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報連相でやりとりされる情報には「事実情報」と「意味情報」がある

2018年10月22日更新

報連相でやりとりされる情報には「事実情報」と「意味情報」がある

仕事ができる人は、情報を単なる情報とは見ていません。できる人は情報を「事実情報」と、その事実情報を受け取った人が各々に意味づけをしている「意味情報」があることを理解して報連相、または仕事をしています。

「事実情報」と「意味情報」

報連相はいずれも情報のやりとりで成り立っています。私たちは、日頃連絡をとりあったり、相談しながら仕事をしていますが、そこでやりとりされている情報には、「事実情報」と「意味情報」があります。

これが混合し融合しているのが現実の情報です。客観的な事実情報も大切ですし、その人が事実情報をどのように意味づけているか、という意味情報も重要です。

報連相の話になると、人はつい「どのように報連相をすればよいのか」という、やり方の方に思考が直行してしまいがちです。しかし、報連相はやり方だけの問題ではありません。その中身も問われているのです。

中身とは情報のことですが、この情報には「客観的な事実の側面」があり、もう一つの側面には「そこに関わる人が、その事実をどのように意味づけているのか」という面があります。発信する人、受信する人、いずれも自己がその内容を意味づけていることを、理解してやり取りしているのが、できる人の報連相です。

相手がどのように意味づけるかは、相手のすることであり、こちらでは操作ができません。こちらの意味するところとはまったく違う意味づけを、相手がしている可能性もあるのです。

このことをわかってやり取りするとなれば、相手がどのように受け止めているのか、確認をこまめにとることも必要であると気がつきます。

「意味情報」が仕事の成果を大きく左右する

たとえば、講演会場で講師の机の上にある水差しには、水がどのくらい入っていますか。客観的に測定しようと思えば可能です。500mlとすれば、誰が測っても大差はありません。連絡は正しく速く、とはこういう事実情報のことがイメージされていたと思います。

ところで、この水差しの水を見たときに、Aさんは「まだ半分ある」と見ますし、一方Bさんは「もう半分しかない」と見ます。まだ半分あると見ればとりたてて連絡の必要も感じないでしょう。もう半分しかないと見れば総務の人に電話をして、「次の小休憩のタイミングで、先生の水差しに氷水を補給しておいてください」と連絡もするでしょう。

その状況をどう見たか、見る人が意味づけている。これが意味情報です。私たちの日常的な仕事では、こういう意味情報のやり取りをしていることが多いのではないでしょうか。

よく知られている話があります。靴屋の営業担当者がアフリカの奥地へ市場開拓のために派遣されました。A社の営業社員が行ってみると靴を履いている人がだれもいません。そこで、全然期待できない市場だ、と本社にFAXを送ったのです。

一方、同じ所へ派遣されたB社の人は、革靴を履いている人は一人もいない。だれも履いていないのだから、やりようによっては相当有望な市場だ、と本社へ連絡しました。

この二人の見ている風景(事実情報)は同じですが、二人が発信した内容は違います。意味づけによってこれ程の違いがでるのです。

事例:稲盛和夫氏の行った質の高い情報の意味づけ

情報を受け取る受信者の「意味づけの違い」について、京セラの創業者・稲盛和夫氏の著書から一例を引用します。稲盛さんが、松下幸之助さんの講演を聞かれたときの有名な話です。


「まず思う」

昭和四十年ごろ、私は松下幸之助さんの「ダム式経営」について講演を聴く機会がありました。ダムをつくって常に一定の水量があるような、余裕のある経営をやるべきだということを話されました。

するとひとりの人が、「私もダム式経営に感銘を受ける。しかし、今余裕がないのを、どうすればいいのか、それを教えてほしい」と質問をしました。

松下さんは、「そんな方法は私も知りませんのや。知りませんけれども、余裕がなけりゃいかんと思わないけませんな」と答えられました。そうすると、「全然解答になっていない」とみんなが失笑するのです。しかし、私は強烈な印象を受けたのです。

つまり、松下さんは、「まず思わなかったら、そうはならない」ということを言われたのです。理想に対して、「そうは思うが、現実には難しい」という気持ちが心の中にあっては、ものごとの成就が妨げられると言われたのです。

人は自分が信じてもいないことに、努力できるはずがありません。強烈な願望を描き、心からその実現を信じることが、困難な状況を打開し、ものごとを成就させるのです。

『心を高める、経営を伸ばす』(稲盛和夫著・PHP研究所)より


会場内の人達が聞かれた松下さんの講演は、全く同じ内容です。咳払いまで同じです。しかし、受信者の意味づけは違います。

「松下さんならできようが、ウチらみたいな中小企業では無理や」「お話は結構だが、現実は厳しいで...」これが多いと思います。

しかし、みんなが「できない」というマイナス思考で受けとめているとき、ただ一人稲盛さんだけは「『まず思わなかったら、そうはならない』ということを言われたのです」と、強く深く受け止められました。これは稲盛さんの意味づけです。

できない人は、できない理由を自己正当化するため、「マイナス思考」「手段思考」「依存思考」で情報を意味づけし、「なぜできないのか」を理論立ててしまいます。

しかし、仕事ができる人は、情報を「プラス思考」「目的思考」「自立思考」で意味づけし、どのようにすればいいのかを考え、工夫し続けているのです。

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延堂溝壑(えんどう こうがく)
本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。
なお、本稿は糸藤正士氏に著作権のある『真・報連相』を、著作権者の承認を得て使用している。

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