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政府の「働き方改革実行計画」を推進するために必要なものは何か

政府の「働き方改革実行計画」を推進するために必要なものは何か

(2017年4月 7日更新)

 
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3月末、政府は「働き方改革実現会議」(議長・安倍晋三首相)で検討を重ねてきた同一労働同一賃金の実現や、残業時間の上限規制導入などを盛り込んだ「働き方改革実行計画」を決定した。

計画について、安倍首相は「文化やライフスタイルとして長年染みついた労働慣行が本当に改革できるのかと半信半疑の方もおられると思います。しかし後世において振り返れば、2017年が日本の働き方が変わった出発点として、間違いなく記憶されるだろうと私は確信をしております」と述べた。

働き方改革を「絵に描いた餅」にしないために何が必要か。政策シンクタンクPHP総研が、2015年9月に発表した政策提言「新しい勤勉(KINBEN)宣言」から、「3We」 の雇用環境整備などについて紹介したい。

 

「個人的ニーズ」「組織的ニーズ」「社会的ニーズ」

「働き方」の問題は、働く者個人だけではなく、企業などの組織や社会全体にも大きくかかわるものである。したがって、新しい働き方を考える場合には、この3者のニーズ、すなわち「個人的ニーズ」「組織的ニーズ」「社会的ニーズ」をそれぞれ満足させるような「解」を求める努力をしなければならない。どれか特定のニーズを満足させることばかりを追求し、他のニーズをおろそかにすると、どこかに無理がかかり、結果としてあらたな問題を引き起こす可能性がある。

「 個人的ニーズ」「組織的ニーズ」「社会的ニーズ」を同時に満足させるために重要になるのは、3つの要素をそれぞれ対立するものとして捉えないことである。そのためには、誰もが「仕事は自分の生活を豊かにするもの」「自分の仕事は会社や社会全体に貢献するもの」ととらえられるようにすることが重要となる。

「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」という言葉が社会的に注目され、多くの取り組みもなされている。たしかに、仕事と生活をうまくバランスさせていこうとするWLB の視点は重要である。

しかし、こうしたアプローチは、ともすると「ワーク」と「ライフ」を二項対立で扱ってしまう恐れがある。本来は「ワーク」も「ライフ」の一部であることを考えると、「ライフ」全体のなかで、さまざまな「部分」、すなわちさまざまな「時間」と「場所」において、誰もがみずからのスキルや能力を積極的に発露し、みずからの人生を豊かにしながら、それが企業や自分が所属する組織への貢献につながると考えるべきではないか。また、個人の仕事は、これまでとは異なり、特定の企業や組織において完結するほうが少なくなると考えられる。そうなると、自分の仕事は、個々の企業や組織を超えた社会全体に対して意義あるものと位置付けることができる。

すなわち、新しい働き方を考える上では、「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」というより「ワーク・イン・ライフ (Work in Life)」あるいは「ワーク・イン・ソサエティ(Work in Society)」という発想をもつことが肝心だということである。仕事を個人の幸福感と企業や社会への貢献に結び付けていくためには、働く者も企業も含め、社会全体がこうした意識転換を行う必要がある。

 

「だれでも」「いつでも」「どこでも」=3Weの雇用環境

「ワーク・イン・ライフ (Work in Life)」「ワーク・イン・ソサエティ(Work in Society)」を実際に担保する方法として重要なのが、「だれでも(Whoever)」「いつでも(Whenever)」「どこでも(Wherever)」働ける雇用環境、すなわち「3We」の雇用環境をつくることである。

仕事を、人生を豊かにするものととらえ、また企業のみならず、社会に貢献するものととらえることは、いわばすべての人が享受すべき「権利」である。しかしながら、これまでのわが国の雇用環境は、第2章で論じたように、出産や子育てをする人たち、あるいは介護や看護をしなければならない人たち、さらには何らかの障がいをもつ人たちなどには、厳しいものであったと言える。

少子高齢化と人口減少により将来の人手不足が予想されるなか、より多くの人が仕事をするということは望ましいことではあるが、かりにそうした状況がなかったとしても、誰もが「ワーク・イン・ライフ (Work in Life)」「ワーク・イン・ソサエティ(Work in Society)」という発想のもとで仕事ができるような体制を整備していくことは極めて重要である。と同時に、将来の厳しい社会情勢を考えれば、それはやはり、企業や社会におけるコストを大きくするものではなく、生産性を高めるものでなければならない。そうした複数の課題を満足させる「解」が、だれでも、どこでも、いつでも働ける「3We」の雇用環境づくりなのである。

別の言い方をすれば、特定の空間や時間にとらわれることなく働けるようにすれば、これまで働くことが困難だった人も働けるようになり、本来享受すべき「権利」を獲得することができる。これは企業や社会全体から見れば労働力を増やすことでもあり、将来の人手不足の解消にもつながる。さらに空間的・時間的制約を取り払うことは、働く人にとっても企業にとってもコストの低下につながり、経済活動を効率化し、社会全体の生産性を高めることが期待できるということだ。

 

上司のマネジメント力と社員の「自律力」が問われる

しかしながら、こうした成果を得るためには、さらに「マネジメント」という要素も考えなければならない。拘束性の高い空間と時間において、同質性の高い人材を管理しながら成果を出してきた従来の日本型のマネジメントとは大きく異なり、3We のマネジメントには、働く者それぞれと組織の状況、業務の進捗状態などをよりきめ細かく認知し、それらを調整しながら成果を出すことが求められる。

また、3We は、働くものに大きな裁量を与えるということにほかならず、組織全体を機能させるためには、上司のマネジメント力とともに、働く者それぞれの自己管理や他者との調整を行う「自律力」が必要となる。さらに、中長期的な展望のもと、どのようなライフステージでどのような働き方をするかというキャリアプランや、どの程度の収入でどのような暮らしをするかといった、ファイナンシャル・プランニングをする力も求められる。

すなわち、働く者にも「セルフマネジメント」という新たな能力の確保が今以上に求められることになる。

 
報告書には提言の詳細とともに、日本におけるスマートプラクティスの実例や提言メンバーによる鼎談などが記載されています。ぜひご一読ください。
 

PHP総研政策提言「新しい勤勉KINBEN宣言」資料ダウンロードボタン


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