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フォロワーの知と力を引き出すには? リーダー・管理職の役割と育て方を解説

2026年10月20日更新

フォロワーの知と力を引き出すには? リーダー・管理職の役割と育て方を解説

不確実性の時代にあって、リーダーや管理職はどのようにリーダーシップを発揮すべきだろうか。そして、どうすれば次世代の幹部や中間管理職は育つのだろうか。フォロワーの視点からリーダーシップを研究する滋賀大学経済学部の小野善生教授に、理論の発展を踏まえながら語っていただいた。

INDEX

米国の研究にみるパラダイム転換

リーダーシップを巡っては、ビジネス環境の変化に合わせて、パラダイム転換が起きてきたと考えられる。リーダーシップ研究の中心は米国にあり、1960年代には「リーダーシップはパワーである」と論じられることもあった。しかし、70年代ごろから米国経済が衰退し、IT系企業が創業されるなど、環境に大きな変化が生じた。80年代に入るとゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチによる企業変革などを通じて、変革型リーダーシップに注目が集まった。変革を進めるため、いかにフォロワーを動機づけるかという考え方も出てきた。2000年代にはエンロンの不正会計事件など経営者の不祥事が相次ぎ、リーダーの倫理性が問われるようになった。
現代は不確実性の時代といわれ、変化のスピードが速い。今後はAIの発展に加え、膨大な計算が可能な量子コンピューターが実用化されれば、パラダイムの大転換が訪れるだろう。先行きについて答えが見つからない時代に入っているといえる。

ミドル層に求められる役割

経営トップには、組織の方向性やミッション・ビジョンを示す価値の創造が求められるのに対して、ミドル層が担うのは価値の浸透だ。トップが創造した価値を、それぞれの部署に伝えていく役割を果たす。トップから下りてきた価値をそのままメンバーに下ろすだけでは伝わらないので、ミドル層には自らの職場のタスクに落とし込むための解釈・翻訳が必要になる。

価値の解釈・翻訳をする際も、リーダー1人だけで考えるのではなく、職場のメンバーを巻き込んで、全員が納得できるようにするのがよい。「制度的リーダーシップ」を提唱したP・セルズニックは、組織に価値観や使命感を入れることで「制度」になるという考え方を示した。価値観や使命感を設定するのはリーダーの役割ではあるが、利害関係者を巻き込んで、衆知を集めたものであることが望ましいと述べている。リーダーが主体性を持つべきではあるものの、複数の人間に関与させたほうが、より調和的な内容になるということだろう。

そして、旧来のピラミッド型組織であれば、経営トップが決めたミッション・ビジョンなどをもとに、ミドル層が画を描いてメンバーに指示すればよかったが、現代では全員を戦力にできる組織が必要となる。それは知識や情報が高度化かつ多様化し、特定の分野に関する知識や情報は、リーダーよりもフォロワーのほうが多く持っていることが多いため、メンバーからの情報やバックアップなしには対応できなくなっているからだ。
全員を戦力にできる組織は、リーダーシップ論でいえば、米国のR・リッカートが提唱した「システム4」という経営管理システムによって説明できる。

「システム4」で示された「連結ピン」のイメージ

※Likert, R. (1961). New Patterns of Management. McGraw-Hill.(三隅二不二訳『経営の行動科学――新しいマネジメントの探求』ダイヤモンド社, 1964年, 152ページ)を参照し、聞き手が作成

トップダウン型の組織とは異なり、いわば全員巻き込み型の組織を指す。魚の鱗(うろこ)のように小集団がまとまっていて、マネジャーがそれぞれのつなぎ目のところで「連結ピン」の機能を果たすイメージだ。そして、組織の各階層にいるマネジャーやリーダー同士が集団で討議し、フォロワーの提案やアイデアを生かし、計画の遂行や目標設定に、フォロワーの参加を促進させるということが原則になる。これによって、コミュニケーションが活発になり、業績は上がると考えられる。

また、リッカートは、リーダーシップの特性について、部下のテクニカルな側面を強調し、課題達成のために部下にルールや手順を守らせる「職務(仕事)中心型」と、部下を個人として尊重し、対人関係に配慮する「従業員中心型」の2つのタイプがあると考えた。そして、従業員中心型のほうが業績は上がると結論づけた。
全員を戦力にするためには、メンバーに細かく指示を出すのではなく、当事者意識を引き出すほうがうまく回ると考えられ、従業員中心型を選ばざるをえなくなるだろう。よりいっそう、部下の人間性に配慮した人間主義的なアプローチにシフトしていくと思われる。

実務的なレベルに落とし込めば、ミドル層は職場のメンバーの特性を把握し、どのような仕事をやってもらうか、一人ひとりにカスタマイズする必要がある。現代ではダイバーシティーやインクルージョンが求められており、画一的に仕事のモチベーションを高めようとしても、うまくいかない。仕事を通じて自己実現を目指す意欲の高い社員には、より高いレベルの契約関係に引き上げる必要がある。一方で、給料がもらえたらいいとドライに割り切る社員には、仕事の内容や範囲を限定して割り振る。たとえるならば社員一人ひとりに合わせた「土俵」を作るイメージだ。そうやって、仕事がうまく回れば、ミドル層の役割は、プレイングマネジャーから、本来やるべき監督の仕事へと移行できる。
そして全員を戦力にするわけだから、経営トップがミドル層にしっかり権限を与え、人事などのスタッフ部門は公正な評価制度を作るなどしてバックアップしなければならない。そうやって全社的に機能する組織になる。

