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他人の評価を気にし過ぎる若手社員に、効果抜群の勇気づけとは?

他人の評価を気にし過ぎる若手社員に、効果抜群の勇気づけとは?

(2017年5月12日更新)

 
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ほめると有頂天になり、叱ると落ち込んで仕事が手につかない――他人の評価を気にし過ぎる若手社員への対応をアドラー心理学に学びます。

 

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【質問】私の部下の一人に「困ったちゃん」がいます。彼女は入社3年目の25歳で、よいものにしろ悪いものにしろ、他人からの評価を過剰に気にするところがあり、それが仕事に大きく影響します。先日は、お客様から「見積もり提出が早くて助かる」とほめられたことから、他のお客様へも早く提出しようと私のチェックなしで見積もりを出してしまったのですが、見積額の桁が間違っていたため、私がお客様からたいへんなお叱りを受けました。一方、少し叱ったり些細な失敗をしただけですぐに落ち込み、仕事が手につかなくなったりもします。こんな状態ではほめることも叱ることもできません。どう対処すればよいか教えてください。(32歳男性 総合食品メーカー 営業部 主任)

 

自己肯定感が低く、勇気をくじかれた若者が多い

内閣府が日本を含めた7カ国の満13~29歳の若者を対象として行った「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、日本の若者は、

 

「自己を肯定的にとらえている者の割合が低い」

「上手くいくか分からないことに対し、意欲的に取り組むという意識が低く、つまらない、やる気がでないと感じている者の割合が高い」

「悲しい、ゆううつだと感じている者の割合が高い」

「自分の将来に明るい希望を持っている者の割合が低い」

 

という調査結果が出ています(内閣府「特集 今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~」より)。これはつまり、現代を生きる日本の若者は、他の国の若者と比べて「自己肯定感が低く」「勇気をくじかれている」とみることができるでしょう。

「自己肯定感が低く」「勇気をくじかれている」人が陥りがちな行動の一つに、「人からどう見られているかを必要以上に気にしてしまう」ということがあります。他人の評価に右往左往しているようすから、ご質問の部下の女性も、そうした若者の一人だと思われます。

 

「認知論」の観点から自己改革を図る

「自己肯定感が低く」「勇気をくじかれている」原因は、さまざまなことが考えられます。それらを探ることで、見えてくる手がかりもあるかもしれません。しかし、アドラー心理学では、変えられない過去(原因)に焦点を当てることはしません。また、相手を変えようとするのではなく、自分が変わることでまわりも変えていくことを目指します。今、この時点からどのように自分自身の変革を図り、相手に接していくのかを考えるのです。

 

人は誰でも一人ひとり違ったオーダーメイドのメガネのような、自分特有のものの見方をもっています。そして、そのメガネを通して体験や出来事を解釈して、判断や行動を起こします。大抵の人は、自分のメガネを「まとも」だと思っていますが、他者から見ても「まとも」だとは限りません。

 

アドラー心理学では、そうしたメガネのなかでも歪み方が著しく、自分自身や他者にとって非建設的に作用しがちなものを「ベイシック・ミステイクス(基本的な誤り)」と呼んでいます。ご質問のようなケースであれば、まずはこの管理職の方のメガネは「まとも」なのか、次の5つの「ベイシック・ミステイクス」に陥っていないかの検証をしてみることが必要でしょう(ベイシック・ミステイクスについては、「職場の人間関係でつまずかないためのヒント」で詳しく解説しています)。

 

1)決めつけ:事実ではそうでないのに決めつける

2)誇張:誇張した表現を用いる

3)見落とし:そこだけを見てまわりを見ていない(ほとんどのことはできているのに、そこは見ていない)

4)過度の一般化:あることが上手くいかなかったら、別のことも上手くいかないと思いこんでしまう

5)誤った価値感:自分の偏りのある価値感によって論理を組み立てる

 

程度の差こそあれ、上のような「ベイシック・ミステイクス」があるようなら、次の3つの質問を通して、「自分のメガネ」から追い出せるようサポートしてあげてください。

 

(1)疑ってみる「本当に本当?」

→ ベイシック・ミステイクスは、事実でないものを事実であるかのように錯覚することから生じます。まずは、その信憑性を疑ってみましょう。

(2)問いかける「誰がそう決めたの?」

→ これを問いかければ、自分自身が勝手に決めていることに気づきます。また、他者がどう見ているかを伝えるのもよいでしょう。

(3)考える「そのことのメリットは? デメリットは?」

→ そのベイシック・ミステイクスを継続するメリットは何かを考えてみると、おそらく何もなく、デメリットばかりが思いつくはずです。

 

