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課長が取り組むべき組織ミッション作成のポイント

2021年1月14日更新

課長が取り組むべき組織ミッション作成のポイント

課長には、ミッション(存在意義)とビジョン(将来像)で自らのチームに方向性を示し、メンバーの結束を高めることが求められます。今回は、課長の昇格研修でぜひ教えたい、ミッションの意味や役割、ミッションステートメント作成のポイントをご紹介します。

INDEX

方向性=「ミッション」「ビジョン」を明確に示す

人は誰しも進むべき方向が見えなければ戸惑います。自分が何をなすべきかがわからず、課題を具体的に把握することができないからです。
登山を例にあげてみましょう。登っているときに道に迷って目的地を見失うと、どの向きに進んでいいのかがわからなくなり、その場に立ち尽くすしかありません。目的地が明確であってこそ、自ずと進むべき道がわかり、歩きつづけることに対する意欲と喜びが湧いてくるのです。
このように人間は目的や目標、すなわち方向性が明らかになれば挑戦意欲が高まり、主体的に行動したり、積極的に物事を考えたりするようになる特性をもっている、ということができます。
この点から、課長が取り組むべき強いチーム・組織づくりについて考えると、まずリーダーとしてなすべきは方向性を示すことだということが見えてきます。そのチーム・組織の進む方向を、メンバーに明確にわかりやすく、そして具体的に伝えることが重要です。
その方向とは、チーム・組織の「ミッション(存在意義)」であり、「ビジョン(将来像)」です。この2つは極めて重要で、それらがあるかないか、また明示できるかどうかによって、チーム・組織のその後が決まるといえます。ここでは「ミッション」について、詳しく解説します。

企業理念がすべての源

ミッションとは、組織の果たすべき役割や使命、そして存在意義のことです。どういうことを、どのように、何のために、誰のために行うのか。それを明確にすることの重要性はいうまでもないでしょう。
会社には、会社としてのいわゆる企業理念や企業ミッションがあり、それを受けて、各部、課、係という単位にまたその組織ごとの役割、すなわち「組織ミッション」があります。
会社としての理念やミッションは企業戦略の原点です。一方、組織ミッションは各組織の事業戦略や計画、また組織運営管理のバックボーンとなるもので、会社という大きな単位から部、課、係、そして個人という小さな単位に至るまで、各々がそれぞれの業務に応じてもっているものです。その内容は、会社から個人という流れで順に細分化・具体化していきますが、もちろんいずれもが、最上位に位置する企業理念にもとづいています。

組織のミッション

企業理念や企業ミッションというのは企業の果たすべき役割や存在意義であり、その会社の業務は大小に関わらず、すべてこれにもとづいています。したがって、その会社の社員は、全員がその内容を正しく理解し、納得・共感・共有し、行動指針としているのが、本来あるべき姿です。 先に述べたように、企業理念や企業ミッションを受けて、各部、課、係という経営組織体にも組織ミッションがあります。そして、そうした組織ミッションを社内に徹底し、また外部に明示することによって、経営目標、経営戦略・戦術などに一貫性をもたせることができるようになるわけです。こうしたことが実践されているチーム・組織には、ぶれがありません。確固たる根幹があるからこそ、内外の環境変化にも柔軟に対応できるのです。

組織ミッションを組織の内外に徹底するために

ひとくちに「組織ミッションの徹底」といっても、実践はなかなか難しいものです。ここではそのポイントを3つあげましょう。

・相手には、1000%の思いで伝える
・繰り返し繰り返し、相手に語りかける機会をつくる
・文章(ミッションステートメント)にする

伝達事項というものは、発信元から先へ先へと遠く流れていくに従って、どうしても内容が薄まってしまいます。それはある程度しかたのないことです。「1000%の思いで」というのは、先の先に100%を伝えるために、発信時の濃度をあげようという発想です。「発信元:1000%⇒ 800%⇒ …… 400%⇒最後の受け取り手100%」というイメージです。
「繰り返し繰り返し」は文字どおりです。何度も語りかけることによって、相手の中に蓄積し、定着されていく効果をねらうものです。
「文章(ミッションステートメント)にする」は、明文化して自身やメンバーの確認・認識の共有に役立てようというものです。この点については、少し詳しく見ていきましょう。

