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組織におけるリーダーとアジテーターの違い

2019年1月29日更新

組織におけるリーダーとアジテーターの違い

良いリーダーは、組織の中でどのような役割を果たしているのでしょうか。リーダーとアジテーターの違いから考えます。

 

組織はリーダーの在り方によって変わる

リーダーとは指導者のことです。指導というと教育的なイメージがあるかもしれませんが、その本質は「進むべき方向を指し示し、導く者」という意味です。組織の強さはリーダーの存在によって大きく変わります。たとえば、これまでパッとしなかった支店が、支店長の交代で見違えるような組織に生まれ変わることがあります。そして、それとはまったく逆のケースもあります。

多くの人は、それをリーダーの専門性や人間性といったザックリとした視点で判断をしていますが、そのような良きリーダーとそうではないリーダーの違いをよくよく観察してみると、具体的な考え方や行動や役割の違いが見えてきます。

 

リーダーとは名ばかり、アジテーターになっていないか

良い組織には良いリーダーの存在がある一方で、そうではない組織にはリーダーとは名ばかりの、組織を蝕む者の存在があります。私はそれをアジテーターと呼んでいます。アジテーターとは、アジテート(扇動)する者のこと。扇動とは、不安や怒りを与えたり、心をかき乱したりして、他者を自分の思うように動かそうとする人物のことです。

アジテーターが指揮をしている組織では、たとえ表面的には成果を残せていても、「人を道具のように使い捨てる」「メンバーの人間関係が希薄」「離職率が高い」「不満や陰口が多い」「精神的に疲れ切っている」「向上心がない」といった、不の状態が蔓延しています。

上記のような組織は、もはやブラック企業ですが、良い組織になり切れていない組織のリーダーには、上記のようなひどい組織とまではいかないまでも、リード(先導)とアジテート(扇動)が入り混じっているケースが多いのです。

 

【リーダーとアジテーターの4つの違い】

1.リーダーは勇気や希望で先導し、アジテーターは恐怖や怒りで扇動する

2.リーダーは問題解決を図り、アジテーターは問題対処に終始する

3.リーダーは共通の仲間をつくり、アジテーターは共通の敵をつくる

4.リーダーは仲間を主役にし、アジテーターは自分を主役にする

 

1.リーダーは勇気や希望で先導し、アジテーターは恐怖や怒りで扇動する

真のリーダーは、メンバーの進むべき方向を、勇気や希望を与えるようなビジョンを伝えて導きます。たとえば、「この仕事は、将来性がある仕事だな」とか「この職場は、自分を成長させてくれる職場だな」とか「この仲間となら、困難な課題も頑張って乗り越えたいと思える」といった具合に、ポジティブな気持ち、温かい感情で、安心して仕事と向き合い前進できるよう人を動かします。それは「動かす」というよりかは「動きたくなる」、といったほうがいいかもしれません。そのようなビジョンを描き、メンバーに示しているのです。

しかし、アジテーターは恐怖心や怒りで人を動かそうとします。それは単に「動かす」というよりも、「意のままにコントロール」しようとする意図があります。たとえば、アジテーターの思うように動かなければ、メンバーには様々なハラスメント(いやがらせ)や制裁が待ち構えています。

人間の行動には、二つの動機があると言われています。ひとつは快を得ようとするもの、もうひとつは不快から逃れようとするもの。リーダーの先導は、快を得ようとする動機が備わっているのに対して、アジテーターの扇動は、不快から逃れようとする動機が備わっているのです。

 

失敗が許されない組織

アジテーターが指揮をとる組織では、基本的に失敗は許されません。失敗をするとそのメンバーには制裁が待っています。そのため、メンバーは仕事と向き合うのではなく、アジテーターの顔色をうかがって仕事を行うことになります。

リーダーは、失敗をメンバー個人にだけ押し付けるようなことはしません。メンバーの失敗は、リーダーである自分の責任であると捉えます。そのことについて、経営の神様と言われた松下幸之助氏は、次のような言葉を残しておられます。

 

長たるものは、その判断をするにあたって、最終的には自分一人の責任においてこれをしなければなりません。いくら大勢で決めたからといって、一度それを採用したからには、すべての責任をみずからが負うのがほんとうです。「それは私の責任です」ということが言い切れてこそ、責任者たり得るわけです。

『社員心得帖』(松下幸之助 PHP研究所)

 

上記の幸之助さんのお話は、「会議の場において決まったことは、皆で決めたことでも、最終的には長(リーダー)の責任である」というエピソードによって語られているものですが、私はこのことは会議の決定事項だけに当てはまるものではないと感じています。

仕事にしても何事にしても、結果に失敗はつきものです。失敗が許されないのではなく、失敗をどのようにリカバリーするのか、その失敗から何を学び自分たちの成長へとつなげるのか。そこに組織の存在と、リーダーの役割が求められます。真のリーダーは、組織の失敗を受け止め、糧にする姿勢を持っているのです。

 

次回は、【リーダーとアジテーターの違い】について「2.リーダーは問題解決を図り、アジテーターは問題対処をする」を解説いたします。


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延堂溝壑(えんどう こうがく)

本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。

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