新入社員フォローアップ研修とは? 目的や内容、実施時期について紹介
2021年10月15日更新
新入社員がある程度の実務経験を積んだ後で「フォローアップ研修」が実施されることがあります。フォローアップ研修は入社時に行われる導入研修よりも意味があるといわれるほど、重要性の高い研修です。どのような目的で実施されるのか、プログラムの内容やタイミングについてもご紹介します。
INDEX
新入社員フォローアップ研修とは?
新入社員フォローアップ研修とは、導入研修の後、配属先などで、ある程度の実務経験を経て実施される研修です。3カ月後、6カ月後、1年後と、実施時期は企業団体によってさまざまで、複数回実施される場合もあります。
フォローアップ研修はなぜ重要なのか
入社後すぐに実施される導入研修は、新入社員にとっては実務経験がないためイメージが湧きにくく、理解しづらい部分があるかもしれません。しかし、フォローアップ研修では、すでにある程度の実務を経験しているため、より実感をもって理解できます。
また、仕事に慣れて緊張感が薄れ、気持ちがゆるんでくる、あるいは配属された職場での仕事について不安や悩みが出てくる――そんな時期に行う研修ですから、ここで新入社員のモチベーションを再び高めることができれば、早期離職の防止にもなります。
このように、導入研修よりもさらに高い研修成果が見込まれることから、フォローアップ研修は、人材育成を担当する部門で、より重要視されるようになってきたのです。
新人研修は、導入研修とフォローアップ研修をセットにして計画することがポイントになります。一貫した内容を学ぶことにより、社会人としての考え方や基本スキルを定着させることができるからです。
たとえば、ビジネスマナーや、報連相をはじめとする仕事の基本スキルについては、導入研修で網羅的に教育し、フォローアップ研修では、導入研修で学んだ知識を配属先でどの程度実践できたか振り返りを促し、おさらいすることで定着していきます。
オンラインでも実施できる
このように高い研修成果が見込めるフォローアップ研修ですから、新入社員の成長を考えると、ぜひ実施したいものです。
しかし、すでに全国の拠点に配属されていて一カ所に集めて実施することが時間的にも費用面でも難しいということもあるでしょう。そのような場合は、オンラインでの実施を考えてみることもできます。実際、オンラインで実施し、成果を上げている企業は多数あります。
Zoomなどのビデオチャットアプリなどを使って受講する場合は、講義を聴くだけでなく、双方向性を活かして、グループワークで学んだり、個別に質問をして疑問を解消したりすることも可能です。eラーニングであれば、スキマ時間に学習できるうえ、反復学習に利用できるというメリットがあります。
新入社員フォローアップ研修の3つの目的
新入社員フォローアップ研修を実施する目的について整理しておきましょう。フォローアップ研修には、次の3つの目的があります。
1.社会人としての考え方や基本スキルを振り返り、定着させる
2.悩みを共有することで、不安やストレスを軽減する
3.モチベーションを向上させる
1.社会人としての考え方や基本スキルを振り返り、定着させる
新入社員フォローアップ研修では、導入研修で学んだ社会人としての心得やビジネスマナー、報連相などの仕事の基本スキルをおさらいします。導入研修で学んだことが、これまでの実務で実践できていたか・できていなかったのかを振り返ることで、知識が定着し、新たな気付きから今後の成長課題を見出すことができます。
2.悩みを共有することで、不安やストレスを軽減する
実際に入社してみると「思っていた仕事内容と違った」というように、本人の期待が裏切られるようなことも出てきます。また、業務での失敗を経験したことによって、またミスをするのではないかといった不安を抱えたり、上司から注意を受けたことで心が折れそうになったりというような経験もしていることでしょう。特に入社1年目の場合は、そうした悩みやストレス、不安を、誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまうことも多いようです。
フォローアップ研修は、そんな新入社員が悩みや不安を分かち合うことで、「悩んでいるのは自分だけではない」という安心感を得て、気持ちを前向きに切り替える機会になります。
3.モチベーションを向上させる
入社当初はやる気に満ち溢れていた新入社員も、覚えなくてはいけないことが多いことを知り、徐々に仕事に対するモチベーションが失われることがあります。慣れない生活で身体的にも疲労が溜まっていることも、モチベーション低下の原因のひとつとして考えられるでしょう。
