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職場の人間関係でつまずかないためのヒント

職場の人間関係でつまずかないためのヒント

(2016年3月29日更新)

 
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部下をはじめ、会社のメンバーとよい人間関係を築くには? アドラー心理学の立場から宮本秀明氏が解説します。

 

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桜前線のニュースも聞こえてくる時期になりました。この4月から、はじめて部下をもつ方も多いと思います。部下の育成・指導は、指導する側にとって大きな負担になります。指導しながら自分本来の仕事をこなすこともあり、予想以上のストレスを抱えることもあります。そうした状況でもストレスがたまらないようにするにはどうすればよいのでしょうか? 部下をはじめ、会社のメンバーとよい関係性を保つにはどうすればよいか? アドラー心理学の「認知論」から、そのヒントを得ることができます。

 

アドラー心理学の「認知論」とは?

認知論は、「人間は、自分流の主観的な意味づけを通して物事を把握する」という考え方です。ここでは認知論を、以下の2つのポイントで考えてみましょう。

 

1.人は自分特有の「心のメガネ」をもっている

人は誰でも、一人ひとり違ったオーダーメイドの「心のメガネ」のような、自分特有のものの見方をもっています。そして、そのメガネを通して体験や出来事を解釈して判断や行動をします。例えば、ある体験を「失敗」と解釈して、いつまでもくよくよ悩むという行動をとる人もいれば、「教訓」と解釈して改善するという行動をとる人もいます。アドラー心理学では、この「心のメガネ」を「プライベート・ロジック(私的論理)」と呼んでおり、程度の差こそあれ、人は誰でも歪んだものの見方をしていると考えます。

しかし、だからといって、「人はそれぞれものの見方、考え方が違うのだから、わかりあえなくて当然」とは思わないでください。アドラー心理学には「コモン・センス(共通感覚)」という言葉もあります。この言葉は、一般的には「常識」を指しますが、アドラー心理学では「自分自身と他者にとって健全で建設的な、現実に即した考え方」のことを指します。

このコモン・センスに私的論理を導くのがよいとアドラー心理学では考えます。そのためには、他者への共感が欠かせません。アドラーの言葉を借りれば、「他者の目で見、他者の耳で聴き、他者の心で感じる」ことが重要なのです。自分と他者は違う。それを認めることをスタート地点にして、「あの人はどう見ているんだろう、どう考えているんだろう、どう感じているんだろう」と、思いをめぐらせることが共感へとつながります。

人はそれぞれ独自の見方、考え方をしています。それを無理矢理に合わせようとするのではなく、「違うことを知る」、そして共感を育む。良好な人間関係の構築には、この姿勢が欠かせません。

 

2.「ベイシック・ミステイクス(基本的な誤り)」に注意する

先ほども述べたように、アドラー心理学では、程度の差こそあれ、誰もが私的論理を用いて歪んだものの見方をしているとみなします。この私的論理のなかで歪み方が著しく、自分自身や他者にとって非建設的に作用しがちなものを「ベイシック・ミステイクス」と呼んでいます。

ベイシック・ミステイクには以下の5点があります。「たまたま1回遅刻をした人」に対する見方を例に、説明してみましょう。

 

1)決めつけ:事実ではそうでないのに決めつける→「明日も遅刻するに違いない」

2)誇張:誇張した表現を用いる→「あいつはしょっちゅう遅刻ばかりしている」

3)見落とし:そこだけを見てまわりを見ていない(ほとんどのことはできているのに、そこは見ていない)→「遅刻するやつは何をやらせてもダメだ」

4)過度の一般化:あることが上手くいかなかったら、別のことも上手くいかないと思いこんでしまう→「遅刻するやつは仕事ができない」

5)誤った価値感:自分の偏りのある価値感によって論理を組み立てること→「遅刻するやつは人間として最低で生きる価値がない」

 

これらのベイシック・ミステイクスへの対処は2つあります。1つめは、「ホントにホント?」と疑ってみること。ベイシック・ミステイクスは、事実でないものを事実であるかのように錯覚することから生じます。まずは信ぴょう性を疑ってみましょう。2つめは、「誰がそう決めたの?」と問いかけてみること。問いかければ「自分が勝手に決めた」ということに気づきます。ついでに他者がどう見ているかたずねてもよいかもしれません。

ベイシック・ミステイクスに注意することで、相手をより客観的で冷静に捉えることができるようになり、自分自身の思い込みから余計なストレスをためこむようなことはなくなります。

 

「心のメガネ」が違えば…

同じ経験をしても、「心のメガネ」が違えば、経験の受け止め方が違ってきます。会社のメンバーとよい人間関係を築くために、とくにはじめて部下をもつ方には、常に「相手の目で見、相手の耳で聴き、相手の心で感じる」ことを肝に銘じるとともに、折に触れ自分自身の私的論理を省みることを心がけていただきたいと思います。そうすることにより、人間関係でつまずくことが少なくなります。

 

 

*「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

 

リーダーのための心理学入門コース

 


 

【著者プロフィール】

宮本秀明(みやもと・ひであき)

1982年、スタンフォード大学中退。広告業界から数社の研修会社を経て、現在㈲ヒューマン・ギルド法人事業部長兼シニアインストラクター。ロジカルシンキング、ファシリテーションからマナー教育まで、幅広いコミュニケーションの研修を担当。米国と日本双方のビジネス経験を生かし、それぞれのよさを融合させた、和魂洋才型の研修プログラムを独自に開発。受講生の目線に立った習得しやすいカリキュラムの構成力、やる気を促す講師手法には定評がある。著書に、『マンガでよくわかるアドラー流子育て』(岩井俊憲監修、かんき出版)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。


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