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人事担当者必読! データと対話で職場を変える技術「サーベイ・フィードバック」とは?

人事担当者必読! データと対話で職場を変える技術「サーベイ・フィードバック」とは?

(2020年3月23日更新)

 
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チームや組織を変えたい現場マネジャー、人事担当者必読! 勘・経験・思い込みに頼らず、データの力で部下と職場を立て直す技術「サーベイ・フィードバック」とは? 中原 淳著『サーベイ・フィードバック入門』(PHP研究所)より、ご紹介します。

 

調査・データを用いて行う「職場ぐるみの組織開発」

「サーベイ・フィードバック」とは、組織で行われたサーベイ(組織調査)を通じて得られた「データ」を、現場のメンバーに自分たちの姿を映し出す「鏡」のように返して(フィードバックして)、それによってチームでの対話を生み出し、自分たちのチームの未来を決めてもらう技術です。

近年、HRテック(Human Resource Technology:人事・組織課題の問題解決を行うテクノロジーのこと)やエンゲージメント・サーベイ(Engagement Survey:働きやすさや会社への貢献意欲など、従業員が会社に対して持っている感情を定期的に測定する組織調査)の流行などによって、多くの会社に導入されつつある手法です。

しかし、サーベイ・フィードバックの歴史は、決して新しいものではありません。その歴史は古く、1950 年代にはすでに存在していた手法です。サーベイ・フィードバックは、主に組織開発(組織をいかにWork させ、成果をあげるかを論じる学問領域)や人材開発(個人の能力をいかに高めて、成果をあげるかを論じる学問領域)という実践領域のなかで用いられ、多くの企業で長いあいだ、効果的な職場づくり、人づくりの手段として用いられてきました。

 

サーベイ・フィードバックの3つのステップ

サーベイ・フィードバックでは、サーベイを通じて現場を変革するために、通常、次の3つのステップを踏みます(注1)。

 


 

【サーベイ・フィードバックの概念図】

サーベイ・フィードバックの概念図

 

【第1フェイズ】サーベイの実施

(1)「見える化」……サーベイを通して、普段は見つめていないチームや組織の課題を「可視化」する

 

【第2フェイズ】フィードバック・ミーティングの開催

(2)「ガチ対話」……見える化した組織的課題に、チーム・関係者全員で向き合い、その問題の解決・解消をめざして話し合う

 

(3)「未来づくり」……これから自分たちの組織・チームをどうしていくかの「未来」を、当事者たちが「自分ごと」として決め、アクションプランをつくる

 


 

第1フェイズの「見える化」は、「サーベイ」そのものです。第2フェイズの「ガチ対話」と「未来づくり」は、合わせて別の言葉で「フィードバック・ミーティング」と呼ばれることもあります。

フィードバックとは、ここでは「サーベイを通じて職場の現状をデータにまとめて、それを職場のメンバーに返すこと」をいいます。職場のメンバーにデータを返す際、通常それは、職場のメンバー全員で集まるミーティング形式で行われることが多いものです。よって後者2つのプロセスを、「フィードバック・ミーティング」と呼ぶようになりました。

 

(注1)実はこの3ステップは、サーベイ・フィードバックに限らず、あらゆる組織開発の基礎的なステップであると筆者が考えているものです。筆者が中村和彦先生と著した『組織開発の探究』では、組織開発の歴史をひもとき、組織開発が、このような3ステップから記述できることを論じました。

中原淳+中村和彦(2018)『組織開発の探究─理論に学び、実践に活かす』ダイヤモンド社

 

「見える化」だけでは効果があがらない

最近、流行しているエンゲージメント・サーベイや、一部のHR テックが追求しているサーベイにおいては、サーベイ・フィードバックの3つのステップの部分のうち、第1フェイズの「見える化」ばかりにスポットを当てられる傾向があります。Webやスマホなどを用いて、いかに簡単にサーベイを行うか。得られたデータに対してAIなどを用いて、いかに高度な分析・モデリングを行うか。また、いかにスマートなインターフェースでデータをヴィジュアライズできるか、といった話題ばかりが人々の関心になっている現状に、筆者は「強い危機感」を抱いています。

それは、サーベイ・フィードバックは、「見える化」だけではまったく効果があがらないということです。「見える化」は、組織づくりや人づくりの「はじまり」であって「終わり」ではありません。

むしろ、「見える化」のあとに、確かな「ガチ対話」を導き、「未来づくり」にもしっかりと焦点を当てなければ、サーベイを現場の変化につなげることはできないのです。すなわち、

 

 見える化されたデータが、「現場」を変えるわけではありません。

「データ」に現場の人々が向き合い「対話」してこそ、現場が変わるのです。

 

したがって、筆者の目から見ると、サーベイ・フィードバックの3つのプロセスのうち「見える化」だけにスポットライトが当たることは、「現場を変えるのは誰なのか?」という根本的な問いへの無理解から生じていることのように感じます。こうした無理解は「テクノロジー至上主義」に堕しやすいので注意が必要です。

 

サーベイ・フィードバックが現代の組織に必要な「2つの理由」

サーベイ・フィードバックを学ぶ理由としては、もちろん最新テクノロジーを駆使したHR テック系のサービスが流行っているからということもありますが、それだけが注目される背景であると考えるのは、やや「浅薄な理解」といわざるをえません。

サーベイ・フィードバックが注目される社会背景には、現代社会において会社・組織を取りまく状況が急速に変化・悪化していることがあげられます。「現代社会」や「社会背景」という言葉が出てきて、一瞬いぶかしく思われた方もいるかもしれません。しかし、一見、「遠回り」のように見えるこのような「背景」を押さえておくことが、のちのちサーベイ・フィードバックの本質を理解することに役立つと思います。

 

筆者が思うに、現代の組織は、

1.多様化する職場メンバーをマネジメントしなければならないこと

2.慢性的な人手不足のなか、社員のエンゲージメントを高めて離職防止を図り、生産性を高めたい

という2つの要因から、サーベイ・フィードバックを求めているように思います。つまり、組織の状況やコンディションを常にサーベイによって把握して、これらに対する効果的な施策を打っていかなければならないのです。

 

 

サーベイ・フィードバック入門 中原淳著

『サーベイ・フィードバック入門』

勘・経験・思い込みに頼らず、データの力で部下と職場を立て直す! 最新科学に基づく「サーベイ・フィードバック型組織開発」の教科書。チームや組織を変えたい現場マネジャー、人事担当者必読!

 

フィードバック入門

 

【著者紹介】

中原 淳(なかはら・じゅん)

立教大学 経営学部 教授(人材開発・組織開発)。立教大学大学院 経営学研究科 経営学専攻 リーダーシップ開発コース主査。立教大学経営学部リーダーシップ研究所 副所長。

1975年、北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等をへて、2018年より現職。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、組織開発について研究している。

著書に、『職場学習論』『経営学習論』(ともに東京大学出版会)、『組織開発の探究』(中村和彦氏との共著、ダイヤモンド社)、『残業学』(パーソル総合研究所との共著、光文社新書)、『フィードバック入門』『実践!フィードバック』(ともにPHP研究所)など多数。


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