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AI時代突入を前に若手社員の5つの「性格スキル」をどう育成する?

AI時代突入を前に若手社員の5つの「性格スキル」をどう育成する?

(2019年1月28日更新)

 
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本格的なAI時代への突入を前に、今、注目を集めているのが「人間性の豊かな人、人格的に優れた人をいかに育てるか」という点です。特に、若手社員教育では「性格スキル」をどう育成するのかを考えておく必要があります。

 

AIに取って代わられる仕事、生き残る仕事

人工知能=AIの開発・実用化が進んでいます。今後、従来人が行ってきた仕事が徐々にAIに置き換わるなどして、産業構造が大きく変化すると予想されています。さまざまな業務において、人とコンピュータがどのように役割を分担し、共存していくのかが模索されているのです。

具体的には、どの職業がAIに取って代わられる可能性があるのか、あるいは今後も人が行っていくのかについて、さまざまな予測がなされています。なかでも野村総合研究所が、国内の601の職種を分析した結果がよく知られているので、かいつまんで紹介しておきましょう。まずAIが人に代わって行うようになるとされる職種として、一般経理事務員、受付係、クリーニング店員、建設作業員、自動車組立工、塗装工、スーパー店員、タクシー運転手、司法書士、公認会計士、弁理士、社会保険労務士などが挙げられています。今後も人が行っていく、人でなければできない職種としては、アートディレクター、インテリアコーディネーター、メイクアップアーティスト、ゲームクリエイター、テレビタレント、ミュージシャン、漫画家、美容師、保育士、経営コンサルタント、産業カウンセラー、中小企業診断士などが挙げられています。

両者を比較すると、AIに取って代わられるのは「課題解決型の業務」であり、人が引き続き行うのは「目標達成型の業務」といってもいいでしょう。過去のデータや実績に基づいて何らかの課題を解決していく仕事なのか、新しい目標を設定して無から有を生み出していく仕事なのか、という分け方です。AIといえども、コンピュータが無から有を創造することは難しいと考えられるからです。

 

「なぜ」を追究し、AIが苦手な「目標達成型人材」を育成

AIがこれから各業界に本格的に導入されていくなかで、特に若手社員の育成には注意を払わなければなりません。今後AIでも行えるようになる旧来のスキルを高めても、その能力そのものが無駄になってしまう可能性があるからです。AIに置き換えられない、人でなければできない仕事の取り組み方を身につけ、将来有用な人材を育てていくことが重要です。

上記の分析に基づけば、「目標達成型の業務」が遂行できるようになれば、その人材はAI導入後も活躍できるようになると考えられます。目標達成型の業務を行えるようになるには、まず「目標」そのものを発見する能力が必要です。目標を発見するためには、一つには、「なぜ?」を考える習慣をつけることが重要です。なぜその問題は発生したのか、なぜクレームがたびたび発生するのか、なぜその商品は市場に受け入れられなくなったのか、といったことを考え、追究し、原因を突き止めていくということです。原因は一つではないかもしれません。あるいは原因と思われた事象の奥に、さらに根本的な原因が潜んでいるかもしれません。それをとことん突き詰めていくことで、真の原因が判明します。真の原因が分かれば、問題の発生しない態勢づくり、クレームを未然に防ぐ対策づくり、新たに市場に受け入れられる商品づくり、といった目標を打ち立てることができます。

このように「なぜ?」をとことん追究していく姿勢、思考能力を鍛えていくことで、若手社員の「目標達成能力」は高まっていくでしょう。

 

「日々の創意工夫」がAI時代を生き抜くカギに

もう一つ、おそらくAIには難しいと思われる「仕事への取り組み方」を紹介しておきましょう。職種によっては、毎日「同じ業務」「同じ作業」を繰り返すような仕事があるかもしれません。もちろん、決められたマニュアルがあって、それに従って行わなければならない仕事であれば、結果的に「同じ業務」「同じ作業」を反復しなければならない面もあるでしょう。このような仕事は、いずれAIに取って代わられる可能性もあります。

しかし、同じ仕事を繰り返していくなかでも、毎日ほんの少しずつでも改良を加えることによって、より品質を高めたり、よりスピードを速めたり、より効率を高めたりしていくことはできます。既存の技術を転用して、新しい商品を開発できるかもしれません。このように「日々、創意工夫」していくことができるのは、人ならではの能力だといえます。たとえ1日に1つでも、何か新しいことを発見したり、工夫したりしていく習慣をつけることで、AIにはできない仕事ができるようになるわけです。こうした習慣を若手社員につけさせるようにすれば、やがてAI時代に生き残っていける会社へと成長できるはずです。

