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若者をモティベートする「目標設定理論」~元リクルート専務・SPI開発者が教える

若者をモティベートする「目標設定理論」~元リクルート専務・SPI開発者が教える

(2019年6月18日更新)

 
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人間をあるがままにとらえる「個性化」と「活性化」のマネジメントとは? 元リクルート専務、SPI開発者の名著復刊!


26年前に刊行された人材経営論『心理学的経営』は、江副浩正氏のもと、リクルートで活躍し、主に人事測定事業と組織活性化事業を手がけた大沢武志氏(故人)の実務と研究に基づく経営論です。大沢氏は、現在、企業の採用選考で広く利用されている適性検査「SPI」の開発をした人物としても著名です。

このたび、PHP研究所では、本書をプリントオンデマンドで復刊。あわせて電子書籍としてリリースしました。発売後、多くの経営者、人事部門の責任者からご注文が相次ぎ、大きな反響を得ています。

 

大沢武志・心理学的経営
ここでは本書より、その一部を抜粋してご紹介します。
 

若者をモティベートする3つの心理的条件

かつてリクルートという企業集団は、若者が生き生きと仕事をしている「不思議な新人類会社」として注目を浴びたが、その理由の多くを、ハーズバーグの動機づけ要因や、職務充実のための五つの職務次元などのなかに見出すことができるように思う。

一言で言えば自由なマネジメント風土ということになるが、個々人の自由裁量の幅を可能な限り拡げ、しかも多様な能力の要求されるマルティプルな仕事に挑戦できる仕事の環境と風土づくりを実現しえていたことが最も大きな要因といえよう。

その結果が、従業員一人ひとりの内的動機づけを促進し、生き生きとした職場へと結びついたのだと思う。

これらの心理学的経営の知見を背景に、あるとき、若者を仕事に駆り立てる条件は何かと問われて、私は「内的動機づけにとって最も重要な心理的条件」として3つのポイントにまとめたことがある。

それは、まず第1が「自己有能性」、すなわち、仕事を通して自分の効力感を体験できることである。これほど自分の成長欲求を充たすものはない。この裏には挫折感があり、自信の喪失があるが、この種の心理的な葛藤を乗りこえて、自己効力感を体験できるところに、心理的に深い次元での動機づけのメカニズムが成立する。

そして第2が「自己決定性」、これは職務設計の次元でいえば、自律性に該当する。自分の仕事については、自分で考え、自分で計画し、自分でチェックする。自由裁量の幅が大きいだけでなく、自己責任性を伴うことが大事である。そうした機会が日常的な仕事のなかに見出せなければならない。

第3が「社会的承認性」、とくに日本の企業社会の場合、職場の仲間や上司との人間関係が重要な動機づけ要因として意味をもつ。自分の努力、苦労、そして成果が周囲に理解され認められて、社会的承認を実感できることによって、心理的な充足と情緒的な安定が得られる。共同社会、そして視線社会としての日本の企業組織では、無視できない条件である。
 

ただ「一生懸命にやれ」の目標では力にならない

自分の目の前に、目標といえるものが有るかないか、目標がはっきりと意識されているか否か、これが行動への動機づけに大きな違いをもたらすことは説明を要しないほど自明のことである。

しかし、どんな目標がモティベーションにとってより効果的なのか、となると、その解明には行動科学的な研究が必要になってくる。たとえば松井賚夫教授はつぎのような例をよく引き合いに出している。

ある会社の研修会で管理者たちに1ケタの数の足し算を連続3分間できるだけ速くやってもらう。そして、2つのグループに分けて、1つのグループの管理者には、最初の3分間の自分の成績の20パーセント増しのところに線を引いて、これを目標に再び3分間足し算をやってもらう。そして残りのグループには、ただ「できるだけ沢山」やるように指示してやはり3分間の足し算をやってもらう。

この結果は、下図に示される通り、はっきりした目標を与えられたグループの方がただ「できるだけ沢山」といわれたグループよりも明らかに成績がよかったのである。

目標の効果

図1:目標の効果
 

目標は具体的で明確なほど、エネルギーを方向づける力になりやすい。

目標のもつモティベーションへの効果に関連して「目標設定理論」の研究に一貫してとりくんでいる心理学者にエドウィン・ロック(E. A. Locke)がいる。この人は『人間悟性論』を著した17世紀のイギリスの哲学者ジョン・ロックの末裔とのことであるが、かれの実験的研究の成果は大変示唆に富むものが多い。
 

目標は高いほどよいか

目標は明確なほどよいことははっきりしている。「とにかくがんばれ」や「できるだけ沢山」では目標として動機づけの力になりにくいことはすでに述べた通りであるが、やさしい目標よりもむずかしい目標の方が、モティベーションにとって効果的であるという一般法則がどうやら成立しそうである。

やはり、松井教授の実験であるが、大学生の2つのグループに、最初に3分間ごく自然な自分のペースで簡単な足し算の作業を行なわせる。そして、次に1つのグループにはむずかしい目標を与え、もう1つのグループにはやさしい目標を与えて5分間作業を行なわせる。その効果の違いの実験結果を示したのが図2である。

やさしい目標と困難な目標の効果の違い

図2:やさしい目標と困難な目標の効果の違い

 

むずかしい目標を与えられたグループの方がやさしい目標を与えられたグループよりも明らかに作業量が多いことが一目瞭然である。低い目標よりも高い目標、安易な目標よりも困難な目標の方が、一般的にモティベーションが強まり、より大きな成果を生み出すということがいえるようだ。

しかし、このむずかしい、やさしいという目標のレベルは個人の主観的なものさしの上で判断されることなので、そのモティベーションに対する効果は、その目標が個人にどのように受容されるかにかかっているのである。結果の分かりきっているやさしすぎるような目標は何らモティベーションにとって効果をもたないのと同様に、むずかしすぎる目標も、個人の受容範囲を超えて拒否反応を招き、モティベーションに結びつかないことは明らかである。

目標設定理論では、モティベーションにとって最も効果的な目標の水準は個人にとって成否の確率が五分五分のとき、つまり、背伸びをすれば届きそうな目標だといわれている。
 

※本稿は、大沢武志著『心理学的経営~個をあるがままに生かす』より、その一部を抜粋編集したものです。

※本書はプリントオンデマンドで復刊したものです。書店では販売しておりません。
 

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