フォローアップ研修では、いったん職場を離れて、これまでの経験を振り返ります。入社当時と今の自分を比べることで、成長を実感し、自信につなげることができます。
また、今後の成長目標を設定し、「なりたい自分」を具体的に思い描くことで、モチベーションの向上を図ります。自分自身に何が不足しているのか具体的に見直す機会にもなるので、漠然とした不安を解消することもできるでしょう。
フォローアップ研修のプログラム・内容
フォローアップ研修の内容、プログラムは、企業団体によって異なります。ここでは、PHP研究所の公開セミナー『新入社員研修 フォローアップコース』を例にして、具体的な内容を見ていきましょう。
PHP公開セミナー
「新入社員研修 フォローアップコース」のプログラム
- 【事前課題】現状分析シートの記入
- アイスブレイク/自己紹介
- これまでの社会生活の振り返りと共有
- 仕事力の見直しと強化を図る
- 若手社員に求められること
- なりたい自分に向かう課題の設定
【事前課題】現状分析シートの記入
「現状分析シート」を、研修が始まるまでに記入します。理想の自分とはどのような姿か、将来はどのようになりたいのか、また、仕事力の現状や自分の強みや弱みを率直にシートに記入することで、自分自身を見つめ直すきっかけとなるでしょう。また、克服すべき課題が明らかになるので、目的意識を持ってフォローアップ研修に臨めます。
アイスブレイク/自己紹介
最初にアイスブレイクのためのゲームを行い、緊張感をときほぐして研修に集中できる環境をつくります。次のステップはグループ内における受講者の自己紹介です。フォローアップ研修ではグループ討議を多用するため、信頼関係に基づいて討議ができるように自己紹介を通してグループメンバーに自己開示します。
これまでの社会生活の振り返りと共有
入社してから自分自身が成長したと思える点と、仕事における現時点での問題や課題について書き出し、グループ内で発表して共有します。
この項目では「問題」「課題」のとらえ方について学びます。「問題」とは、あるべき姿と現状のギャップのこと。そして、「課題」とは、自分に課した問題です。問題には変えられないものと変えられるものがあります。例えば、不景気や業界全体の低迷などは、自分一人の力では解決することが難しい問題といえます。でも「職場の雰囲気が暗い」という問題は、自分が率先して挨拶をすることなどで、変えていける可能性があります。ですから、変えられる問題と、変えられない問題を明確に区別し、変えられる問題について自分の「課題」ととらえて、解決に向けて努力する必要があるのです。
講師の解説から、こうした考え方を学ぶことは、この時期の新入社員の悩みを解決する一助になるかもしれません。
仕事力の見直しと強化を図る
仕事の基本の型を知ることの重要性を知り、成果を生み出す仕事ができているかというポイントからセルフチェックを行います。次は、受講者各自のグループ内での発表です。普段から心掛けている仕事の基本について発表し、講師によるコメントを受けて、考え方の基礎を確認します。
この項目では、チェックシートを使ったビジネスマナーの理解度確認も行います。具体的なシチュエーションをいくつか読み、正しいか・正しくないか、個人とグループで考えます。例えば「誰も乗っていないエレベーターに上司と2人で乗るときはどちらが先に乗るのか」あるいは「社外セミナーを受講したときに、名刺交換の途中で名刺が切れてしまったときはどうすれば良いか」といったケーススタディで、ビジネスマナーを確認していきます。
若手社員に求められること
新入社員の次のステップは、若手社員として活躍することです。ここでは、仕事の基本を確立する、職場活性化のキーマンになる、主体的に行動する、人間力を高め続ける、この4つの目標を確認し、具体的な方策を学んでいきます。
例えば、仕事の基本を確立することとは、具体的にいえば、量をこなして質を高めることや、あえて困難な仕事にチャレンジすること、確実に報連相を実践すること、PDCAをまわすこと、コスト意識を持つことなどです。一つひとつについて講師の解説を聴きながら、若手社員としての立ち位置を再確認していきます。
なりたい自分に向かう課題の設定
若手社員のあるべき姿を基に、なりたい自分の理想像についてまとめ、グループ内で共有します。
