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松下精神の伝道師、髙橋荒太郎が実践した理念経営とは

2025年3月12日更新

松下精神の伝道師、髙橋荒太郎が実践した理念経営とは

「松下電器の大番頭」と称され、松下幸之助の片腕としてパナソニックの経営基盤の確立に貢献した髙橋荒太郎。彼は常に「経営の基本方針」を拠り所とした理念経営を実践し、「経営経理の確立」や「赤字部門の再建」に尽力しました。本記事では、髙橋荒太郎がどのような人物であり、どのように理念経営を実践してきたのかをご紹介します。

INDEX

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松下幸之助の怒り~経営理念を守ることの重要性

1982年1月10日、松下電器(現パナソニック)の経営方針発表会で、87歳の松下幸之助は長時間のスピーチを行い、強い怒りを示しました。前年に、松下のある幹部がメディアの取材に対し経営の基本方針を軽んじる発言をするなど、松下の伝統精神をなおざりにするような風潮が社内の一部に生じてきたからです。幸之助はそこで改めて松下電器が成功した根底には、創業当初から一貫して守られてきた基本方針があったからこそであると伝え、経営陣を批判しました。そしてスピーチの後、幸之助はかつてのパナソニック会長であり、「松下電器の大番頭」と称された髙橋荒太郎との話の録音テープを30分以上も流したのです。
荒太郎は日頃より「松下の基本方針を守っていかないといかん。松下の基本方針を守り、その線に沿って経営を進めていったなら、決して間違いがない」と言い続けていた人物でした。経営理念がどれほど重要であるかを伝えるために、幸之助は髙橋の言葉を社員に再確認させたのです。

赤字の原因は基本方針が守られていないこと

荒太郎は、常に経営の基本方針に忠実であることの重要性を説いていました。彼が確立した「経営経理」の概念は、単なる財務管理を超え、経営判断にまで踏み込むものでしたが、その根幹には必ず幸之助が掲げる経営の基本方針が存在していました。
その象徴的な事例の一つが、1950年代に荒太郎が担当したモーター工場の再建です。松下電器は戦後、事業部制を復活させ、当時専務の荒太郎は赤字部門の多い第三事業部の事業部長を兼務することになりました。なかでも、モーター工場は多額の赤字を抱え、銀行からは撤退を勧められるほどの状況でした。
荒太郎は、なぜこの工場が慢性的な赤字に陥っているのかを徹底的に分析しました。そして3ヶ月後に至った結論は、「経営の基本方針を守っていない」というシンプルなものでした。そこでまず徹底したのは、「松下電器の遵奉すべき七精神」の朝礼での唱和でした。その頃労働組合の反対によって唱和が中断されていましたが、荒太郎は組合と交渉し、再開させました。「七精神」は、単に自社のために唱えるのではなく、産業人として、社会人としての基本的な心構えをもつために唱えるのだと、荒太郎は強調したのです。

基本方針に徹して再建

荒太郎は、こうして「七精神」の唱和を徹底させたうえで初めて、具体的な改善策を講じました。ただし画期的な策というわけではなく、あくまでも経営の基本方針に従い「品質」「コスト」「サービス」の3点で他社に負けないということを重視しました。
そして荒太郎は工場の機械をとめたり一部工員をしばらく自宅待機(給与は全額支給)させたりすることも辞さず、血のにじむような努力で、前述の3つの観点から問題を一つひとつクリアし、わずか半年で再建のメドをつけたのです。
さらに、他社が値下げ攻勢に出た際、荒太郎は値下げには応じず、すぐれた新製品を開発することで価格競争に巻き込まれずとも再びモーター事業を拡大に導きました。
松下電器は赤字部門の再建に成功し、さらに多くの企業と資本提携を結ぶことによって、経営危機を乗り越えて成長を遂げました。そこには提携した会社に松下の経営の基本方針を徹底させ、松下本社からの金銭や人材の援助がなくても独立して経営をできるようになるまで力を注いだ荒太郎やその部下たちの存在があったのです。

海外でも松下の理念を貫く

松下電器は、1960年頃から積極的に海外事業を展開するようになり、荒太郎は各国の合弁会社で取締役などの要職に就きましたが、そこでも経営の基本方針を根付かせることに努力を惜しみませんでした。特に人材育成に力を入れ、現地の経営陣が日本本社に依存せず、独立運営できることを目指しました。
その結果、1962年に設立した台湾松下電器では、台湾人による自主経営、海外に輸出できる高品質製品の製造、資金調達能力の確立を政府に約束し、10年以内に実現しました。また、1967年には赤字経営のフィリピンの会社と合弁、松下の「ものをつくる前に人をつくる」という理念に基づき、労働環境を改善し、「代金回収」と「品質向上」の意識をとことん浸透させることで、8年で無借金経営を達成しました。さらにペルーやベネズエラでも短期の現金回収を徹底し、各国の商慣習の違いを乗り越えながら、経営方針を根付かせました。

愚直なまでに理念経営を実践

松下電器の労働組合や、買収や提携をした国内企業などに松下の経営の基本方針を伝えるだけなら他の人にもできるかもしれません。しかし、そもそも松下の文化にどっぷりとは浸っていない人々から成るこれら組織において、基本方針を実践させるのは容易ならざることは明白です。荒太郎にはなぜそれができたのでしょうか。 それは、荒太郎がたんに上から威圧的に命令するのではなく、誠実な態度で経営の基本方針を説いて回ったからに他なりません。荒太郎は自身の過去の経験から、松下の経営の基本方針に依拠していれば、少なくとも大きな失敗はないということが分かっていたのです。ほかにもケースに応じた経営の仕方はあるかもしれませんが、荒太郎にはそれよりも、経営者が困難に直面したときに迷いが生じ、基本の徹底から外れるほうが問題だと考えていました。だからこそ、荒太郎は愚直なまでに経営の基本方針ばかりを説いて回ったのです。

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