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人事評価に不満をもつ社員の言い分とその対処

人事評価に不満をもつ社員の言い分とその対処

(2016年4月 5日更新)

 
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社員が人事評価に不満をもつ原因とは何か。人事部、上司としては何に留意し、どう対処していけばよいのか。本田有明著『ダメな部下でも伸ばす上司、できる部下まで潰す上司』より、その一部をご紹介します。

 

 

納得できない者たちの言い分

人事考課に目標管理制度や成果主義を取り入れている組織が少なくない。目標管理にせよ成果主義にせよ、その是非については長年さまざまな角度から論じられてきているのはご存じのことだろう。

しっかりと目標を定めて自己管理や人事管理を行うのは、仕事に対する成員のモチベーションを高く維持するという意味では大切な概念である。問題は運用の仕方であり、つきつめてゆくと評価そのものにまつわるむずかしさが根底に潜んでいることがわかる。

多くの調査資料を見ると、自分は正当に評価されていないと感じている人が一定の割合で存在する。もともと評価というものは、どんなシステムで行ってもすべての人の満足を引き出すことはできない。評価する立場の人は、あらかじめそう割り切っておいたほうがよい。そのうえで、どのような配慮をすれば「比較的公平な評価」ができるかを考えるのである。

 

では、評価される側の不満は、どんなところにあるのか。

ひとことで言って、評価軸にブレがあるということ、要するに「ひいき」があるということだ。仕事の実績がそのまま評価に連動していると感じられれば納得するのだが、実績と評価のあいだに「プラスα」や「マイナスα」がはたらいているのではないか。評価される側はそんな猜疑心を抱いている。

この猜疑心はもっともだと筆者は思う。人の評価には、客観的事実にもとづいた実績評価だけでなく、どこかに「α」が含まれるものだ。好みや相性など、「α」は評価者の傾向性を反映した要素で、いわゆる情実含みの評価のもとになる。

自分は絶対に大丈夫と豪語する人もいるが、そういう人に限ってつまずきやすい。まずは誰でも傾向性をもっていることを自覚したうえで、謙虚に対策を考えるのが賢明だ。

ここでは単純に、個人業績と組織貢献度という2つの軸で評価をとらえてみよう。

 

実績と評価はなぜ一致しないのか

業績が高く、チームへの貢献度も高いと評価された者を「第1グループ」とする。名づけて「優等生」。仕事の成果は80点でも、上司に協力的である、性格がよいなどの「α」が加味されて、総合的な評価はさらに高くなる。惜しみなく賞賛されるグループだ。

個人の業績が高くても、組織への貢献度が低いと判断された者を「第2グループ」とする。名づけて「トンガリ」。上司から見た印象を強く反映したニックネームである。仕事の成果が90点でも、上司の指示に従わないことがある、チームワークの配慮に欠けるなど、マイナス要素がはたらいて評価は下がり気味になる。さきの「優等生」の最終的な評点が90点だとしたら、こちらは80点。業績と総合評価は逆転する。

このグループに対して、上司は賞賛の拍手をおくることは少ない。評価に異議を唱えたり、ときには上司を批判する者が現れたりするので、警戒ないしは敵視するくらいだ。

 

現実にはもっと複雑な要因がからむが、原理はこんなところである。問題なのは、組織貢献度という尺度が恣意的な判断で左右されやすく、上司によっては「自分との相性」になりかねないことだ。

業績が低めのグループに目を転じてみる。努力を要する立場だが、それなりに頑張っていると好意的に見られれば「第3グループ」で、評価は少し上がる。個人としての業績が70点しかなくても、プラスαが効いて80点。もとは90点の「とんがり」と総合ポイントで並ぶことになる。

このグループに、上司から寵愛を受ける「愛いやつ」がしばしば生まれる。「トンガリ」はもともと上司からすればちょっと煙たい部下であり、「優等生」も仮に素直に従わないようなことがあれば、優秀な人材であるだけに上司の立場を脅かす恐れが生じるが、「愛いやつ」はその心配がない。能力は十分とはいえなくても、上司の言うことを聞いてまじめに励んでいる。そんな部下に対して、上司の評価や接し方は甘くなりがちだ。

これとは対象的に、実績も貢献度もいまひとつと判断された「第4グループ」は救われない。ときには組織の「お荷物」と見なされ、評価が低いのは仕方ないとしても、多くの場合、懇切ていねいな指導が受けられなくなる。

第3と第4グループとでは、仕事の実績そのものは変わらなくても、上司との関係において大きな差が見られる。目標管理や成果主義を含んだ処遇が必ずしも実績を正しく反映しているとは限らないといわれる理由のひとつは、こういうところにある。

 

不祥事を起こすリスクが高いタイプ

相性がよくない部下を低めに評価することの弊害はわかりやすい。もともと自己主張が強い第2の「トンガリ」たちは、上司と衝突することが多くなり、組織に軋轢をもたらす。自己啓発書ではよく「出すぎる杭になれ」などと書かれているが、その予備軍はここに多く集まっている。

ふところの深い上司であれば、自分との相性は別にして、個性豊かなトンガリの存在を喜ぶだろうが、現実にはそれは少数派にとどまる。多くの上司は、自分と反りの合わない「できる部下」を煙たく感じ、それは評価にも反映する。

一方、「お荷物」のレッテルを貼られた第4の部下たちは、自信とやる気を失う。中には、ひとふんばりすれば上のレベルにあがれる者がいるのに、「上司から見はなされた」と察知することで、モチベーションが低下しがちだ。

では、相性がよい部下のほうは、上司から見込まれたことによって大きく育ってゆくか。

組織を支えるキーパーソンへと成長してゆくだろうか。そうとばかりは言えないところに、この問題の深刻さがある。

人事評価と部下のタイプ

金銭の着服やセクハラなど、不祥事を起こす職員の多くは、上記の分類でいえば「優等生」あるいは「愛いやつ」ではないかというのが筆者の感想だ。上司の指導や目くばりがどうしてもおろそかに、あるいは甘めになるため、ガードがゆるくなる。当人も一種の特権意識のようなものをもち、自分は少々のことは許されるなどと勘違いする。その結果が「思いもかけなかった不祥事」となって現れるのだ。

「トンガリ」に対しては、目くじらを立てず、少し寛容に。「優等生」に対しては、ただ目を細めるだけでなく、少し厳しく。そう肝に銘じておくことで、人は比較的公平な評価ができるようになる。

 
 
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著者:本田有明(ほんだ・ありあけ)

本田コンサルタント事務所代表。1952年、兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学哲学科卒業後、社団法人日本能率協会に勤務。経営事業本部、情報開発本部などに所属し、部長職を務める。1996年に人材育成コンサルタントとして独立。おもに経営教育、能力開発の分野でコンサルティング、講演、執筆活動に従事している。おもな著書に『人材育成の鉄則』(経団連出版)、『ソクラテス・メソッド』『ヘタな人生論より葉隠』『ヘタな人生論より夏目漱石』(以上、河出書房新社)、『若者が3年で辞めない会社の法則』 『本番に強い人、弱い人』(以上、PHP新書)などがある。

 


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