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成長しない部下を嘆く管理職の問題~松下幸之助に学ぶ指導者の心得

成長しない部下を嘆く管理職の問題~松下幸之助に学ぶ指導者の心得

(2016年12月 9日更新)

 
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「使えない部下が多くて困る」「教えても成長しない」「部下のできが悪くて業績が伸びない」という上司・管理職は、どの企業にもいるものです。松下幸之助はそんな管理職に、どのように指導していたのでしょうか。

 

*   *   *

 

使えない部下を嘆く管理職

部下が成長できるかどうか、その可能性を信じられない管理職はどんな会社にもいることでしょう。異動してきた新しい部下の人間性に対して理解が乏しく、細かな欠点を見るとすぐに問題の社員だとレッテルを貼ってしまう。そして自分の部門には能力が低い者ばかりが回されてくると愚痴をいって、優秀な部下が来ることのみ望み続けてしまうのです。当然のことながら、部下への信頼は低いままです。けれども、こうした姿勢で部下の能力開発はうまくいくのでしょうか。

 

「磨けば光るダイヤモンドの原石」

松下幸之助の場合どうであったかというと、創業当初の松下電器(現・パナソニック)は無名の町工場であり、有能な人材の獲得は、そもそも思うにまかせない状況でした。さらに松下は若いころから病弱であったため、みずから先頭に立って仕事を進めることがむずかしかったのです。

したがって可能性を問うも何も、目の前の人を信頼して思い切って仕事を任せるしかありませんでした。ところがそうしてみると、意外なことに、任された人はいきいきとそれぞれの持ち味を発揮しながら期待に応えてくれる場合が多かったのです。松下幸之助はそのような体験を踏まえて、次第に次のような人材観を持つようになりました。

 

「人間はあたかもダイヤモンドの原石のようなものである。ただの石はいくら磨いても光らないが、ダイヤモンドの原石は磨くことによって光を放つ。しかもそれは、磨き方いかん、カットの仕方いかんで、さまざまに異なる、燦然(さんぜん)とした輝きを放つのである。

人間も同様で、だれもが磨けばそれぞれに光る、さまざまなすばらしい素質を持っている。だから、人を育て、生かすにあたっても、まずそういう人間の本質というものをよく認識し、それぞれの人が持っている優れた素質が生きるような配慮をしていくことが大切である」

 

それぞれの人が持っている無限の可能性を信頼する、ということが基本で、そういう認識がなければ、いくらよい人材がいてもその人を生かすことはむずかしい、というのです。

 

松下幸之助の管理職への指導

ですから松下幸之助は、部下の人材観が自分の考えと違っていることを知ると、厳しく指導をしました。次のようなエピソードも残っています。

 

昭和30年代の前半、あちこちに事業所が増えつつあった松下電器の急成長時代のことです。ある営業所長が、松下のところに報告に来たおり、自分のところは新しい職場で、いろいろなところから人をまわしてもらっているが、どうもいい人が来ない、役に立たない人が多くて困っているという話をしました。

それを聞いた松下はこう言いました。

「新しい職場の責任者はたいへんやろ。けどな、松下電器の社員には役に立たない人はおらんはずやで。もともと、そんな人を採用しているつもりはない。君は劣る人ばかりで困るというが、もし、そういう人があれば、その人を引き立てて、その能力が最大限に発揮できるようにすることを考えるのが責任者の役目やないか。それを新しい職場だから来る人がみなよくない人だ、と決めつけてしまっては、君、いかんやないか」

 

このエピソードが示すとおり、松下幸之助が「役に立たない人はいない」と考える背景には、どんな人材も「磨けば光るダイヤモンドの原石」だという哲学があるといってよいでしょう。部下をして、すぐに役に立たないというのは、松下の考え方からすれば、せっかくのダイヤモンドを原石のまま置いているだけで、上司自身が磨くのを怠っているのにほかならないわけです。

 

縁あって自分の部門で仕事に就き、人生を歩んでいる部下なのです。上司として、少しでも磨いてダイヤモンドのような本来の輝きが放たれるようにすることこそ、一番のやりがいではないでしょうか。そして、そんな管理職が大勢いる会社こそ伸びる会社であるに違いないと思うのです。

 

 

課長研修

【著者プロフィール】

渡邊祐介(わたなべ・ゆうすけ)

1986年、筑波大学社会工学類卒業。同年、PHP研究所入社。普及部門を経て、88年5月に出版部に異動。多くの単行本制作に携わる。95年10月に研究本部に異動、松下幸之助関係書籍の編集プロデュースを手がける。98年4月より3年間、紀要『松下幸之助研究』を企画編集。2001年4月、大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程(日本経済・経営専攻)に留学。03年3月、同大学大学院博士前期課程修了。修士号(経済学)取得と同時に復職。松下理念研究部主任研究員、研究部長、研究出版事業部長、研究企画推進部長を経て、現在、経営理念研究本部次長。経営哲学学会理事。企業家研究フォーラム幹事。


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