「松下幸之助 5つの原則」で変化に対応できるリーダーを育成～小垣江鉄工所様

愛知県の株式会社小垣江鉄工所様は、80年近く精密加工で産業を支えてきた老舗町工場です。同社が大切にするのは「社員とその家族が幸せを実感できる経営」。2022年からはPHP研究所の講師派遣セミナー「松下幸之助 5つの原則」を導入し、リーダー育成にも力を入れています。今回は、研修導入の背景や、その後の変化について杉浦社長と社員の皆様にお話を伺いました。

「松下幸之助 5つの原則」研修で変わった現場の空気

研修導入前、現場のリーダーたちは"数字"や"効率"を優先しがちでした。部下の話を最後まで聞く前に「それは違う」「もうわかった」と遮ってしまうこともあり、相談や意見が出にくい雰囲気が生まれていたそうです。「5つの原則」研修を通じて若杉マネージャーや丹下リーダーがまず気づいたのは、「自分は思っていたほど、人の話を聞けていなかった」という事実でした。今では、パソコンから手を離して部下の方を向いて話を聞く、最後まで意見を聞ききってからアドバイスする、といった「傾聴」の姿勢が習慣になりつつあります。部下からも「話を遮られなくなった」「考えを尊重したうえで助言してくれるようになった」といった声が上がり、現場の空気は変わり始めています。

「数字」だけでなく「人」を見るマネジメントへ

マネジメントの軸も「数字だけを見る」やり方から、「人の動きや気持ちを見る」スタイルへとシフトしました。できていないことを責めるのではなく、「どうしてうまくいかなかった？」「どんな理由がある？」と穏やかに問いかけ、本人と一緒に原因を探る。そのプロセスを通じて、部下は「自分で考える力」や「次はこうしてみよう」という意欲を育んでいきます。
若杉マネージャーは、「まず自分たちで考えて決めて動いてみよう」というメッセージを大切にし、メンバーの提案にはできるだけ「やってみよう」と応えるようにしているそうです。任せっぱなしにせず、必要なところでしっかりフォローすることで、安心してチャレンジできる環境が整い、「自分たちが主役になって働ける」実感が広がっています。

変化を乗り越えられる人材の育成へ

研修導入の背景には、杉浦社長が掲げる「社員の幸せを実現したい」という強い思いがあります。
35歳で社長に就任した当初は、売上や利益が過去最高を更新し、ボーナスも複数回出せるなど好調な時期が続きましたが、「数字は伸びても、心からの達成感は得られていない」と感じたといいます。そこで、会社の存在意義を見つめ直し、「社員とその家族が幸せを実感できる会社」を目指す方針を明確にしました。
社長自ら「好きなことを言っていいよ」と働きかけ、出てきた意見には必ず応える。教育への投資を惜しまない姿勢に、社員からは「大事にされていると感じる」「自分も会社のために何ができるか考えるようになった」という声が上がっています。杉浦社長が目指しているのは、会社をただ大きくすることではなく、「社員が家族に誇れる会社」をつくることです。将来、社員の子どもが「親が働いている会社に入りたい」と思ってくれるような職場にしたい。そのために、変化の時代に対応できる人材を育てていきたいと語ります。

（聞き手：PHP研究所　人材開発サポート担当）
※2025年9月取材。会社名、肩書は当時のものです。

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