文章(ミッションステートメント)にする

ミッションステートメント作成

組織ミッションに限らず、日常生活においても、「わかっているつもりでいたのに、文字にするとなると、どう書いたらいいかわからない」といった経験は誰にもあることでしょう。頭の中では100%理解していたつもりでも、いざ文章化となると言葉が出てこない。この言葉か、あの言い回しか、と模索するなかで、自分の理解がいかに不十分で曖昧だったかに気づかされるのです。
組織の目的、ミッションといったものは、ことにこの状況に陥りがちだといえるでしょう。それでいて業務の根幹を成す、極めて重要なものです。チーム・組織のリーダーである自分自身はもとより、チーム・組織のメンバーがそれぞれに曖昧な理解にとどまっていたのではチーム・組織がまとまりに欠けるのは当然で、業務遂行に支障が出る可能性もあります。一方、文章化されていれば、それぞれが明確にイメージすることができます。自分自身、メンバー間、そして社内において共通の認識をもつために、文章化という作業が重要なのです。
このようにチーム・組織の役割、存在意義を文章化することを「ミッションステートメント」と呼びます。
ミッションステートメントは業務内容(何をするか)を書くのではなく、「組織活動を通じて、何を実現しようとしているのか」、あるいは「誰から何を期待され、どのような貢献ができるか」を基準にして作成すべきものです。

【ミッションとは】
チーム・組織の果たすべき役割や使命、存在意義。
明確にするには、ミッションステートメントの作成が有効

ミッションステートメント作成の演習

以下にあげるのは、ミッションステートメントの基本形です。

ミッションステートメントの作成

【演習】
とある企業の本社ビル1階、正面玄関にあるカウンターには受付の女性社員がいます。
この受付担当者について、あなたはどのようなミッションステートメントを作成しますか。

作成する前に、3つのポイントで考えを整理しましょう

(1) 誰に(貢献対象)
(2)どんなことを通じて(業務内容)
(3)どんな貢献ができるか(貢献内容)

さて、どのようなミッションステートメントができあがったでしょうか。
繰り返しになりますが、ここで注意すべきは、ミッションステートメントは「業務内容」を書くものではないという点です。そのために、考えの整理が必要となるわけです。
次に回答例を示しました。この問題の答えも人それぞれで多種多様あると考えられますので、あくまで参考としてです。また、誤答の例もあわせて確認してください。

回答例

  • 名指し人や該当部署への速やかな連絡や案内などを通じて、来訪者の用件が迅速に果たされるよう努め、お客様満足の向上に貢献する
  • さわやかな表情・態度と的確な言葉づかいで来訪者に好印象を与えることにより、会社の信頼感とイメージの向上に寄与する
  • アポイントなしの来訪者や不審者に対して適切に対応することで、社員が安心して業務に専念できる環境の維持と、会社の安全維持に貢献する

誤答例

  • 来訪者がスムーズにその目的を達せるよう、名指し人や部署との迅速・適切な連絡・案内を行う
    →内容が「受付業務」そのものであり、ミッションステートメントになっていない

課長としてまず最初に求められるのが、メンバーに方向性を示すこと。昇格研修などの機会に、ミッションの意味と役割を理解させたいものです。

出典:PHP通信ゼミナール「課長職マネジメント革新コース」

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芦刈法明(あしかり・のりあき)
1979年、(株)PHP研究所入社。書籍・雑誌などの普及活動に携わる。89年から経営開発事業本部にて企業・団体への研修普及および研修企画開発を担当。PHPゼミナール主幹講師。2017年、定年により(株)PHP研究所を退職。現在、PHPゼミナール講師。

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