ポテンシャル採用とは? メリットやデメリット、導入事例を紹介
2023年8月 8日更新
ポテンシャル採用とは、求職者の潜在能力を重視し、将来性を見込める人材を採用する方法のことです。労働人口の減少に伴う採用競争の激化や、多様な経験や高い潜在能力を持つ人材の獲得の必要性などから、近年注目されています。本記事ではポテンシャル採用の特徴やメリット、デメリットなどを解説します。
INDEX
ポテンシャル採用とは?他の採用方法との違い
ポテンシャル採用とは、求職者の潜在能力を評価し、将来的に大きな成長を見込める人材を採用する方法のことです。新卒採用や中途採用では埋められない層を確保する手段として、近年注目されています。即戦力採用ではないためスキルや経験は重視されず、未経験者であっても採用にいたることも少なくありません。
企業の将来を担う人材を得ることなどを目的とするため、20代から30代を目安として募集する企業が多い傾向にあります。
経験者採用との違い
経験者採用は、求職者のスキルや実務経験を評価基準とし、即戦力人材を確保する採用方法です。経験者採用では、募集要項に応募に必要な経験年数や必須要件などを明確に記載するケースがほとんどといえるでしょう。ただし、スキルや経験などを重視するあまり、企業文化にフィットしそうかなどの評価を後回しにしてしまい、入社後に期待したほど活躍できない場合があります。
これに対して、通常のポテンシャル採用では、スキルや経験の有無を問われることはありません。求職者が持つ潜在能力に注目し、今後自社で成長する可能性を見極めて採用する手法といえます。また、経験者採用はある程度の実務経験やスキルを重視して、30代以上の中堅人材を対象にするケースが多い一方で、ポテンシャル採用は20代から30代を目安に採用することが特徴です。
新卒採用との違い
ポテンシャル採用も新卒採用も、求職者の将来性を重視しスキルや経験の有無を問わず、中長期的な活躍を見込む点では同じです。しかし、両者は採用時期や基準が異なります。
新卒採用は4月もしくは9月の一括採用で、「〇〇年度に大学を卒業する者」というような要件が設定されます。また、大学卒業後3年以内であることを求められることが一般的です。これに対し、ポテンシャル採用は不定期の開催かつ通年で行うことが多く、20代から30代を対象とするなど、新卒採用よりも対象範囲が広い点をおさえておきましょう。
ポテンシャル採用が注目されている理由
ポテンシャル採用が注目されている理由として挙げられるのは、主に以下の2点です。
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 多様な経験や高い潜在能力を持つ人材の獲得
それぞれの内容を解説します。
少子高齢化による労働人口の減少
少子高齢化によって、国内の労働人口は減少を続けています。それにより、少ない人数を多くの企業で取り合うため、採用が困難な状況に陥っているのが現状です。即戦力人材を求めても、要件を満たす人材の確保が難しいため、中長期的に活躍できる人材を育てるポテンシャル採用に注目が集まっています。
多様な経験や高い潜在能力を持つ人材の獲得
従来の新卒採用や中途採用は、対象年齢や求める経歴などが限定的です。しかし、ポテンシャル採用は20代から30代を目安に採用を行うほか、海外大学の卒業者やワーキングホリデー経験者などの多様な経歴を持つ人材を採用できる点でも、注目を集めている手法です。
通常の新卒採用や中途採用よりも対象範囲が広いため、従来は出会えなかった高い潜在能力を保有する人材を獲得できる可能性があります。
ポテンシャル採用のメリット
ポテンシャル採用のメリットは、主に次の3点です。
- 世代交代がスムーズに進む
- 将来の幹部候補を育成できる
- 基本的なビジネススキルやマナーが備わった人材を獲得できる
各メリットについて解説していきます。
企業の世代交代がスムーズに進む
ポテンシャル採用によって20代から30代の社員を広く採用することは、社内の世代交代の促進につながります。
バブル崩壊後に起きた就職難の時代、いわゆる就職氷河期に採用活動を控えたなどの理由により、中堅層の空洞化が起きている企業が少なくありません。ポテンシャル採用で獲得した若い世代にリーダー職を経験させておけば、定年で多くの社員が会社を去った後も、リーダーを失うことなく企業を存続できるでしょう。
20代から30代の社員を確保することで、熟練社員から若手社員への技術継承も可能になります。
将来の幹部候補を育成できる
ポテンシャル採用は実務経験やスキル、保有資格などで評価する即戦力採用と違い、求職者の将来性や潜在的な能力を重視した採用手法です。将来性のある人材に企業文化や風土に馴染んでもらいながら、幹部候補として育成できる点もメリットです。
基本的なビジネススキルやマナーが備わった人材を獲得できる
