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パワーハラスメント防止法が成立~法制化で 何が変わるのか?

パワーハラスメント防止法が成立~法制化で 何が変わるのか?

(2019年8月26日更新)

 
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2019(令和元)年5月30日の新聞各紙は、前日の参議院本会議でパワハラ防止関連法案が可決・成立したことを報じました。施行時期は、大企業が2020年4月、中小企業が2022年4月とのことです。

いまや社会問題となっているパワーハラスメント(パワハラ)。その防止の法律が初めてできたことは、この問題の解決・改善に向けて大きな一歩となることでしょう 。そして会社としてこの法律にどう取り組んで行くべきか、考えてみましょう。

 

ハラスメントの包括的防止を明記

法案の正式名称は『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法案』で、「女性活躍推進とパワハラ防止は別のはずでは?」と思った人も少なくないでしょう。実際、法案の本文には、どこにも「パワーハラスメント」とは書かれていません。

しかし、法案を読み進めると、法律等の「等」の中に、新設のパワーハラスメント防止法が含まれていることがわかります。そのパワーハラスメント防止法とは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)の一部改正」として登場します。

さらに最後まで読むと、この法案が、パワーハラスメントだけでなく、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の一部改正による、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、育児・介護休業取得者へのハラスメントなどに対する防止の措置を企業に義務付ける、包括的なハラスメント防止のためのものであることがわかるでしょう。

法案はたいへん読みにくいので、改正後の法律が掲載されたPDF(参議院ホームページ令和元年6月5日)を見ることにします。

 

パワハラの法制化で注目すべきポイントは2つ

今回の法制化で注目すべきポイントは2つあります。

ひとつには、パワーハラスメントに対し、法律上の定義が与えられたことです。パワーハラスメントとは、2001年にクオレ・シー・キューブ代表の岡田康子氏が使いはじめた和製英語ですが、これまでは法律上の定義がなく、紛争時に議論がかみ合わないことが少なくありませんでした。法律上の定義は、

「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」(第30条の2より)

となりました。そして、いわゆる「パワハラ問題」を略して「優越的言動問題」とする記述もみられます(第30条の3)。

次に注目すべきは、「優越的言動問題」の防止と解決に向けて、事業主、国、労働者それぞれの責務が定められたことです。

「企業に防止措置を義務付けただけのゆるい法律だ」という手厳しい報道もありましたが、決してそうとは思いません。国や労働者の責務も定めたのです。以下、三者それぞれの責務について重要ポイントをみていきましょう。

 

事業主の責務:パワーハラスメント対策が事業主の措置義務に

(1)事業主は、(前述の定義)のないよう、労働者からの相談に応じ、必要な体制の整備その他の雇用管理上の措置を講じなくてはならない。(第30条の2より)

→まず相談に応じ、必要な体制の整備その他雇用管理上の措置をとることが大事です。

 

(2)事業主は、労働者が相談を行ったこと又は相談に協力した際に事実を述べたことを理由として、解雇その他の不利益な取り扱いをしてはならない。(第30条の2の2より)

→不利益な取り扱いの禁止が明記されました。

 

(3)事業主は、労働者の関心と理解を深めるために、研修を実施しなければならない。(第30条の3の2より)

 

(4)事業主はその役員も含め、優越的言動問題に対する理解と関心を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。(第30条の3の3より)

→まず、経営者・役員が自らの言動に注意することを促しています。

 

国の責務:国が紛争の調停役に

(1)国は、優越的言動問題に関して、事業主や国民への理解を深めるため、広報活動、啓発活動、その他の措置を講ずるように努めなければならない(第30条の3)

 

(2)国(厚生労働大臣)は、事業主が講ずべき措置等について、必要な指針を定める(30条の2の3)。

→今後、具体的な措置内容が指針として出るということです。

 

(3)都道府県労働局長(国)は、労働者と事業主との間の紛争に関し、当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、必要な助言、指導又は勧告をすることができる(30条の5より)。さらに都道府県労働局長(国)は、当事者の双方又は一方から調停の申請があり、その必要性を認めた場合、紛争調整委員会に調停を行わせるものとする(第36条の6より)。

→当事者の一方からでも求めがあれば、労働局長は指導や勧告に動き、調停を行うことができると明記されました。社内対応に不満を持った当事者が、費用の高額な裁判によらずとも、第三者による調停を求めることができるのです。

 

労働者の責務:言動に注意を払おう

(1)労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に注意を払うとともに、事業主の講ずる措置に協力するように努めなければならない。(第30条の3の4より)

→そうです。従業員も、他の従業員に対する言動に注意を払わなければなりません。

 

以上がパワーハラスメント防止関連法の概要です。

では、会社として、特に人事部として対応すべきことは何でしょうか。次回に続きます。

 

コンプライアンス教材

 


 

星野邦夫(ほしの・くにお)

慶應義塾大学文学部卒。帝人株式会社で初代の企業倫理統括マネージャー。2007年度内閣府「民間企業における公益通報者保護制度その他法令遵守制度の整備推進に関する研究会」委員。2009年より一般社団法人経営倫理実践研究センターで「ハラスメント研究会」を主宰。「パワーハラスメント防止」や「会社員の個人不祥事防止」などをテーマに、企業・団体向け研修を多数実施している。一般社団法人経営倫理実践研究センター上席研究員


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