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部下が職場の報連相のルールを守らない~報連相Q&A

2018年8月 6日更新

部下が職場の報連相のルールを守らない~報連相Q&A

7名の部下のなかに、一部、報連相のルールを守らない人がいて困っているという上司の方のご相談。報連相がスムーズに行われないのは、果たして部下の責任なのでしょうか。

【質問】
私には7名の部下がいるのですが、一部の部下がなかなか報連相を行ってくれません。できれば事前に報連相をしてほしいような件も、勝手に進めてあとで事後報告をしてきたり、ときには私を飛ばして直接上司に飛び越し報告をしたりします。
報連相のルールをつくり、徹底するよう働きかけてみたのですが、ルールを守ってほしい部下に限ってなかなか守ってくれません。
最近は報連相のルールを守らないことが原因で、職場の雰囲気も悪化しているように感じます。何か良い対処方法はないでしょうか?

【解説】
部下が飛び越し報告をしたり、報連相のルールを守ってくれないというのは厳しいですね。原因はどこにあるのでしょう。
マネジメント層を対象とした報連相研修をしていると、今回の質問者の方と同じように、報連相のやり方がまずい部下について、悩んでいらっしゃる方が多くいます。
しかしその一方で、できる部下に助けられて、部下に満足している人もいます。ときどきですが「部下運がいい」「部下運が悪い」という言葉を耳にします。部下の能力や報連相の良し悪しは、くじ運のよう「運」で決まってしまうものなのでしょうか。

事例「ある銀行の支店長研修でのこと」

これは、ある銀行で支店長から課長クラスまで、階層別に報連相研修を実施したときの話です。研修内で行った、各支店長同士の討議の中で、とある支店長(仮に、A支店長とします)が次のような発言をしていました。
A支店長「今度の支店は、どうもいま一つ活性化していない。次長以下課長連中に何となく活気がない。会議では発言が少ないし、リスクを冒すような言動も見られない。こちらが指名すると意見は出るが、もっと積極的に発言や意見交換を行ってほしいのだが......」。
その後、ひとわたり支店長研修が終わって、次の層である課長研修に移りました。するとその課長研修の中に、先日のA支店長のところの課長が複数名参加していたのです。

そこで、先日A支店長が言っていた「支店の活気」について、その支店の課長の皆さんお話を聞いていますと、このような返答がありました。

「たしかに店長の言われるように、うちの支店は今のところ若干消極的なムードになっているかもしれん。だけど、こうなったのはあの支店長が来てからですよ。あの支店長が来られてからお通夜みたいになったんです。それまでは私たちも明るく活発にやっていました。まあ、あと一年半ぐらいで支店長も入れ替わりますから、ご心配なく(笑)」。

報連相が悪いのは上司にも原因がある

銀行の場合には必ずと言っていいほど、3~4年で支店長は転勤します。ですから、職場の活気や人間関係などはどの支店長のときにどうだったのか非常にはっきりとしてきます。
支店の風土や行員さんの働きは支店長次第といえる部分もあり、支店長が替われば支店のムードは一変する、ということもよくあります。
何とかこの支店を活性化したい、この沈滞ムードを打ち破りたい、というA支店長の努力も、部下を改革の対象物と見ていろいろ手を打つことだけでは成功しません。もしかしたら、その重要原因が自分にあるかもわからないと、自分自身も含めて原因を考えてみないと真の解決には至らないでしょう。
銀行ほど転勤のない企業の場合には、管理職者自身が自己変革していかないと、部下の不幸はより深刻になるおそれがあります。
「あの部下は報連相が下手で、ミスも多い」「この部下はさっぱり動いてくれない」と言ってみても、もしかしたら自分の下にいるときの彼ら彼女らがそうなのであって、自分以外のもっと優秀な管理職者がもし自分のポジションについていたら、部下の動きは変わっている、ということは十分ありえます。
部下を見ている、職場を見ているといっても、客観的な部下を見ているのではありません。あくまでも自分の影響下にある部下を見ているのです。ビジネスの古くからある名言に「企業人にとって、最大の環境は上役なり」という言葉があります。部下の報連相が良いとか悪いとかいってみても、そうさせているのは上司自身でもあるのです。

原因分析が正しくできているか?

問題が「手段系の領域」の場合には、原因・結果が自分の外にあることが多いものです。例えば、車の調子が悪いのはエンジンに原因あり、というわけです。
しかしビジネスにおける問題には、上記のような手段の領域の問題だけではなく、「人間系の領域」による問題も多くあります。そしてそのような人間系の領域の問題には、相手だけでなく上司の存在も大きな関わりをもっています。
ところが、いざ原因分析となると「自分にも原因あり」とする人はごく少数です。多くの人は、知らず知らずのうちに自分のことを正当化したり棚上げした状態で「周りに原因がある」とか「相手が悪いから」と、考えてしまいがちです。
その一方で、何でもかんでも「私が悪かった」と簡単に言ってしまう人もいます。責任感が強いと言えば聞こえはいいかもしれませんが、これはこれで安易な態度であり、真の原因追及にも本質的な問題解決にも至りません。

できる上司には「自己の客観視」という視点が必要

アメリカの経営学者フォレットは、半世紀以上も前にこのことを「サーキュラーレスポンス」(円環的対応)という概念でわれわれに教えてくれています。
フォレットはテニスを例にして説明しています。相手の球は、半分は自分のサーブいかんによるということです。そしてその返球は、半分は相手の打ち返してきた球によって決まるのです。相手を直接左右することはできません、できるのは自分の打つ球を変えることだけです。

「自分は決して相手と戦うことはできないのであって、われわれは常に相手プラス自分と戦っているのだ」(三戸公・榎本世彦著『フォレット』同文館より)

やはり、自分自身を含めた全体状況をとらえないと、真の問題解決には至らないということでしょう。できる上司には「自己の客観視」という視点が必要です。

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延堂溝壑(えんどう こうがく)
本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。

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