社会人経験のない学生を採用する新卒採用と違い、ポテンシャル採用は就業経験のある求職者を採用することも多く、基本的なビジネススキルやマナーが備わった人材を獲得できます。
そのため、社会人に求められる言葉遣いやマナーなどを習得するための導入研修や教育機会を設けずに済みますし、一定レベルの安心感をもって人材を採用することができます。
ポテンシャル採用のデメリット
ポテンシャル採用のデメリットとして考えられるのは、次の2点です。
- 人材育成にコストがかかる
- 短期間で離職してしまう可能性がある
1つずつ確認していきましょう。
人材育成にコストがかかる
ポテンシャル採用で獲得する人材は、将来性や潜在能力を重視して採用するため、即戦力となるスキルは要していないことがほとんどです。そのため、企業に貢献できるようになるまでに、 相応の人材育成を行う必要があります。 採用後すぐに戦力化が期待される経験者採用と違い、 ポテンシャル採用は人材育成にコストと時間がかかることに注意が必要です。
短期間で離職してしまう可能性がある
ポテンシャル採用をした人材は、 採用のミスマッチや自身のキャリアアップのために短期間で離職してしまうリスクがあります。応募者は基本的に、その業界や職種が未経験であるため、実際に働き出してから、企業側も本人も「想像と違っていた」という事態に陥る可能性があることを理解しておきましょう。
ポテンシャル採用される人材が20代から30代が中心と比較的若く、フットワークが軽い傾向にあることも、短期間の離職が懸念される理由の1つです。さらに、前職も短期間で辞めているような場合は、職場や仕事が少しでも自分に合わないと感じたら、すぐに見切りをつけてしまうかもしれません。
ポテンシャル採用を実施する際は、応募者が短期間に転職を繰り返していないか、自社の文化や風土に合う人材かどうかなどを確認することが大切です。
また、新卒採用のような同期の仲間がいないため、職場に馴染めないなどの悩みを気軽に相談できる相手を見つけられず、孤独感から離職してしまうケースも考えられます。企業側は、入社後の適切なフォローアップ体制を用意しておくことが求められます。
ポテンシャル採用を成功させるためのポイント
ポテンシャル採用を成功させるためには、以下の4点のポイントを意識しましょう。
- Web媒体やITツールを活用する
- 自社が求めるポテンシャルを明確にする
- 面接担当者に向けた研修を行う
- 入社後のフォローアップ体制を整える
1つずつ解説していきます。
Web媒体やITツールを活用する
ポテンシャル採用を成功させるには、Web上の求人媒体やSNSなどのITツールを活用した求職者へのアプローチが欠かせません。少子高齢化による労働人口の減少に伴い、若手人材を確保することが難化しています。求職者は日々膨大な量の求人情報を受け取っており、そのなかから自社の求人を見つけてもらうには、20代から30代の年齢層がよく使う媒体を活用する必要があります。
なお、ポテンシャル採用は未経験者も対象となるため、1日の仕事の流れや社風などをわかりやすく伝え、入社後の自分の姿をイメージしてもらいやすくする工夫も大切です。事業内容や仕事内容などの基本情報のみを掲載するのではなく、企業が大切にする文化などが感じ取れるように意識しましょう。
自社が求めるポテンシャルを明確にする
曖昧になりがちな「ポテンシャル」の定義を、自社で明確にすることも重要です。ポテンシャルは潜在能力のことを指しますが、自社が求める潜在能力とは何かを言語化し、社内で共有認識として持つ必要があります。「なんとなく優秀そうだから」「やる気があるように見えたから」といった理由で採用してしまうと、採用ミスマッチの原因になりかねません。
あらかじめ、将来的にどのような能力を発揮して欲しいのか、どのような人柄や価値観の人物が望ましいのかといったことを明確にしておきましょう。その上で、選考時にそれらの要素を満たしているかどうかを客観的に測れる項目や指標を用意しておくと、面接官によって生じる判断のブレを抑えられます。
面接担当者に向けた研修を行う
ポテンシャル採用の精度を高めるには、面接担当者に向けた研修の実施が必須といえるでしょう。ポテンシャル採用は、具体的な経験やスキルなどを基準に採用するわけではないため、自社での活躍が期待できる人物であるかどうかを正しく見極めることが、より重要です。
面接官の経験や知識がない社員が面接を行うと、応募者の本心に迫る質問の仕方がわからなかったり、主観や好みによって採用してしまったりする可能性があります。そのため、応募者の潜在的な能力や価値観などを適切に引き出せるような、面接担当者向けの研修やトレーニングを行いましょう。
また、入社後のミスマッチを防ぐために、面接段階で応募者が求めるキャリアビジョンと、現実的なキャリアの道筋を正しく伝えられるスキルや知識も身に付けておくことも大切です。
入社後のフォローアップ体制を整える