関係性が入れ替わることも

リーダーとフォロワー、入れ替わる関係性

リーダーやフォロワーの関係にはさまざまなとらえ方がある。まずは、「インターチェンジ・リーダーシップ・フォロワーシップ」という考え方を紹介したい。上司や部下という地位と、リーダーとフォロワーという関係性が、必ずしも一致せず、入れ替わる場合がある。つまり、上司がリーダー、部下がフォロワーと常に固定されているとは限らず、上司がフォロワー、部下がリーダーになることもあるということだ。
たとえば、上司と部下がそろって営業先に行く場面を想像してほしい。名刺交換するときは、上司が部下を従える構図になる。ところが、部下が商品を説明するタイミングでは、自然発生的に、部下がリーダーとなり、上司はフォロワーの役割に切り替わる。そのとき、上司がフォロワーの役割に徹し、相手に情報が伝わるようにバックアップすれば、商談はうまく進むだろう。そうではなく、上司がリーダーの役割にこだわり、隣で部下へにらみをきかせるような振る舞いをすれば、部下は萎縮してしまい、商談もスムーズに進まないだろう。
メーカーとサプライヤーとの関係性に当てはめて考えることもできる。基本的にはメーカーがリーダー、サプライヤーがフォロワーの立場になるだろうが、サプライヤーはメーカーの図面に忠実に従って製造し、コストカットの努力をするだけでは不十分だ。サプライヤーが現場で蓄積された知を生かして、「この仕様はおかしい」「こうすれば改善できる」などと、メーカーに提案できるような関係性が鍵になってくる。本当の意味での一体感ができれば、共創関係に発展し、イノベーションにつながるだろう。

リーダーとフォロワーの関係性が、階層や権限によって固定されているという見方をすれば、違った示唆も得られる。上から下に影響力が及ぶ場合、リーダーシップがうまく発揮されずに空振りに終わったとしても、上司はパワーを使って部下を動かすことができる。一方、下から上に影響力を及ぼそうとする場合、上司が部下の提案を却下してしまえば、それで終わりだ。つまりフォロワーシップの働きのほうが弱く、それを生かせるかどうかはリーダーの度量次第ということになる。

「リーダーシップとは何か」という原点に立ち返って考えてみるのもよい。野田智義氏は金井壽宏氏との共著『リーダーシップの旅――見えないものを見る』(光文社)で、「リーダーは、リーダーになろうと思ってなったわけではなく、『結果として』リーダーに『なる』のだ」と述べている。ある人が理想やビジョンに向けて歩いていて、そこにフォロワーがついてきて、共振関係が生じ、結果としてリーダーになるという考え方だ。
同じように、私が著書『フォロワーが語るリーダーシップ――認められるリーダーの研究』(有斐閣)で論じたことだが、事例研究をしたリーダー3人は、自分自身が意図してリーダーシップを発揮しようとしたわけではなかったことがわかった。むしろ、フォロワーたちがリーダーとの相互作用を通じて、次のいずれかを得ることによってリーダーシップを認知するというプロセスが明らかになった。

  • リーダーとの相互作用を通じて何か新しいものを得ることができたという実感(開眼)
  • リーダーとの思いの一致によって強化される自らの思いへの確信(共鳴)
  • リーダーの貢献に対する実感(感謝)

上記のいずれかを得ることによって、フォロワーがリーダーシップを認知していくわけだ。結果的にリーダーになるという野田氏の指摘とも合致するのではないだろうか。

参考記事:リーダーシップ、フォロワーシップ、パートナーシップ~マネジャーに必要な3つのシップをどう発揮するか│PHP人材開発

どうリーダーを育てるか

ある有力企業の最高幹部に話を聞く機会があり、その方は次世代のリーダーや管理職が育っていないという問題意識を持っていた。パラダイムの転換期なのに「組織全体でどう乗り越えるべきか」というように、大局的にみられる人材が育っていないと危機感を抱いていた。しかしながら、私が実際にその企業のミドル層と接すると、海外経験は豊富で人間性も磨かれ、素晴らしい人材ばかりだった。
私は、組織が高度に専門化され、思考の枠組みが細分化されたがために「サイロエフェクト」に陥っている可能性があると感じた。そこから抜け出すためには、自分の仕事を俯瞰(ふかん)的に見る必要がある。勉強会を開きに行ったり、異業種の人たちが学び合う塾に参加したりと、自分の仕事とは別の軸を持ち、往復することが重要だろう。日常に埋没してしまうと、常識化されたものを疑う視点を失いがちだ。いつものフレームワークとは別のところから、誰かに問われる必要がある。

