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部門の現状を正しく把握するために

部門の現状を正しく把握するために

(2017年11月15日更新)

 
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企業の競争力の源となる「強い現場」をつくるためには、まずは使命(組織のミッション)を明確に掲げる、次に現状を正しく認識するという過程が欠かせません。では、どうすればリーダーの現状把握力を高めることができるでしょうか。

 

*   *   *

 

部門の現状を正しく把握するのは簡単ではない

松下幸之助のリーダーシップ論・マネジメント論を整理・体系化した概念であり、強い現場をつくるためのフレームワークである『5つの原則』。【第1の原則】では、使命感の重要性について認識を深めると同時に、「部門のミッション」を考えていただきます。

(参照:「経営理念」や「企業使命」は組織の活性化に役立つのか?

いわば、部門のあるべき姿を明確にするわけですが、その次のプロセスが部門の現状把握です。ところが、やっかいなことに現状把握という行為は簡単ではなく、現状を把握しているつもりでも、実際には正確に把握できていないことが多いものです。

 

現状把握力を高める

経営共創基盤CEOの冨山和彦(とやま・かずひこ)氏は、「だれもが、長年培ってきた経験則や成功体験という色眼鏡をかけているので、それをどこまではずし、白地でファクトを見つめられるかが、組織のリーダーにとって最大のチャレンジである」(※1)と述べています。

企業再建のプロとして多くのトップリーダーを見てきた冨山氏が指摘するように、色眼鏡をはずすこと、すなわち「素直な心」になることが現状把握力を高める上で極めて重要なのです。

そこで、【第2の原則】では「素直な心」に焦点を当て、その実現方法を学びます。

※1 出典:『PHP松下幸之助経営塾』2015.1-2 vol.21 p.21(PHP研究所)

 

松下幸之助「素直な心」とは

私たちがものごとを見たり聞いたりするとき、そこには必ずといっていいほど何らかの障害物が入ってきます。その障害物とは、具体的にいうと、次のようなものです。

 

・私……私利私欲、私心、プライド、見栄、損得勘定、など

・知……知識、常識、既成概念、経験・体験、など

・情……好き嫌い、愛憎、喜怒哀楽、機嫌、偏見、など

 

こうした障害物に、とらわれたりこだわったりするのが人間の常なのでしょうが、そのために、ものごとのほんとうの姿(実相)が見えにくくなる、あるいはゆがんで見えたり別の色に見えたりする、ということになり、正しい判断ができにくくなるのです。PHPが考える「素直な心」とは、こうしたとらわれやこだわりを排除し、物事のありのままの姿、すなわち実相を直視する姿勢、あるいは心のあり方を指してます。

 

無意識の思い込み「アンコンシャスバイアス」

人は誰もが、自分自身が気づいていないものの見方や捉え方のゆがみ・偏りを有していると言われています。そのことを「アンコンシャス・バイアス」(Uconscious Bias)と言いますが、日本語では「無意識の思い込み」と訳されます。

「素直な心」についても、「自分自身は素直なほうだ」と無意識に思い込んでいる人が案外多いものです。しかし、実際はどうでしょうか。過去の体験にとらわれて新たな発想ができにくくなっていたり、「そんなことはわかっている」という慢心によって、他人からの助言・忠告を受け止められなかったり、あるいは自分よりも地位や年齢が低かったり、仕事上の専門性が劣っている相手の話に耳を傾けられないということはないでしょうか。ことのほか、素直になることは難しいことなのです。

 

素直な心の自己チェック

自分自身の素直さの現状を把握するためには、下の「自己チェック表」が役に立ちます。

 

【自己チェック表】

あなたはどの程度、「素直な心」をもっていますか

 

□ものごとの判断をする際、自分の欲望や感情にとらわれないよう心がけている

□他人からの意見や情報を鵜呑みにせず、何が正しいか、深く考えている

□偏ったものの見方・考え方にならないよう「バランス感」を重視している

□自分にとって都合の悪いこと、耳に痛いことであっても聴いている

□相手の過ちや欠点をゆるし、受け容れる度量をもっている

□「今、何をすべきか」常に、的確な判断を下すことができる

□日々の出来事、世の中の動き、人のことばなど、すべてから学ぼうとしている

□よりよい対処のためには、それまでの考え方や行動を柔軟に変えられる

□何ごとに対しても、あわてたりうろたえることなく、冷静に対処できる

□意見の相違や、好き嫌いの感情等に囚われて、人を責めたり憎むことはない

□どんな人に対しても心をひらき、相手を大切にしている

□自分よりも地位や年齢が下の人からも謙虚に意見を聴くことができる

□周りの人や物事に対して、レッテルを貼ったり色眼鏡で見ることはない

□過去の成功体験や、常識などに捉われすぎないように心掛けている

□主義・主張の異なる人の意見にも耳を傾けることができる

□逆境に直面しても、ポジティブに受け止めることができる

□日々を感謝して前向きに生きている

 

「素直な心」になるために

ここまで、「素直な心」の重要性と、そうした状態になることの難しさを述べてきました。そこで、「素直な心」になるためにはどうすればいいのか、松下幸之助の発言を引用しながら、その代表的な実践方法を2つご紹介しましょう。

松下幸之助 素直な心"

実践方法1「強く願うこと」

素直な心というものは、言葉では簡単ですけれども、ほんとうに素直な心が働くかどうかということは非常にむずかしい。そのことについて、私はある人とこんな話をかわしたことがあります。

「ぼくは碁の話を聞いたのだが、1万回碁を打ったならば、だいたい初段になれるという。素直な心の初段になるには、1万回それを念じなければいかん。かりに君が毎日、きょう一日自分は素直な心でいこう、そう思ってやって、30年すればだいたい初段になれるだろう。」

いずれにしても、そのように素直な心になりたいというだけでも30年たたないと一人前になれない。そういうことが、すべてにあてはまると思うのです。

『社員稼業』(PHP研究所)

 

実践方法2「自己観照すること」

私はお互いに、これから世の中の役に立って仕事をしていく若い人はとくに、自己の適性というもの、自分自身というものを、よく認識しなくてはならないと思います。そして、それに対して忠実でなくてはならない。毀誉褒貶(きよほうへん)といいますか、名誉といいますか、あるいは利欲と申しますか、そういうことに動かされないだけの信念を持つということが必要ではないかと思います。いわゆる成功というものがあるとするならば、それがほんとうの成功だと思います。

 『社員稼業』(PHP研究所)

 

「素直な心」になろうと自分に言い聞かせ、それができていたかどうかを日々「自己観照」しながら自分を振り返る。この地道な取り組みを継続実践していくことで、一歩一歩「素直の初段」に近づきます。それによって、ものごとの実相を見極める洞察力が高まると同時に、職場内外の変化に気づいていち早く手を打つ対応力や決断力、人に対する寛大さ等が涵養されるのです。

 

 

 

松下幸之助に学ぶ5つの原則

 

 


 

的場正晃(まとば・まさあき)
1990年慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。現在、PHP研究所研修企画部長。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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