ポテンシャル採用で獲得した人材は、新卒採用とは異なり、ビジネスマナー研修までを行う必要はないと考えられるものの、業務に関する基本的な知識を習得できる機会を用意することは不可欠です。
また、業務に関する研修だけでなく、メンター制度や人事担当者による定期的な面談などのフォローアップ体制の構築も重要です。
前述のとおり、ポテンシャル採用をした人材が実際に成果を出せるようになるまでにそれなりの時間がかかること、人材育成にコストを要することを認識しておくことが必要です。
採用時にポテンシャルを見極めるポイント
採用時に求職者のポテンシャルを見極めるために、次の2点のポイントをチェックすることをおすすめします。
- 具体的なキャリアビジョンを持っているか
- 自ら学ぶ意欲があるか
それぞれのポイントを確認していきましょう。
具体的なキャリアビジョンを持っているか
ポテンシャル採用は知識やスキルの有無を問わないため、その分、仕事への熱意や成長意欲などをポテンシャルと定義する企業が多いといえます。
仕事への熱意や成長意欲がある人材は、入社後の具体的なキャリアビジョンを持っている傾向が強いです。そのため、面接で入社後の具体的なキャリアビジョンを確認することは、応募者の仕事への熱意や意欲などの見極めにつながります。
また、応募者が描く未来像を尋ねることにより、それが自社で実現できるかを事前に判断できます。それにより、採用のミスマッチも生じにくくなるでしょう。
自ら学ぶ意欲があるか
現時点でスキルがなくても、自ら学習をして成長していく意欲がある人材は、大きなポテンシャルを秘めています。たとえば、IT業界が未経験であっても、その分野の勉強をしているかどうかで学習意欲を測ることが可能です。
専門技術やスキル以外では、自ら習得したITや語学などの汎用性の高いスキルも、評価の対象となるでしょう。どのような考えのもとで学習に取り組むことを決意したかなど、学習の背景も確認することで、さらに応募者の内面や価値観の理解につながります。
大手企業におけるポテンシャル採用の事例
ここからは、実際にポテンシャル採用を行っている、「ソフトバンク株式会社」と「ヤフー株式会社」の事例をご紹介します。各企業のポテンシャル採用における募集要項や、ポテンシャル採用の実施にいたった考え方などを解説します。
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社は、2015年から従来の新卒一括採用を見直し、以下の考え方にもとづき「ユニバーサル採用」としてポテンシャル採用を実施しています。
将来を担う人財には、自身の可能性を限定せず、主体的に進路を選んでほしい
企業は、必要なときに必要な人財を採用する
ソフトバンク株式会社が提唱するユニバーサル採用は、上記の考え方を踏まえた、本来あるべき採用を具現化したものです。新卒者に限らない多様な人材を確保するために、挑戦する意欲がある求職者に対して広く門戸を開き、選考時期を通年として好きな時期に自身の意思で就職活動を行なえるようにした点がポイントです。
ソフトバンク株式会社のポテンシャル採用の対象者は、「入社時30歳未満の新卒」「既卒」「就業者」と設定されており、既卒や就業者の年齢は指定されていません。
参考:ソフトバンク新卒採用「ユニバーサル採用」
https://recruit.softbank.jp/graduate/recruit/universal/
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社は2016年10月から新卒一括採用を廃止し、新卒や既卒、就業経験を問わず応募時に30歳以下かつ18歳以上であれば応募が可能な、ポテンシャル採用を実施しています。ヤフー株式会社は、ポテンシャル採用に踏み切った理由として以下の2点を挙げています。
従来の新卒採用と、就業経験を重視する中途採用という2択では、第二新卒や既卒の応募者に平等な採用選考の機会を提供することが困難
海外留学生や博士号取得者などの多様な人材を採用するために、より柔軟な採用のフレームが必要
ヤフー株式会社は、ポテンシャル採用によって、多くの応募者が応募しやすい枠組みを作り、多様性に富んだ人材の確保を実現しています。
参考:ヤフー株式会社「ポテンシャル採用」
https://about.yahoo.co.jp/hr/potential/
まとめ:ポテンシャル採用で企業の持続的な成長を目指そう
ポテンシャル採用は、求職者の将来性や成長意欲などを重視して採用する手法のことです。新卒採用より対象者の範囲や採用時期が幅広く、経験者採用のように即戦力となるスキルや経験を問わない点が特徴です。海外大学の卒業者や、ワーキングホリデー経験者などの多様な経歴を持つ人材を採用できる手法としても、注目されています。
ポテンシャル採用を実施すれば、将来のリーダー候補の確保につながり、企業が持続的に成長することが可能となるでしょう。この記事を参考に、ポテンシャル採用の導入を検討してみてはいかがでしょうか。