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土光敏夫「自分が先頭で働かないと下はついてこない」

土光敏夫「自分が先頭で働かないと下はついてこない」

(2016年12月 5日更新)

 
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大物財界人であり、政界のご意見番でもあった土光敏夫。自分のためではなく、みんなのために働く、それも何倍も働いてこそ人はついてくるというのが信念でした。

 

*   *   *

 

「困った時の土光氏頼み」

土光敏夫氏は最近ではあまり見かけなくなった大物財界人であり、政界のご意見番でもあった。

経営者としては石川島工業(現IHI)や東芝の社長として両社の経営再建を牽引し、財界人としては経済団体連合会の会長のほか、臨調(臨時行政調査会)会長、行革審(臨時行政改革推進審議会)会長として政府の行政改革のリーダー役を務めている。

まさしく「困った時の土光氏頼み」といったところだが、なぜそれほどまでに土光氏が多くの人に頼られ、信頼されたのかというと、土光氏には「正しいと思ったことをやる」信念の強さと、組織で働く人たちの力を引き出す力があったからだ。

 

石川島工業を再建

1920年、東京石川島造船所に入社した土光氏は46年、50歳で石川島芝浦タービン(現IHIシバウラ)社長に就任するが、50年に経営危機に陥った石川島工業を再建するために社長として呼び戻されている。

当時の石川島は多額の赤字を抱え、社員の給料も満足に払えないような状態だったが、土光氏は朝8時前には出勤、率先垂範みんなの先頭に立って働いた。しかし、決して他の役員に「早く来い」と言うことはなかった。

社長が早くから出勤して、社長室を開いてどんどん仕事をしていれば、役員ものんきに重役出勤などしていられない。トップが口先だけで「早く来い」「もっと働け」と言うだけでは誰もついてこない。「自分が先頭で働かないと下はついてこない」というのが土光氏の考え方だった。

 

 

東芝再建のため社長に就任

石川島の経営が軌道に乗った65年、経営が悪化した東芝の再建に請われて社長に就任した土光氏はここでも同様の姿勢を貫いた。こう檄を飛ばした。

「社員は3倍働け、重役は10倍働け」

会社を再建するためには、みんなが懸命に働くほかはない。そしてみんなにもっと働いてもらうためには、誰よりもトップ自らが働かなければならない。土光氏は朝早くから働き、休日も返上して働いた。現場にも頻繁に顔を出した。

それまで同社のトップが工場の現場に入ることは珍しかったが、「僕は一歩工場に入ったら、音を聞いただけで、機械が故障かどうか分かるよ」が自慢の土光氏は現場にも足を運んだし、労働組合とも直接、話をした。

 

上司と部下に信頼関係があってこそ

上に立つ人間には犠牲的精神が欠かせない。自分のためではなく、みんなのために働く、それも何倍も働いてこそ人はついてくるというのが土光氏の信念だった。もう一つ大切にしていたのが人を「使う」のではなく、「活かす」という考え方だった。

リーダーの役目は、社員を使うのではなく、その力を出し切るようにすることであり、そのために欠かせないのが信頼関係だった。こう話している。

「上役は偉いから頭を下げるのじゃなく、信頼できるからついていく、という関係がいいね。また上司と部員との間に信頼感がなかったら、組織は動かないよ」

会社で上司と部下の間に必要なのは、「尊敬」よりも「信頼」であり、信頼があってこそ部下は上司の言葉を信じ、上司が掲げる目標を達成しようとがんばることができる。部下は上司を見て育つ。部下がより良く育つためには、誰よりも上司や役員、社長が率先して働き、信頼される存在であることが何より重要なのだ。

 

参考文献

『日々に新た』(土光敏夫著、PHP文庫)、『運が開ける!名経営者のすごい言葉』(桑原晃弥著、PHP研究所)

 

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【著者プロフィール】

桑原晃弥(くわばら・てるや)

1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)、『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉』(PHPビジネス新書)などの制作を主導した。

著書に『スティーブ・ジョブズ全発言』『ウォーレン・バフェット 成功の名語録』(以上、PHPビジネス新書)、『スティーブ・ジョブズ名語録』『サッカー名監督のすごい言葉』(以上、PHP文庫)、『スティーブ・ジョブズ 神の遺言』『天才イーロン・マスク 銀河一の戦略』(以上、経済界新書)、『ジェフ・ベゾス アマゾンをつくった仕事術』(講談社)、『1分間アドラー』(SBクリエイティブ)などがある。


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