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上司の問いかけが部下を成長させる

上司の問いかけが部下を成長させる

(2020年4月27日更新)

 
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「問い」には大きな力があります。部下を育てるのが上手なリーダーは、適切な問いを的確なタイミングで相手に投げかけることができます。

本稿では、意欲と主体性を引き出し、人の成長を促進するような問いかけについて考えてまいります。

 

人材育成の達人の問いかけ

松下幸之助の口癖の一つが、「君、どない思う(どう思う)?」でありました。小学校を4年で中退して商売の道に入ったため、学校教育をまともに受けることのできなかった幸之助には、すべての人が師(先生)に見えました。だから、頻繁に周囲の人の意見を求めて衆知を集め、それを意思決定の判断材料にしていたのです。

一方、問いかけられる側の部下たちは、その都度深く考えるようになり、課題発見・形成力が高まっていきました。何よりも、最高経営責任者である幸之助から意見を求められることが励みになり、「もっと喜んでもらえるような提案や情報を提供しよう」と前向きなエネルギーが高まっていきました。

幸之助は人材育成の達人と言われましたが、問いかけによって相手の可能性を開花させた「名コーチ」でもあったのです。

 

人を育てる問いかけとは?

相手の問題意識を高める簡単な問いかけの仕方があります。それは、「どうしたい(どうなりたい)?」という問いと、「それに対して現状はどうなっている?」という問いをセットで投げかけることです。

例えば、部下に「君は3年後、どんなビジネスパーソンになりたい?」という問いかけをした時、「デジタルマーケティングの専門家になりたいです」という答えが返ってきたら、すかさず「デジタルマーケティングの専門家になりたいんだね。それに対して、現状はどうなっている?」と問いの深堀りをするのです。その結果、「知識が不足しているので、勉強しないといけません」とか、「今でもそこそこのレベルですが、それを維持するために、新しい情報をインプットし続ける必要があります」といった気づきが誘発されるでしょう。

この質問の仕方は、コーチングのGROWモデル(※1)のフレームワークをヒントにしています。Goal(ありたい姿)とReality(現状)の間に存在するギャップを見える化することで、今何をしなければいけないかに気づかせ、行動変容を期待するものです。

相手に対して、このような問いを投げかけることで、長期的・俯瞰的・客観的に自らを見つめることができ、意識と行動の変容が期待されるでしょう。

 

自分に対する問い

一方、自分と向き合って内省をする際にも、問いはさまざまな気づきを提供してくれます。ただし、内省する際には、「なぜ」という問いはなるべく使わないほうが良いでしょう。

組織心理学の研究によると、「なぜ」という問いに対して自分が考え出す理由が正しくない場合が多く、誤った自己認知につながる可能性があるとされています。また、「なぜ」という自問が「過度の自責の考え方(うまくいかない原因はすべて自分のせいだ)」を誘発し、ネガティブな思考パターンに陥ってしまうと言われています。

では、「なぜ」ではなくどんな問いを内省に使えばいいのでしょうか。組織心理学者のターシャ・ユーリックは、有効な問いについて次のように述べています。

「生産的な自己洞察を増やし、非生産的な堂々めぐりを減らすためには、『なぜ』ではなく『何』を問いかけるべきだ。『何』という問いは、客観性と未来志向を保つ一助となり、新たな洞察に基づいて行動を起こす後押しとなる(※2)」

例えば、「なぜ、うまくいかないのか」という問いよりも「うまくいくためには何をする必要があるだろうか」という問いの方が、前進するための前向きなエネルギーを生み出しやすくなるでしょう。

 

相手に対する問いであれ、自分に対する問いであれ、いずれも思考の拡張とさまざまな気づきにつながることが脳科学的にも証明されています。人を育てる立場にある人は、相手の成長のため、また自身の成長のため、問いを多用することをお奨めいたします。

 

(※1)Goal,Reality,Resource,Options,Willの頭文字を取ってGROWモデルと呼ばれる

(※2)出典:『セルフ・アウェアネス』ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 編(ダイヤモンド社)

 

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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