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なぜ部下に伝わらないのか~組織として大切にしたい価値観を共有するには?

なぜ部下に伝わらないのか~組織として大切にしたい価値観を共有するには?

(2019年8月 8日更新)

 
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組織のリーダーにとって「伝える力」はたいへん重要です。どうすれば「伝わる伝え方」ができるのでしょうか?

 

「伝える」と「伝わる」の違い

数あるビジネススキルの中でも、効果的に伝える能力はたいへん重要です。組織として大切にしたい価値観をメンバーに伝えていく、上司としての期待を部下に伝えていく、あるいは商品やサービスに込められた思いを顧客に伝えていく、等々。これらは、仕事の成果を高める上で、あるいは人を育てる上で必須の行為であり、伝えることなくして事業目的を達成することなどできないでしょう。

ただし、ここで大切なことは「伝える」という概念を理解すると同時に、類似した表現である「伝わる」との意味の違いを正しく認識することです。そもそも「伝える」とは発信側の「行為」であり、「伝わる」とは受信側の「状態」を指します。このように、両者は次元の異なる概念であるにもかかわらず、しばしば混同されて「伝えたから伝わったはず」という誤解を招きがちです。例えば、部下を集めて部門方針を説明したから、伝わったと思い込んでいたら、実際はほとんど伝わっていなかったという事例などは日常茶飯事とも言えるでしょう。「伝わる」状態をつくることは難しいことなのです。

 

事例に学ぶ「伝わる伝え方」

では、どうすれば「伝わる伝え方」ができるのでしょうか? 結論から申し上げると、「わかりやすさ」と「しつこさ」がカギを握るのです。

ある経営者A氏は、伝える際にわかりやすい表現を使うよう心がけていると言います。例えば「5S」の重要性を理解させるために、「整理とは、探しものの所在が5秒以内にわかる状態をつくること」「整頓とは、不要なものを3日以内に捨てること」といったように、誰が聞いてもその状態が具体的にイメージできるような表現で伝えているそうです。さらに、常に対話を通じて、伝えたことが相手に伝わったかどうかを確認し続けているそうです。

また、抜群の顧客満足度を誇る「MKタクシー」を運行するエムケイ株式会社の創業者は、創業以来、乗務員の意識改革に全身全霊を傾けてきたと語っていました。創業時、挨拶の重要性を啓蒙するため、毎朝無線で乗務員に「ご苦労様、おはようございます」と声をかけ続けましたが、まったく反応がなかったそうです。それでも諦めず、来る日も来る日も乗務員への声かけを徹底したところ、10年経った頃に挨拶を返す人が一人、二人と現れ、やがてその数が少しずつ増え、やがて「MKの乗務員の挨拶は素晴らしい」という評判になるほど、接客態度が向上したそうです。

この事例からわかるように、「伝わる状態」をつくるためには、伝える上での創意工夫としつこさ、そしてそれらのベースに、伝える側の熱意・根気がなければならないのです。

 

徹底した取り組みができているか

私どもが、多くの企業・団体様の人材育成をお手伝いしていて感じることは「徹底すること」が弱いということです。人材育成で着実に成果を上げている企業に共通しているのは、徹底した取り組みがなされているということです。

物理の世界に、「臨界点」ということばがあります。臨界点とは、「物質がある状態から別の状態に変化する境目」と定義されていますが、エムケイにとっては創業から10年経った時期が、まさに同社にとっての臨界点であり、ここを境にして乗務員の意識と行動が変わり始めたのです。そして、その背景には臨界点に到達するまで来る日も来る日も声かけを実践し続けた創業者の努力があったことは言うまでもありません。

人材育成は一朝一夕にできるものではありません。だからこそ、時間の経過の中でもぶれない人づくりへの信念と執着が必要となります。

松下幸之助は、「成功の要諦は成功するまで続けることである」と述べましたが、このことばこそ、「人をつくる人」が拠り所とすべき、基本の考え方ではないでしょうか。

それぞれの組織において、責任者は自身の思いや、組織で共有すべき価値観をわかりやすく、そしてしつこくメンバーに伝え続ける必要があるでしょう。これらが共有できたとき、これまでの組織が、やる気と主体性に満ちた「人が育つ強い組織」へと進化を始めるのではないでしょうか。

 

 


 

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的場正晃(まとば・まさあき)

1990年慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。現在、PHP研究所研修企画部長。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

 


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