「自分のメガネ」からベイシック・ミステイクスを追い出したあとは、「部下から『うざい』と言われてしまう管理職 ~『空回り』しないためにはどうする?」でご紹介した「勇気づけ」の5つの実践法での部下の勇気づけへと導きましょう。

 

入社3年目くらいまでなら効果抜群「世界一の○○になる」

最後に、入社3年目くらいまでの若い社員に対する勇気づけの際、ぜひ取り入れてほしい言葉をご紹介しておきましょう。それは、「世界一の〇〇になる」です。

 

私は新卒で某広告代理店に入社しました。配属されたのはSP(セールス・プロモーション:販売促進)1部で、企業の新製品の販売促進企画の立案と進行管理が業務でした。SP1部には4~5人で構成するグループが5つあり、それぞれグループリーダーがおり、売上を競っていました。私はHさんチームに配属となり、新入社員研修を終えて5月のGW明けに着任しました。Hさんは私をメンバー全員に紹介してから、私にこう言いました。

「私が指示する仕事は、すべて世界一とはどんなことだろうかを考えて作業しなさい」

SP1部には、社内の営業部、MR部をはじめ、お得意先の担当者が打ち合わせにやってきました。私の最初の仕事は、それらの来客への「お茶出し」でした。私は「世界一のお茶出しとは……」と真剣に考えました。アメリカへの留学経験のある私は、当時日本では発売されていない「アップルタイザー」という飲料を輸入食料品店で大量に購入し、来客時にお茶の代わりに出しました。すると、すぐにHさんから呼び出され、「ナイス失敗! ここは日本だよ。もう少し考えよう」と言われました。

その日から私の「日本茶研究」が始まりました。独学で温度とブレンドを研究し、納得できるお茶を出したとき、Hさんから「これだよ、世界一のお茶とは! 実にうまい!」と絶賛されました。それから社内だけでなく、多くのお得意先の担当者の間で「SP1部のHチームのお茶は最高」という噂が広がるとともに、それと比例するようにHチームの売上も伸びました。

さらに私は「世界一のコピーとりとは」「世界一の会議の準備とは」「世界一の報告書とは」に取り組み、Hさんから絶賛されるまで改良を加えました。Hチームではメンバー全員が「世界一の○○になる」に取り組み、やがてこの空気がHチームだけでなくSP1部の空気になり、SP1部の売上は2年間で1.5倍になりました。

どんな小さな仕事でも「世界一の○○になる」という観点からとらえると、実に奥の深い仕事になります。メンバーも、自主的に工夫しながら楽しんで取り組むことができます。

 

この「世界一の○○になる」を実践する際に、注意事項が2点あります。1点めは、メンバーに自分で考えて実行させることです。上司から「こうしなさい」「ああしなさい」とは言わず、失敗を承知のうえでフォローのことまで考えて、まずやらせるのです。2点めは、たとえメンバーが失敗したとしても、叱ったり原因を追及したりといった勇気をくじくような言葉や態度は控え、Hさんの「ナイス失敗! ここは日本だよ。もう少し考えよう」のような、ユーモアがあり勇気づけになり、メンバーが「またやってみよう」と思えるような言葉をかけてあげることです。失敗したときこそ「勇気づけ」が心に染みます。

 

ご質問のようなケースでは、自分の「ベイシック・ミステイクス」に気づき、自分自身を変革し、部下に「5つの勇気づけ」を実践していくことができれば、お手上げ状態から脱することができ、部下との間によい関係を築いていくことができるでしょう。それだけでなく、若い部下に対しては「世界一の○○になる」で接することで自主性を育み、組織そのものを変革していくこともできるという可能性にも目を向けられるよう導くことができれば、さらによい結果へとつながっていくはずです。

 

*「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

 

リーダーのための心理学入門コース

 


 

【著者プロフィール】

宮本秀明(みやもと・ひであき)

1982年、スタンフォード大学中退。広告業界から数社の研修会社を経て、現在㈲ヒューマン・ギルド法人事業部長兼シニアインストラクター。ロジカルシンキング、ファシリテーションからマナー教育まで、幅広いコミュニケーションの研修を担当。米国と日本双方のビジネス経験を生かし、それぞれのよさを融合させた、和魂洋才型の研修プログラムを独自に開発。受講生の目線に立った習得しやすいカリキュラムの構成力、やる気を促す講師手法には定評がある。著書に、『マンガでよくわかるアドラー流子育て』(岩井俊憲監修、かんき出版)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。


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