日々、創意工夫を行うためには、例えば一日の仕事を終えたあと、毎日業務日誌をつけるなどして、気づいたことを記録する習慣をつける方法もあります。また折々に、常に創意工夫を重ねる大切さを伝え、若手社員の意識に植えつけていくことも大切です。AI時代においても、若手社員が「人にしか思いつかない新しい工夫」を行い、日々改善を積み重ねることで、人ならではの役割を果たしていけるのではないでしょうか。

 

AI時代にこそ求められる「性格スキル」の5つの要素とは

将来、AI時代が本格的に到来したとしても、各種のビジネスにおいて、人対人で交渉が行われる場面がまったくなくなることはないでしょう。事業の種類や規模にもよりますが、人と人とが対面し、信頼関係を結んだうえで取引が進められることは、これから先も多いはずです。人と対面しないインターネットを通じた取引においても、広告の出し方やメールでのやり取り、納品する商品の梱包の仕方なども含めて、そこに「人間性」が垣間見えることがあります。メールの文言一つで相手に不快感を与えることもあれば、反対に、ちょっとした気遣いが伝わってファンになってもらえることもあります。
そこで重視されるのが、人間一人ひとりの「性格スキル」という要素です。米シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授らは、ビジネスパーソンに求められる「性格スキル」を研究しており、その内容は日本の経済産業省でも注目されています。
「性格スキル」は、次の5つの要素で構成されています。
 
(1)開放性=新しい経験に対して好奇心を抱き、前向きに受け入れる傾向のこと
 
(2)まじめさ=責任感が強く、勤勉で、粘り強く、サボったり手を抜いたりしないこと
 
(3)外交性=明るくて、社交性や積極性があること
 
(4)協調性=周囲の人たちとよい人間関係をつくり、快く協力したり相手に合わせたりできること
 
(5)精神的安定性=激昂したり消沈したりすることが少なく、常に穏やかな精神状態をキープできること
 
「性格スキル」を向上させることで、その人の人間性や人格を高めていくことができます。性格のよい人、人間性の豊かな人、人格的に優れた人は、周囲の人たちや取引先からも好かれ、信頼されるようになります。人として信頼されることで、ビジネスパーソンとしての評価が上がり、さらに成長していくことができます。もちろん企業の発展にも直結しています。こうした要素は、AIには求められないものといえるでしょう。
 

「まじめさ」と「協調性」

企業は、マンパワーの底上げを図る意味でも、若手社員や中堅社員に対して、「性格スキル」を向上させるような人材教育を検討していくべきだといえます。人間の基本的な性格は幼少期に形成されるものですが、実は青年期においても、さまざまな経験や学びを通して「性格スキル」を伸ばす可能性が十分にあります。
「性格スキル」の5つの要素の中でも、「まじめさ」と「協調性」は特に重要です。国内のある調査においても、「まじめさ」のポイントが高いと判定された人物は、低い人に比べて高学歴の傾向があり、社会人になってからも実績を残して高収入を得ているという統計が出ています。当たり前ですが、まじめな人は勉強も仕事もサボったりせず、常に努力し、何事も根気よく最後までやり抜きます。それがさまざまな面でよい結果を生み出すのです。
また企業や団体においては、複数の人間が一つの目標に向かって役割を分担したり、協力し合ったりしなければなりません。仕事を高いレベルで遂行していくには、高い「協調性」が必要です。そうした意味で、「まじめさ」と「協調性」が特に重視されるのです。
 

若手・中堅社員の「性格スキル」を高めるには

では、企業の人材育成において、この「性格スキル」は、どのようにすれば高めることができるでしょうか。
一つには「責任ある仕事を任せる」という方法があります。人は誰でも「任される」ことによって責任感が高まり、それをやり遂げようとして精一杯努力するものです。その過程で「まじめさ」が向上していくと考えられます。仕事を任せて結果が出たとき、上司がそれをきちんと認めて評価することも重要です。
また「協調性」を高める方法としては、「転勤」や他の部署への「配置換え」を行なうのも有効でしょう。新しい職場で新たに人間関係を構築しながら、互いに協力して仕事を行なうことで、「協調性」のスキルが向上します。
このように、今後、企業においては、若手・中堅社員の育成を考える際に、「性格スキル」を意図的に高めていくような取り組みに力を入れていくべきでしょう。AIに取って代わられることのない「人間力」を備えた人材が、これからの企業を牽引していくことは間違いありません。
 
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的場正晃(まとば・まさあき)

1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。現在、PHP研究所研修企画部長。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

 


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