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チャレンジ精神が人を育てる

2024年1月22日更新

チャレンジ精神が人を育てる

チャレンジ精神とは、リスクや失敗を恐れず、新たな課題や困難の克服に挑戦する姿勢を言います。不確実性の高い現代社会を生きる上でリスクを回避することは重要な課題です。しかし、リスクに対して過度に反応してしまうと、大胆な発想や行動に制限がかかり、個人の成長、組織の発展が阻害されます。本稿では、チャレンジ精神の重要性について考察いたします。

INDEX

チャレンジ精神が求められる背景

バブル崩壊後の「失われた30年」の間に、日本の国際競争力は大幅に低下してしまいました。かつて世界2位の地位を守っていたGDP(国内総生産)は、2024年には中国とドイツに抜かれ、4位に後退する可能性が強まっています。また、OECDデータに基づく2022年の日本の「時間当たり労働生産性」(就業1時間当たり付加価値)は、OECD加盟38カ国中30位でした。実質ベースで前年から0.8%上昇したものの、順位は1970年以降で最も低くなっています(※1)。
かつて「ジャパン・アズ・ナンバー1」と称賛された日本の経済力は、すっかり地に堕ちた感があります。グローバル市場における競争で日本だけが「一人負け」しているといっても決して過言ではないでしょう。

※1 出典:「労働生産性の国際比較2023」(日本生産性本部)

チャレンジ精神を失わせる「失敗を許さない風土」

なぜ、日本の競争力がここまで落ちてしまったのでしょうか。その要因として、DX化への対応が遅れたことや、労働力の流動化が進んでいないこと等々が指摘されていますが、真の理由は別のところにあるように思われます。
日本の競争力がここまで低下したのは、失敗したときのリスクに過敏になり過ぎて、チャレンジをしなくなったことに起因していると筆者は考えます。
マクロ的に見ると、起業に一度でも失敗すると再起が難しく、敗者復活がしにくい、日本固有のビジネス上のシステムと産業政策。ミクロ的に見ると、各企業の現場において失敗が許されない風土と制度が年々強化されていること。
こうした要因が絡み合って、一人ひとりがリスクを避け、成功する確率の高い「安全パイ」的なことしか取り組まなくなったことが、日本の競争力を下げたほんとうの理由ではないでしょうか。

部下のチャレンジ精神を醸成するには

現在、多くの企業・団体で、目標管理制度(MBO)が導入されていますが、目標には、大きく分けて次の3種類があるといわれます。

(1)当たり前レベルの目標
当人の職位、資格としては普通にこなせるレベルであり、支障なく円滑にこなすことのできるもの。達成しても、他者からみれば「当たり前」の範囲の目標

(2)満足レベルの目標
職位、資格としては達成が難しく、挑戦することに躊躇を覚えるレベルのもの。達成すると、当人および関連する人々に満足を与えるような目標

(3)感動レベルの目標
職位、資格としては極めて難しいレベルにあり、誰もが達成困難と考えて挑戦を控えるようなテーマ。それだけに、達成した場合は社内外に劇的な変化と感動を与える目標

これら3つの目標のうち、世間一般では圧倒的に(1)か、あるいは(1)と(2)の中間に位置する目標が設定されることが多いのが実態です。なぜならば、成果主義において成果を確実に出そうと思えば、失敗するかもしれないリスクを避けるのが賢明だからです。しかし、各人が失敗を恐れて挑戦しなくなると、組織全体の活力が失われることは自明の理です。従って、部下を持つ立場にあるリーダーは、部下の設定する目標をできるだけ(3)のレベルに近づけるよう、コーチングスキルなどを駆使してチャレンジ意欲を引き出し、目標達成までの具体的な道筋を明確に整理することをサポートしなければいけません。

もちろん、そのためにはリーダー自身が意欲的な(3)レベルの目標に挑む率先垂範の姿勢が求められることは言うまでもありませんし、また評価制度も減点主義ではなく加点主義で、失敗を恐れずチャレンジする態度が評価される仕組みを整えておくことが大切です。
こうして、ハード、ソフト両面から、一人ひとりの挑戦を促す条件が整ったときにはじめて、感動レベルの仕事が遂行される「強い現場」が実現し、持続的な事業の発展が担保されるのです。

エピソードに学ぶチャレンジ精神

平安時代の書道の大家・小野道風(おののとうふう)に関するエピソードをご紹介しましょう。
道風が自分の才能に限界を感じ、書道をやめようと考えていた時のこと。散歩の途上で、柳に蛙が飛びつこうと何度も何度も飛び跳ねている様子を見かけます。道風は「柳は離れたところにあるから、蛙が柳に届くわけがない」と思っていました。ところが、たまたま吹いた風が柳をしならせ、蛙はうまく飛び移ることができたのです。
道風は、「自分はこの蛙のような努力をしていない」と目を覚まし、書道をやり直すきっかけを得たといいます。

コンフォートゾーンから追い出す

今の日本人と日本企業に求められているのは、道風の悟りと、そのもとになった蛙の行動ではないでしょうか。理想に向かって、何度失敗してもあきらめず、チャレンジし続ける姿勢、努力を怠らない姿勢。こうしたスタンスが、個人の成長と組織のパフォーマンス向上、イノベーションの創出につながるのです。
人材育成の要諦は、高い目標に向かってチャレンジさせることに尽きます。そのためには、従業員や部下を、失敗するリスクが少なく、居心地がいい「コンフォートゾーン」から追い出さないといけません。そして、相応の負荷がかかる「ストレッチゾーン」へと誘導し、そこで前述の蛙のように飛び跳ねる経験を積ませるのです。

チャレンジングな組織風土をつくる

戦後の経済復興期には、失敗を恐れないリーダーが少なからず存在していました。その中の一人、松下幸之助は、失敗について以下のように述べています。

『七転び八起き』ということわざがある。何度失敗しても、これに屈せずふるい立つ姿をいったものである。だが、七度転んでも八度目に起きればよい、などと呑気に考えるならば、これはいささか愚である。『転んでもただ起きぬ』心構えが大切。このことわざは、意地きたないことの代名詞のように使われているが、先哲諸聖の中で、転んでそこに悟りをひらいた人は数多くある。転んでもただ起きなかったのである。意地汚いのではない。真剣だったのである。失敗することを恐れるよりも、真剣でないことを恐れたほうがいい。真剣ならば、たとえ失敗しても、ただで起きぬだけの充分な心構えができてくる

松下幸之助著『道をひらく』(PHP研究所)より抜粋

あらゆる組織で、変革が求められている今であるからこそ、リーダーが率先してチャレンジし続けるとともに、部下の失敗を責めることなく、そこから新たな学びを引き出すような雰囲気や仕組みを作る必要があります。
かつての日本には、大きな志とチャレンジ精神をもったリーダーが多数存在していました。現代を生きる私たち一人ひとりが、チャレンジ精神を復活させることができれば、日本企業と産業界が再び輝きを取り戻せるのではないでしょうか。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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