フィードバックを通じて自己認識を深める~意識と行動を変える本音のやり取り
2026年9月 4日更新

PHP研究所では経営者向けの各種セミナーを主催していますが、受講を通じて意識と行動が大きく変容する経営者・経営幹部の方が、この2~3年の間に確実に増えてきました。
一般的に経営リーダーは、強固な信念や哲学、行動スタイルを持っているがゆえに、「変わる」ことに抵抗を示す方が多いようです。にもかかわらず、なぜ、上記のセミナー受講者は、自分が信じてきた準拠枠を手放し、新たな考え方や振る舞いを取り入れることができるのでしょうか。その理由を、「フィードバック」という観点から考察いたします。
しがらみのない本音のぶつかり合いでの気づき
「業界全体が厳しい状況にあるとのことですが、弱い会社が淘汰され、御社のようなしっかりした経営をしている会社がさらなる飛躍を図るチャンスじゃないですか」
「経営方針の考え方の違いがあったとしても、創業者であるお父様に対する、尊敬と感謝の気持ちを後継者であるあなたが持たないとダメですよ」
弊社が2011年より開講している経営セミナー「松下幸之助経営塾」 では、受講者である経営者どうしで、前記のような忌憚のない本音のやり取り(フィードバック)が交わされます。それができるのも、受講者が全国各地から参加し、業種・業界も年齢も多岐にわたるバックグラウンドのもと、何のしがらみもない状況下で議論ができるからかもしれません。
経営者の立場になると、耳の痛いことを言ってくれる人が少なくなるもの。だからこそ、「本音のフィードバックを伝え合う場に身を置いていると、自分の課題に気づくことができ、本当にありがたい」という感想が、受講者から数多く寄せられるのです。
自分を正しく知って成果を上げる
フィードバックとは、「相手が自らの行動や状態を客観的に把握し、修正・成長できるように第三者の目から情報を返してあげること」と定義づけられています。
具体的には、以下の6つのステップでフィードバックが展開されます。
Step0:事前準備(事実・情報の収集)
Step1:信頼関係の確保
Step2:事実の通知
Step3:腹に落とす対話
Step4:振り返り支援
Step5:期待の通知
6つのステップの中で特に大切なのが、相手に関する事実や情報をつかみ(Step0:事前準備)、それを客観的に伝えていく営み(Step2:事実の通知)です。事実を客観的に伝えることで、相手の納得感が高まり、深い気づきが誘発されるのです。
フィードバックが注目を集めるようになったきっかけは、最新のリーダーシップ研究で明らかになった知見にあると思われます。昨今の欧米のリーダーシップ研究領域では、様々な議論が展開されていますが、いずれにも共通しているのが、自己認識(self-awareness)の重要性を指摘している点です。
自己認識とは、自己の性格、長所・短所、欲求、役割について深く理解すること。つまり自分を正しく知ることです。
自己認識の重要性に関しては、いくつかの実証研究があります。たとえば、コーネル大学のD.ダニングとJ.クルーガーは、「能力の低い人物が自らを高く評価してしまうような認知バイアスが存在する」と主張しました。(※1)一方、「成果を上げる人ほど、自己認知能力が高い」という研究成果(※2)も発表されています。
これらの研究成果が示唆しているのは、「仕事ができる人」になりたいなら、自分というものの本質を正しく認識する必要があるということです。ところが、やっかいなことに自分を知るという行為は簡単ではないのです。
心理学の分野で頻繁に紹介される「ジョハリの窓」(※3)では、自己には「公開されている自己」(開放の窓)と「隠されている自己」(秘密の窓)があるとともに、「自分は知らないが他人は知っている自己」(盲点の窓)や「誰にも知られていない自己」(未知の窓)もあるとされています(下図参照)。