次に、現在の仕事における課題の中からいくつかテーマを選び、グループで議論をしてまとめます。さらに、どうすれば仕事に対するやりがいを高められるかについて、仕事における課題と同様にまとめて発表します。
研修のしめくくりとして、1年後、自分はどうありたいかについて考え、何ができるのかをまとめ、各自の成長課題を明確にします。
新入社員フォローアップ研修の実施時期
導入研修は入社してすぐに開催されますが、フォローアップ研修の実施時期は特に決まっていません。企業団体によってさまざまで、複数回実施される場合もあります。早く実施しすぎると実務経験が少なく、導入研修との差別化が図りにくいという難点があります。しかし、遅すぎると導入研修での学びの定着という目的を果たすことができません。適切な3つのタイミングについて見ていきましょう。
導入研修から3カ月後
導入研修の記憶がまだ濃く残っているので、フォローアップ研修を実施することで、知識やスキルを定着させることができます。
新入社員によっては、導入研修で学んだ内容を実務に活かし、すでに何らかの手ごたえを感じていることもあるでしょう。このような好ましいケースを探して発表してもらうことで、ほかの新入社員への刺激とすることができます。
導入研修から半年後
導入研修から半年となると、研修内容を実務で活かし、成果を上げている新入社員が増えてきます。成果を上げている社員にとっては「もっと学びたい」「仕事力をつけたい」とモチベーションが上がっているときでもあるので、そのタイミングでフォローアップ研修を実施することで、より多くの知識を吸収することができるでしょう。
あまり成果を上げていない新入社員にとっては、「早めに遅れを挽回したい」と焦っている時期かもしれません。メンタル面でのフォローを行いつつ、中だるみを回避し、モチベーションアップを図ります。
導入研修から1年後
1年後ともなると、社員の間にも大きな変化が起こり、立場にも差が出ていることがあります。2年目の社員として新入社員の指導に当たっていたり、部署異動になっていたりすることがあるかもしれません。
しかし、どのような立場であれ、徐々に責任が増しているのは間違いありません。たとえば、プレゼンテーションなどの機会も増えてくるので、若手社員として活躍するための新たなスキル習得を、プログラムに組み込んでいきましょう。
1年が経過してどの程度自分自身が成長したのか振り返ることは、仕事への自信につながります。初心に帰ってモチベーションを再度高めるためにも、フォローアップ研修に適した時期といえるでしょう。
フォローアップ研修の効果を高める4つのコツ
これまで見てきたように、フォローアップ研修は、新入社員を成長させるためには不可欠ともいえる教育プログラムです。新入社員にとって、より意味のあるものにするために、フォローアップ研修の成果を高めるコツ、ポイントを押さえておきましょう。
1.目的意識を持たせる
2.相互フィードバックを行う
3.新入社員は全員参加させる
4.長期的な展望を持たせる
1.目的意識を持たせる
研修前に自分自身の課題を確認し、目的意識を持って研修に臨むようにすることは、成果を高める大きなポイントになります。目的意識を持っている場合とそうでない場合とでは、同じ研修を受けても成果に大きな差が生まれます。
また、複数回の研修を実施する場合は、次回までの達成目標を決めることが大切です。行動目標を立てて職場の業務において実践し、自分自身で振り返り、改善策を検討します。フォローアップ研修の内容が定着するようにPDCAサイクルを回していきましょう。
2.相互フィードバックを行う
対面やオンラインで研修を実施する場合は、グループ単位で討議をしたり発表したりする機会を設けましょう。自分とは違う価値観の人の意見を聴くことは、大きな刺激になります。また、新入社員同士で相互にフィードバックすることで、自分では気付かなかった強みや弱み、改善すべき点、新たな課題に気付けるかもしれません。
3.新入社員は全員参加させる
フォローアップ研修はすべての新入社員が参加することで、より効果を高めることができます。同じときに入社した仲間たちが顔を合わせて研修に臨み課題に取り組むことで、一体感が生まれ、前向きな気分になるでしょう。がんばっている仲間を見ることで、やる気を奮い立たせる効果も期待できます。
4.長期的な展望を持たせる
フォローアップ研修では、3年後、5年後の目標と、なりたい人物像を明らかにし、長期的な展望を持たせることが大切です。将来的な目標に到達するために、今、何ができるのか具体的に書き出し、今後のキャリアプランにつなげていけるといいでしょう。