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強い要求が人を育てる

2012年1月 1日更新

強い要求が人を育てる

激動の2011年が終わり、新しい年が幕を開けました。今年はどんな一年になるのか、未来を正確に予測することは困難ですが、間違いなく言えることは経済のグローバル化が一層進み、企業間の競争が熾烈になることでしょう。だからこそ、変化に対する対応力とスピードを高めていくことが、これまで以上に重要になりますし、人材育成のテーマもそのことから離れるわけにはいかないのです。

 

変化の激しい時代に求められる人材には二つの要件が必要です。一つは、常識や既成の知識に捉われることなく、新しい智慧を生み出すことができる柔軟な発想力であり、もう一つは、成果が出るまで最後までやり抜く行動力です。では、どうすればこうした要件をもった人材を輩出することができるのでしょうか。

 

かなり古い話ですが、昭和2年、松下電器(現パナソニック)が初めてアイロンの開発を手がけたときのエピソードにそのヒントを読み取ることができます。開発の責任者として、松下幸之助が任命したのは、知識や経験の乏しい若い技術者N氏でした。幸之助はN氏に対して、低価格・高品質の商品を短期間に開発すること、開発ノウハウは社内にないので自分で考えること、という無謀な要求を突きつけると同時に、「君ならできるで」と励ましのことばをかけたのです。それからのN氏は毎日、朝起きてから夜寝るまで「どうすればできるか」を考え続け、やれることをすべてやったところ、高品質・低価格のアイロンがわずか3ヶ月でできあがり、大ヒット商品になったのです。この経験を経たN氏は、これ以降、同社の技術開発責任者として次々に新しい商品を生み出し、会社の発展に多大な貢献をしたのです。

 

このエピソードが示唆していることは、強い要求が人を育てるということです。幸之助からの無理難題とも言える強い要求を受けたN氏は、考えて考えて考え抜かざるを得ない状況に追い込まれました。しかし、追い込まれた状況の中で、深い思索を重ねる中から、真理に近い智慧が誘発され、それを実践し続けた結果、イノベーションが発生したのです。

 

ひるがえって、私たちは仕事の中で、考えて考えて考え抜くほど深い思索をどれほどしているでしょうか。また、部下に対して、そういう状況に追い込むほどの強い要求を投げているでしょうか。人は修羅場経験の中でこそ、成長すると言われています。そういう意味では、昨今の経営環境は、修羅場経験のための題材には事欠かない状況であるといえるでしょう。大切なことは、その状況を他人事とせず、わが事として真正面から受け止めざるをえない状況に追い込むこと。そのためにも、上司は固い信念をもって部下に強い要求を投げていくことが大切になってくるでしょう。

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は株式会社PHP研究所 経営理念研究本部 教育研修部 主幹講師。

経済産業大臣認定 中小企業診断士        

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