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新型コロナ禍において新入社員をケアする3つの視点

2020年3月25日更新

新型コロナ禍において新入社員をケアする3つの視点

新型コロナ禍で非常事態とも言える本年の期末・期初。社会全体のイベント自粛ムードのもと、企業における入社関連行事も見直しを迫られています。果たして、そのことが新入社員にどんな影響を与えるのでしょうか。
本稿では、その影響を考察すると同時に、新入社員をケアするための、企業の現場におけるOJTのあり方について提言します。


移行期に必要なイニシエーションを省略する弊害

例年のこの時期は、卒業式、入社式、導入教育など、さまざまな行事が学校や企業で予定されていますが、これらは学生が社会人に移行する際に必ず通らなければならないイニシエーション(通過儀礼)なのです。
キャリア開発の分野では、ある段階から次の段階へ移行する時期を「トランジション」と呼び、人に大きな変化をもたらす重要な局面であるとされています。人生において何回か直面するトランジションの中でも、[学生⇒社会人]の移行はとても重要な局面です。この時期に各種イニシエーションを体験することで、過去を総括し、新たな段階へチャレンジする意欲と自信が内面から湧き上がるのです。
しかし、このトランジションがなくなる、あるいは簡略化されてしまうと、学生意識にピリオドが打たれないまま組織に組み込まれ、助走期間なしにいきなり企業人としてのふるまいが要求されることになります。その結果、戸惑いや不安が交錯し、エンゲージメント(会社や仕事に対する愛着心)やモチベーションの低下、離職者の増大を招くでしょう。そうした事態を未然に防止するためにも、現場での上司、先輩、指導員による新入社員のケアが、今年は特に重要なのです。


新入社員をケアする3つの視点

では、新入社員の戸惑いや不安を払拭し、仕事に対する意欲を高めるためには、どのようなケアをすればいいのでしょうか。そのポイントを以下の3つの視点から述べてみたいと思います。


1.きめこまかいコミュニケーションを

厚生労働省の『平成30年雇用動向調査』によると、離職者の離職理由として上位にランクインしたのが以下の3点でした。

(1)労働条件が悪かった
(2)給料が少なかった
(3)職場の人間関係が好ましくなかった

(1)と(2)は経営マターであり、いかんともしがたいものでありますが、(3)に関しては、現場のOJTで十分に改善することが可能です。
そこで、上司、先輩、指導員の方がたにぜひ実践していただきたいのが、新入社員を毎日観察して変化を把握しておくことです。相手に関心をもち、顔の表情や声のトーンにも意識を向けて傾聴していれば、その人の心理状態を、ある程度把握することができるようになります。そして、相手から話しかけられるのを待つのではなく、こちらからこまめに声をかけ、承認を絶やさないことです。
1on1ミーティングを実施する際は、上司は余裕をもつこと。上司がリラックスした雰囲気を醸し出すことで、新入社員もリラックスして本音を開示しやすくなります。

2.成長実感を与える

パーソル総合研究所の『働く10,000人の成長実態調査』(2017年)では、「働くことを通じた成長を重要だと感じている人」の割合が78.2%に上ることが明らかになりました。そして、その数値は年々高まっているのです。このデータが示すように、最近の若手社員は成長欲求が強く、それが満たされないと離職すると言われています。
したがって、彼らの意欲を高めるためには、こまめに承認して成長実感を与えることが大切です。承認も特定の人からされるのではなく、職場のいろいろな人から承認される状態をつくることです。また、承認の仕方も「成長したね」というあいまいで抽象的なことばかけではなく、具体的なエビデンスを含んだ表現にしないと相手に刺さりません。
さらには、同じ職場に「お手本」となるような先輩がいれば、その存在をうまく利用するのも有効です。「主体的な仕事の進め方をしていると、3年目のAさんみたいになれるよ」というようなフィードバックは、ロールモデルを目指して頑張ろうという動機づけにつながり、新入社員の成長を加速させるでしょう。


3.使命感を与える

仕事には3つの側面(生計をたてる、個性を発揮する、社会的役割を担う)があると言われていますが、若い人たちのモチベーションの源泉になっているのが「社会的役割」なのです。
従って、上司、先輩、指導員の方がたは、仕事の社会的役割を自らのことばで語ると同時に、新入社員に仕事の社会的役割を考えさせるような問いかけをすること。自分たちの仕事は社会に価値を提供し、また社会の人々から求められているという実感を日々の仕事の中でもつことができれば、エンゲージメントが高まり、この会社でこの仕事をがんばろうというポジティブなエネルギーが生み出されるでしょう。

新型コロナ禍という非常事態にあって、本年度は、例年のような手厚い新入社員の受け入れができないかもしれません。でも、新入社員にとって入社一年目は、後にも先にも今年しかない、大切なトランジションです。そのトランジションをうまく通過し、仕事を通じて社会に貢献できるようなプロフェッショナル人材を育てるためにも、現場のOJTを強化することは喫緊の課題と言えるでしょう。


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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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