、その姿勢は明確になっているでしょうか。また、組織の側はどのような姿勢で社員の成長と向き合うのがよいのでしょうか。

【組織の成長哲学を明確にするための3つのポイント】

1.組織にとっての成長とは何かを明確にする

2.組織として、社員にどのような人間的成長を望んでいるかを明確にする

3.組織として、社員の人間的成長に対してどのような姿勢でいるかを明確にする

『組織の成長哲学を明確にするための3つのポイント』として、過去2つの記事で「1.組織にとっての成長とは何かを明確にする」と「2.組織として、社員にどのような人間的成長を望んでいるかを明確にする」について解説を行ってきました。

※参照「どうすれば成長哲学が持てるのか」「組織の『成長哲学』は明確になっているか?

今回は最後の項目である「3.組織として、社員の人間的成長に対してどのような姿勢でいるかを明確にする」について解説を行います。

事例:社員の自己成長を支援する上司

この話は、冷凍食品の製造などを手掛ける企業に勤めているT課長の体験談です。T課長の勤務している工場では、1人やる気が見られないことで有名なS君という入社3年目の社員がいました。

S君は課長同士の間ではとても有名な人物で、どの課長の下に配属になっても絶対に彼のモチベーションが上がらないことで有名でした。それだけではありません、S君が配属になった課は、S君の影響をうけて他の部下たちの雰囲気が悪くなるという問題もありました。

そのため、いつ頃からか、どの課長もS君を受け持つのを嫌がるようになり、S君には何度も配置転換が行われてきました。

そんなおり、S君の配属先がT課長の課になったのです。T課長の同僚課長はみな口をそろえて、T課長に対して「あいつは絶対に変わらない。Tさんも大変だと思うけど頑張って」と言ってきたそうです。

そこでT課長はS君と面談をしてみることにしました。T課長がS君に対して「いつも楽しくなさそうに仕事をしているが、本当は何か別にやってみたい仕事はあるのではないか? 無理して働いているのではないか?」とたずねてみました。すると、S君からは意外な答えが返ってきたのです。S君の話は次のようなものでした。

「僕は、○○という資格にチャレンジしたいと考えています。今している仕事には直接関係はない資格ですが、個人的な目標として頑張って挑戦したいんです」「でもこの資格は、取得までに時間もかかるし勉強も必要なので夜は資格学校に通わなければいけません。勤務シフトのことなどもありますし、この資格は僕個人の気持ちだけで受験するのは難しいんです」「これまでも配属先の課長には相談してきましたが、この話をすると『会社の仕事と関係ないのに、勝手を言うな』『今の仕事を頑張れば、その資格じゃなくても学べることは沢山あるだろう』って言われてきました」

話しているときのS君の表情はとても暗かったそうです。T課長はS君の話を最後まで聴き、その場で「私がサポートしてあげるから、安心しなさい!」と即答したそうです。T課長のまさかの返答にS君は驚きと興奮を隠せなかったといいます。

次の日、驚くようなことが起こりました。なんと、S君の勤務態度と表情が一変したのです。どの課長もそんなS君を見て大変驚き、T課長に「S君に何があったのか?」「いったいどんな方法を使ったのか?」と、こぞって質問に来たとのことでした。

組織として、社員の人間的成長に対してどのような姿勢でいるかを明確にする

T課長は私にこう教えてくれました。「延堂さん、S君の勤務態度は、あれは確かに問題がありますよ。でもS君はきっと会社から人間として扱われていないような感覚を持っていたんじゃないかと思うんです」「これまでの私たちはS君に成長を求めましたが、自分たちの都合のいいように成長してくれと要求していたんです。本人の成長したい方向を無視していた」「彼は私たちの道具ではないんですよ、彼は人間なんです。彼が成長したいと思う方向に成長するのを助け、それがすぐにではなくても、会社や仕事にもリンクできるようにしてあげる。それも私たちの役目のひとつですよ」「S君の取りたい資格は、確かに今の仕事とは直接関係がないかもしれませんが、学ぼうとする姿勢、主体的な行動、チャレンジ精神、などは彼の財産になるだけでなく、彼を通して会社の財産にもなるんです」

T課長は素晴らしい成長哲学を持っていますね。社員が成長する組織の共通点には、このT課長の事例のような共通点があります。それは、「社員が学びたい成長したいという関心事に対して支援をするとき、制限や条件を付けない」というものです。

人の成長目標は、評価に反映させない

私は組織内で社員に目標設定を行う場合、仕事上の目標設定だけではなく、自己成長のための成長目標も設定してもらうようにしています。

そして、私はあえて「業績や人事などの評価には反映させないでください」「成長目標の内容は、公私の区別なく設定してください」と強く念押しをしています。あくまで自己成長のために取り組むもの、その目標を皆で共有化し組織や仲間同士で助け合うための取り組みとして行うのです。

ある人は成長目標の目標設定シートに「今月はリーダーシップに関するビジネス書を5冊読破する」と書いていました。ほかにも仕事とは関係のない「コーヒーバリスタの資格を取得する」と書いた人もいます。中には「毎日玄関掃除をする」とか「今年のお盆は、遠くにある実家のお墓参りに行く」と書いた人もいました。

「お盆にお墓参りに行く」と書いた人に、私が後日達成できたかどうかを確認したところ、「長年行けていなかった遠方のお墓参りに、今年は家族で行くことができました。お盆期間は職場も繁忙期で忙しかったのに、皆が私の目標達成のために協力してくれたんです。仲間には感謝しかありません!」と嬉しそうに答えてくれました。

成長目標は、自己成長を支援するための取り組みです。達成未達成も含めて各自の勉強であり責任でもあります。そして、助け合える組織の文化をつくる練習の場でもあるのです。


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延堂溝壑(えんどう こうがく)

本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。

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