リーダーシップというのは複雑な現象で、すべてを包含するような研究成果や理論は存在しない。だからこそ、机上で理論を学ぶ前にやるべきことがある。それは自己対話だ。自らの理想とは何か、目指したいものは何かを問い直すことだ。自らの生育環境、誰からどのような教育を受けたか、これまでに一皮むけた経験はあるかなど、ライフヒストリーを振り返ることから始めてみるのがよい。自らの振る舞い方の原点になるべき発想を身につけたうえで、行動を起こし、フォロワーたちとの共振関係ができれば、その結果としてリーダーシップを発揮できるようになる。その過程で、部下との関係性の構築や、職場をうまくまとめるための課題が見えてくるだろう。立ち位置をはっきりさせた後、リーダーシップの理論を学べば、使える理論が見つかるはずだ。リーダーとフォロワーの関係性が入れ替わることがあるという考え方を知っていれば、組織を円滑に動かすうえで役に立つ。

これからのリーダーに問われるのは、傾聴はもちろん、対話を通じて、課題や教訓を発見してフォロワーに提示するフィードバックの能力だ。知らないことを恐れず、相手の胸に飛び込む「無知の知」という心がけも大切になる。ただし、リーダーがやみくもに質問すればよいわけではなく、自力で考え抜いたうえで出てくる鋭い問いが欠かせない。このようなコミュニケーションの能力を、ディスカッションやワークショップなどで向上させていくことも必要だろう。

具体例を紹介したい。かつて研究した「四国管財」というビルメンテナンス会社の事例だ。この会社は社員満足度が高く、その理由を調べるのが目的の一つだった。そこで私は「四国管財ベーシック」と称する経営理念を浸透させる取り組みに注目した。朝礼で、社員たちが仕事で経験したことを、経営理念とリンクさせながら短時間で語る場を設けていた。経験から学ぶことはとても重要で、語ることで経営理念を肚(はら)落ちさせる効果がみられた。正規・非正規社員の別や、役職の有無など立場は関係なく、他の同僚たちは受け入れ、心理的安全性も保たれていた。

ここでもリーダーが果たすべき役割は、適切な問いを立ててフィードバックを与えることだ。その経験から何を教訓として得たか、誰とその教訓を共有したいか、次にどういう行動をするべきかなどを問うことが、メンバーの次なる語りを生む好循環につながっている。

このような関係性を作るためには共通の基盤が必要で、経営理念のような基軸が重要な役割を果たす。社員が自律的に動けることが最初のステップになるが、勝手に動かれてはばらばらになるので、基軸が必要になる。そして、次のステップとして、リーダーとメンバーの間で相互作用を通じて、組織のコミュニケーションの質を上げていくことができる。

リーダーシップについて、リーダーになるべき人が適切な教育を受けていないことも問題だと考える。現在のミドル層に、尊敬できるリーダーから何を教わったか尋ねると、「そんな人に出会ったことはない」「反面教師ならいる」という答えが少なくない。その理由を探るため、1世代前のリーダーが何を学んできたのか考えた。バブル崩壊後、企業が整理縮小を迫られたタイミングで、管理職としてリストラや不採算部門の整理などの非情な決断を下す経験をした人が少なくない。誰とも相談できず、答えも決まっているので、やるしかない。そのような修羅場でリーダーが一人で悩み抜いて決断することこそリーダーシップだというイメージができてしまい、次の世代にリーダーとしての教育や継承が難しかったのではないだろうか。

今の時代に苦境に陥っている組織では、トップダウン型のリーダーが多いように思う。今の時代には唯一の答えがないので、リーダーにとっては、組織の一体感を高めることとフォロワーの生かし方が重要になってくる。そのためのコミュニケーション能力を研修などで身につけることが求められているといえる。

今の時代のリーダーに求められる学びが身につく
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今後の課題

今後の課題も示しておきたい。従来のリーダーシップ論では注目されてこなかったが、横の連携や横からの圧力についても解明するべきではないだろうか。上司と部下という垂直の関係性だけでなく、同僚とのかかわりなど水平の関係性によって、影響を受けていると考えられるからだ。

リーダーシップ論の研究の中心は米国にあるが、日本の場合は「同調圧力」という言葉に象徴されるように、横からどう見られているかを強く意識しがちだ。たとえば何かよい提案をしようとしている社員がいるとして、同僚からの「抜け駆けしようとしている」という視線を気にして、消極的になるということは、よくあることだろう。昇進や雇用で激しい競争下に置かれると、お互いにつぶし合ったり、けん制し合ったりすることも起こりうる。横の圧力が強い半面、横の連携の弱いことも、日本の組織の特徴と考えられる。イノベーションを促進するためにも、必要な視点ではないだろうか。

取材・構成:高瀬浩平

小野善生(おの・よしお)

小野善生教授

滋賀大学経済学部教授
2003年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。博士(経営学)。関西大学商学部准教授などを経て、'17年より滋賀大学経済学部教授。専門は組織行動論、リーダーシップ論。主な著書に『フォロワーが語るリーダーシップ――認められるリーダーの研究』(有斐閣)や『リーダーシップ徹底講座<第2版>――すぐれた管理者を目指す人のために』(中央経済社)などがある。

本記事は、電子季刊誌『[実践]理念経営Labo』Vol.19から転載したものです。

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