このフレームワークを使うと、自己認識を深めるためには2つの方法があることがわかります。
(1)「開放の窓」を広げる:自分のことをもっと周囲に語る(自己開示)
(2)「盲点の窓」を狭くする:他人から自分に対する指摘を受けて、自分が知らなかった自分に気づく
前述の(1)に関しては、自己努力で実践できますが、(2)に関しては指摘をしてくれる人がいなければ成り立ちません。
だからこそ、フィードバックが求められるのです。
※1 ダニング=クルーガー効果
※2 Church, A.H.(1997).Managerialself-awarenessinhigh-performingindividualsinorganizations.
※3 サンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムが提唱
自らフィードバックを求め自身の成長を促す
松下幸之助は、以下のように述べ、フィードバックの重要性に言及していました。
「自分一人で自問自答していたのでは十分わからないという場合もあるだろう。その時は、それを他の人にたずねてみればいい。"自分はこう考えているが、どうだろうか"ということを謙虚にたずねてみる」
引用元:『指導者の条件』松下幸之助・著(PHP研究所)
「人の意見に耳を傾けて、衆知を求めつつやっていこうとする人は、それだけ過ちを犯すことも少ないし、そういう人に対しては、みなもどんどん意見をいい、また信頼も寄せる」
ここまで述べてきた通り、経営者として成長し続けるうえで大切なのは、他者からのフィードバックを通じて自己認識を深めることです。さらに言えば、周囲の人(取引先、社員、家族、友人等)に対して、自分からフィードバックを求めていく姿勢(フィードバック・シーキング)を持つことができれば、自己認識力はさらに高まるでしょう。
他者から受け取ったフィードバックの中には、耳の痛い指摘もあるかもしれません。それでも、フィードバックを受け続ける積極性や、それを取り入れる素直さ・柔軟性があれば、自身の成長が促進され「経営者としての器」がひと回りもふた回りも大きくなるのです。多くの経営者の方々との対話を通じて、こうした解釈の正しさを実感しています。
本記事は、『[実践]理念経営Labo』2026年SUMMER 7-9(Vol.18)から転載しています。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP理念経営研究センター主席研究員
1990年、PHP研究所に入社、研修局に配属。以後、一貫して、PHPゼミナールの普及、および研修プログラムの開発に取り組む。2001~'03年まで神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。中小企業診断士。松下幸之助経営塾ファシリテーター。著作に『"強い現場をつくるリーダー"になるための5つの原則』(PHP通信ゼミナール)』がある。




































































![[新版]できる社員の仕事術マスターコース](/atch/tra/IBI.jpg)
![[新版]中堅社員パワーアップコース](/atch/tra/IAJ.jpg)




















![[新版]会社の数字入門コース](/atch/tra/AFC.jpg)












![[金融編]「美しいペン字」練習講座](/atch/tra/DFC.jpg)





![[新版]ケースで学ぶ 実践!コンプライアンス ~社会人として求められる考え方と行動~](/atch/el/95139_01.jpg)
![[ケーススタディ]今こそ知っておきたい コンプライアンス50 ~違反防止で終わらない。価値を高める行動へ~](/atch/el/95140_01.jpg)















![[テレワーク時代の]社会人やっていいこと・悪いこと](/atch/dvd/I1-1-065.jpg)






















![ホスピタリティ・マインド[実践3]心くばりで感動を共有しよう](/atch/dvd/A1-2-036-1.jpg)
![ホスピタリティ・マインド[実践2]気くばりで顧客満足度アップ](/atch/dvd/A1-2-035-1.jpg)
![ホスピタリティ・マインド[実践1]品格あるマナーで好感度アップ](/atch/dvd/A1-2-034-1.jpg)







![私たちのコンプライアンス[4]](/atch/dvd/I1-1-073.jpg)






![ストレスチェック制度対応 [改訂版]セルフケアからはじめるメンタルヘルス・マネジメント](/atch/dvd/I1-1-040.jpg)





![みんなで実践[異物混入対策]SNS炎上防止とクレーム対応](/atch/dvd/I1-1-035.jpg)
![みんなで実践[異物混入対策]現場改善で異物をなくす](/atch/dvd/I1-1-034.jpg)







































