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中小企業の新卒採用~内定を出す前に確認しておきたいこととは?

中小企業の新卒採用~内定を出す前に確認しておきたいこととは?

(2017年12月 5日更新)

 
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売り手市場の今、多くの中小企業は新卒採用で苦戦を強いられています。内定辞退や早期離職を招かないために、内定を出す前に確認しておきたいことをご紹介します。

 

中小企業は大企業と比べると、新卒者の、特に入社3年間の定着率が低い傾向があります。労働条件などでハンディを負う以上、止むを得ない面はあるのかもしれませんが、採用する以上、しっかり定着させ、戦力となってもらいたいところです。

今回は、内定通知を渡す前に、もう一度考えるべきことをご紹介します。

 

現場で指導する管理職に再確認

中小企業の場合、社長ひとりの判断で採否を決めることがあります。しかし、その学生が入社した後、指導・育成するのは課長や部長です。課長や部長からすると、「育てにくいタイプ」であるのかもしれません。また、中小企業では、大企業のように大規模な配置転換ができません。部課長との人間関係がこじれると、部下が退職していかざるを得なくなることがあります。

私が取材した社員数120人ほどのパソコン周辺機器メーカーでは、内定を出す前に、社長と管理職10人が2時間ほど話し合います。そのポイントは次の事項です。

・入社後、どのような部署でどういう仕事を担当させるか

・いつまでに、どのくらいのレベルにさせるのか

・人材育成の態勢はどのようなものなのか、それは実現可能であるのか

・配属部署で上手くいかなかった場合、ほかの部署へ異動させることはできるか。その場合、どのような仕事をさせるのか

・自分の部下にしたいのか、しなくないのか。それぞれの理由

この会社では、社長と管理職の間で合意がいつまでも得られない場合は内定を出さない、そして管理職が強く反対したときには、必ず不採用としているそうです。

社長は「管理職に、部下にしたくない人材を強引にあてがうことはしない」と話していました。中小企業では、上司との関係が悪化すると退職していかざるを得ない状況になることから、特に現場の意見を重んじる必要があります。この会社では、5年間で5人を新卒採用し、現在のところ、退職者はゼロと聞いています。

 

その学生が活躍しているイメージが湧いてくるか

こちらも私が取材した社員110人のIT企業ですが、内定を出す前に、社長が管理職数人に確認をしています。ポイントは、その学生が入社後、1年、3年、5年、10年とキャリアを積んでいく姿のイメージが浮かんでくるかどうか、です。

たとえば、3年後には営業課で主任になり、5年後には営業課のリーダーとしてチームを引っ張るという姿です。イメージできない場合は、面接での聞き取りが不十分であった可能性が高いのだそうです。この状態で内定を出すと、入社後「こんなはずじゃなかった」となりかねないようです。

これに意味合いが近いことを、大手飲料水メーカー(社員数5500人)の人事部長が話しています。最終面接で、たとえば「この学生は、いずれはマーケティングで活躍できそうだな」と浮かんでこない場合は、採用をためらうそうです。入社後の活躍に確信が持てないからということでした。

 

面接で聞くべき2つの質問

2017年に取材した財務会計コンサルティング会社(社員数50人)の社長は、最終面接でほぼ内定とした学生と、役員そして部課長数人が同席して食事をするそうです。その場で、次の2つの質問をして、回答や表情を確認しています。

「ほかの社員と仲良くすることはできますか?」

「上司の指示に従うことはできますか?」

社長によると、前者の質問をすると表情が曇ったり、明快に返事をすることができかったりする人がいるようです。この場合は、不採用としているのです。「人間関係処理能力にあいまいなものを感じる人を雇うと、中小企業では致命的になりかねない」と話していました。

 

一緒に仕事をする仲間と思えるかどうか

さらに、内定を正式に通知する前に、「意思確認」ということで会社に呼ぶことがあるそうです。会議室に入るまでに、学生は社内のオフィスを通過します。学生との面談を終えた後、社長はその学生の印象を、オフィスにいた役員と社員10人ほどに聞きます。

特に尋ねるのが、「一緒に仕事をする仲間と思えるかどうか」。そのときに「あの学生は……」と懸念を示す社員が半数を超える場合は内定通知を渡すことはしていないようです。社員数が50人だからこそ、人間関係を壊れるのを警戒しているのです。

社長はこう話していました。

「お客さんは無数にいますが、社員は50人しかいない。50人をここまで育てるのに、莫大なお金と時間を投下しました。この輪の中に、秩序を乱しかねない人を社員として入れることはできないのです」

このように、採用活動を慎重に行なってきた結果、ここ3年間で4人の新卒者を採用し、現在まで退職者はいないようです。

 

定着率を上げることは、最大のコスト削減策

多くの中小企業は現在、新卒採用に苦戦を強いられています。内定を与えるにふさわしい学生をようやく見つけたのだから、このような確認がほんとうに必要なのかと疑問に思う方がいるかもしれません。

しかし、冒頭で述べたように、中小企業での社員の定着率が低いことは心得ておきたいところです。「定着率を上げることは、最大のコスト削減策」と明言する中小企業社長は少なくありません。

採用する企業側、採用される学生双方が、ミスマッチによって残念な結果とならないように、内定通知を渡す前に、今回紹介したポイントを再確認していただければと思います。

 

内定者研修・教育

 


 

吉田典史(よしだ のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年以降、フリーランスに。特に人事・労務の観点から企業を取材し、記事や本を書く。人事労務の新聞や雑誌に多数、寄稿。著書に『封印された震災死その「真相」』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)、『悶える職場』『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ』(KADOKAWA/中経出版)など。

 


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